震災後に経営方針を一新。健全な経営を目指して、夫妻で法人を設立
相馬市新沼地区で夫妻で、『合同会社マンマパワー』を設立して、米作りを営んでいるのが安部力(あんべりき)さんと妻・祐子さんです。
もともとは祐子さんの実家の家業として、父親が中心になって営農していました。力さんも、サラリーマンとして働く傍らで農業を手伝っていましたが、東日本大震災をきっかけに、本格的に農業に取り組むことになりました。
震災では津波被害に加え、大きな風評被害を受けてしまいました。そこで、抜本的な経営改善を図るため、力さん夫妻が中心となって農業経営に取り組むことになり、法人化を決定。それまで、大雑把だった会計なども明確に管理できる仕組みを作り、農業を長く続けていくための体制を整えました。
また、農業を引退し、米作りを任せたいという方の水田を借り受け、地域の方々と一緒に雨水の貯留機能や洪水、土砂崩れの防止機能を維持するなど、農地の多面的機能を守る役割も果たしてきました。
こだわりの特別栽培米を直接販売。評判が評判を呼び、口コミで販路を拡大
震災直後には約8haだった経営面積も、震災後の除塩作業などを経て、現在は約22haとなり、『コシヒカリ』『ミルキークイーン』『天のつぶ』を育てている安部さんご夫妻。特に、有機肥料やアミノ酸などを配合した自家製の肥料によりこだわった特別栽培米を作っています。
そして、特筆すべきは、その販売戦略。ほぼ全量を直売で販売する戦略を取っており、地元の旅館4軒をはじめ、関東圏の業者さん、一般消費者さんなどへ広く提供しているのです。
「始めは、私自身がいろいろな集まりに出ていたので、そこで、さまざまな方に、無料でお米を配りました。そうしたら、その中から、おいしいと評価してくれる人が買ってくれるようになっていきました。すると、そのお客さんが次のお客さんを紹介してくれるといったつながりが続いていって、販売量がどんどん拡大していきました」と、販売戦略の秘訣は、口コミだと安部さん夫妻は語ります。
意欲ある農家たちが地域一丸となり、法人を設立。農地の効果的活用に寄与
相馬市飯豊地域で、大豆の作付けなどを手掛けている『合同会社岩子(いわのこ)ファーム』。もともとは、岩子集落の構成員104戸の集落営農組織として約40haの大豆作業受託から始まり、これまで培った大豆の栽培経験と集落営農による効率的な農地利用をもとに、着実に大豆の作付け面積を広げています。
東日本大震災により、全農地の3分の2(140ha)が津波被害を受けましたが、相馬市が2012年から『公益財団法人ヤマト福祉財団』の助成によって取り組む『農地復旧・復興プロジェクト』の後押しを受け、地域の復興実現への思いを強く持った農家4人によって法人化されました。きっかけは同プロジェクトによって、個人単位では購入が難しい大型農機が導入され、地域の農業法人に無料貸出するスキームが作られたことです。現在は約128haもの農地への作付けを手掛けており、被災した農地の早期復興、地域農業の再建にも大きく貢献しています。
それぞれのスタイルで活躍する、『岩子ファーム』に参加する地域の若手たち
集落の構成員が共同で農作業にあたる『岩子ファーム』には、地域の次代を担う若者も積極的に参加しています。
その中でも、若手の中心となって活躍する一人が、佐藤成史さんです。佐藤さんは、2010年に妻の実家で家業を手伝う形で就農しました。米と養殖海苔を中心に作っているそうですが、5月〜6月の大豆の播種の時期を中心に『岩子ファーム』の仕事も精力的に行っています。「普段育てている作物以外のことも知ることができるので、大変勉強になります。いい大豆をいっぱい作って、ここで6次化とかもできたら面白いですね」と、話してくれました。
また、2010年に勤めていた会社を退職し、祖父の営んでいた農業を継ぐ形で就農した坂本雄司さんは、普段はブロッコリーを中心に、黒豆や青ばた豆を作り、直売所での販売も行っているそうです。「岩子ファームの仕事は、せいぜい1年でも2ヵ月程度なので、家の仕事とも被らないように無理なく調整できます。自分の好きなようにやっていける農業は、自由度が高くて面白い仕事だと思いますよ」と、この地での農業の魅力を語ってくれました。
なお、相馬市は9月7日に東京で開催される『マイナビ就農FEST』に参加します。ぜひお気軽にお立ち寄りください。
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