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いわきにワイナリーを! 新しい農業のあり方を模索する、新人ファーマーの挑戦

いわきにワイナリーを! 新しい農業のあり方を模索する、新人ファーマーの挑戦

近年、日本ワインの品質向上はめざましく、世界各国からの評価も高まりつつあります。そんな国産ワインを故郷で作ることを決意し、就農した1人の青年が今回の主人公。ワイン用ブドウ栽培に情熱を注ぐことで見えてきた地域農業の課題や新しい「農」のあり方をお聞きしました。

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いわきに新しい特産品を! ミュージシャンからの転向

耕作放棄地を自らの手で開墾した久ノ浜地区のブドウ畑

耕作放棄地を自らの手で開墾した久ノ浜地区のブドウ畑

福島県の東南端に位置するいわき市は、南端は茨城県、東は太平洋に接する東北では仙台市に次いで2番目に人口が多い市です。日照時間は全国有数の長さを誇っており、人にも自然にもたくさんの太陽の恵みが降り注いでいます。
そんないわき市でワイン用ブドウの栽培に取り組んでいるのが、2018年に就農した芳賀正道(はが・まさみち)さんです。いわき市で生まれ育ち、父親の転勤で関東に移住。ミュージシャンを目指して上京した芳賀さんでしたが、常に望郷の念を抱いていました。

「移住してからも、休日は家族でいわきに戻り、自然の中で遊んでいました。その思い出はプロを目指して音楽活動をしていても変わらず胸の中にありました。25歳のときにミュージシャンをあきらめ、就職しようとした時にも、いわきの祖父母、杉山や畑が気がかりでした」。

「広いいわき市は地域によって気候が違います。その変化を楽しめるワインを作りたいですね」と、ワインづくりへの思いを語る芳賀さん

「広いいわき市は地域によって気候が違います。その変化を楽しめるワインを作りたいですね」と、ワインづくりへの思いを語る芳賀さん

高齢の祖父母が離農すると、大好きな故郷の風景は失われてしまう。そんな思いに駆られた芳賀さんはやがて、いわき市での就農を考えるように。「やるからにはいわきに新しい特産品を」と、大好きなワインに辿り着きます。当時、いわき市にはまだワイナリーはなく、競合相手がいなかったことも後押ししました。

「ワインは大好きだけど、ブドウ栽培の知識はゼロ。醸造についても全くの素人です。一からの修行が必要と考え、首都圏の就農相談フェアへ行ったところワインの一大生産地である山梨県のブースでワインブドウ栽培のプロを紹介頂いただきました。その方のつてで山梨県のワイナリーに入りました」。

ところが、山梨県に移り住んだ翌年の3月、東日本大震災が発生。芳賀さんは福島県を農業の力で元気にしなければと、予定していた修行を切り上げて、いわき市に移住しました。移住後は復興支援プロジェクトの1つであるワイナリーの設立などに携わった後、2018年に念願の就農を果たします。

就農へのハードルを下げることが新規就農希望者を呼び込むカギ

「若手生産者の集まり『4Hクラブ』は本当に頼りになる大きな存在です。新規就農者にとって良き相談相手は絶対に必要だと思います」と、芳賀さん

「若手生産者の集まり『4Hクラブ』は本当に頼りになる大きな存在です。新規就農者にとって良き相談相手は絶対に必要だと思います」と、芳賀さん

現在、いわき市の田人地区と久ノ浜地区でワイン用ブドウを栽培する芳賀さんですが、これまでの道のりは平坦なものではありませんでした。祖父が所有する杉山をブドウ畑として転作するつもりが、そこは栽培に欠かせない積算日照時間が足りずに頓挫。途方に暮れる芳賀さんを救ったのが、若い農業者による組織、4Hクラブ(農業青年クラブ※1)の存在でした。

「同世代の人たちが農業で頑張っている姿はとても励みになりました。また、クラブ員はほ場探し、農作業のノウハウに至るまで、親身になって相談に乗ってくれました。今の自分があるのは4Hクラブのおかげといっても過言ではありません。さらに、4Hクラブを支援する自治体職員との繋がりもでき、新規就農者支援制度についても知ることができました」。

4Hクラブで同志をみつけた芳賀さんは、彼らの助言をもとにブドウ栽培に適した条件の耕作放棄地を農地中間管理機構(農地バンク)より借り受け、自力で開墾することを決意。しかし、木を切り、整地するなどブドウの苗木を定植するまでには大変な苦労がありました。そんな自身の経験から地域農業の課題が浮き彫りになったと言葉を続けます。

芳賀さんが開墾する前の耕作放棄地。伐木、整地などの開墾作業は大変な労力だったことがうかがえます

芳賀さんが開墾する前の耕作放棄地。伐木、整地などの開墾作業は大変な労力だったことがうかがえる

「いわきに限らず、日本の農業は担い手不足が深刻化しています。そのため、新規就農者の確保は必要不可欠です。しかし、親元就農と異なり、新規参入の場合はそのまま使える農地を借りることは難しく、農機を新たに購入するにも資金が必要です。そのため、スタートするまでの労力と資金が大きな課題となります。そこで、間もなく離農する方からの『事業継承』ができれば、就農へのハードルを下げることができるのではないかと思います」。

農業には、他の職業に比べて過酷、もうからないなど負のイメージもつきまといますが、それらを払拭するためにもさまざまな業種が農業分野に参入し、互いに尊重しあう社会の仕組みをつくることが大切と、芳賀さんの農業に対する思いを語ってくださいました。

純国産ワイン「いわきワイン」を目指して

白ワイン用ブドウ品種のシャルドネ。芳賀さんは加工用ブドウの栽培技術を磨きながらいわき産ワイナリーの創出を目指している

白ワイン用ブドウ品種のシャルドネ。芳賀さんは加工用ブドウの栽培技術を磨きながらいわき産ワイナリーの創出を目指している

2019年に定植した久ノ浜地区のブドウの品種はメルロー、ピノ・ノワール、シャルドネの3品種です。2020年に初収穫を迎えたブドウは、収量が十分ではなく、醸造施設もないことから、山梨県のワイナリーに販売。芳賀さんはワイン用ブドウの生産者として栽培技術を磨きながら、「いわき産ワイン」の醸造・販売を目指しています。

「東北の気候はブドウづくりに向いていないともいわれていますが、世界的に有名なブドウの産地であるフランスのアルザス地方やドイツもかつてはそう言われていたそうです。ブドウは天候や土壌条件だけに依存するのではなく、ワインづくりに懸ける人の努力や知恵、そして挑戦することによって育まれていくものだと思います。いわきで育てたブドウで作った“純国産ワイン”の誕生までまだ少し時間がかかりますが、待っていてくださいね」。

そう笑顔で話す芳賀さんの表情は希望に満ちあふれています。耕作放棄地を開墾し、同じ志を持つ仲間との交流によって切り拓かれたワインづくりへの道。芳賀さんはいわきの気候風土に適したワイン用ブドウの品種を見極めながらオリジナルワインの醸造を目指す方針です。その情熱が実を結ぶ日は、着実に近づいています。

※1:4Hクラブ(農業青年クラブ)
将来の日本の農業を支える20~30代前半の若い農業者が中心となって組織され、農業経営をしていくうえでの身近な課題の解決方法を検討したり、より良い技術を検討するためのプロジェクト活動を中心に、消費者や他クラブとの交流、地域ボランティア活動を行っているのが、4Hクラブ(農業青年クラブ)です。(農林水産省HP「4Hクラブ(農業青年クラブ」)について」より)

福島県就農支援情報サイト「ふくのう」もご覧ください

福島県就農支援情報サイト「ふくのう」

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