生産者が誇りを持って売る―。『郡山ブランド野菜』発案者に聞く、農業の“これから”

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生産者が誇りを持って売る―。『郡山ブランド野菜』発案者に聞く、農業の“これから”

生産者が誇りを持って売る―。『郡山ブランド野菜』発案者に聞く、農業の“これから”
最終更新日:2020年09月15日

『郡山ブランド野菜』をご存知ですか?福島県郡山市の直売所を中心に販売されるその野菜は、目利きである生産者が郡山の風土に適した品種を選定し、惜しみない経験や知見を注いで作られています。そんな『郡山ブランド野菜』の発案者に農業の「未来」についてインタビュー。課題やそれらを解決へと導くメソッドについて伺うと、農業の“これから”に必要なことが見えてきました。

郡山を象徴する野菜を! 『郡山ブランド野菜』誕生秘話

『郡山ブランド野菜』の第一号に認定されたエダマメ『グリーンスウィート』

『郡山ブランド野菜』の第1号に認定されたエダマメ『グリーンスウィート』。艶やかな緑色で茶豆にも負けないその甘みと香りは、味にこだわった郡山の野菜づくりのきっかけに。

福島県郡山市―。西に猪苗代湖、東に阿武隈山地、北に安達太良山を抱くその地形は、清らかな水と澄んだ空気を生み出し、高品質な農産物を育んでいます。中でも米は質・量共にトップクラス。震災・原発事故による風評を乗り越え、再び全国にその名を知らしめています。
この恵まれた自然環境をさらに生かし、郡山を象徴する野菜を創りたい ―。そんな切なる思いから誕生したのが『郡山ブランド野菜』です。

「郡山市の農業は米を中心に発展してきました。安定経営のためには大規模経営が必要ですが、米農家が多い郡山は規模拡大のために土地を借り受けることが難しいのが現状です。これは郡山の農家の多くは米の収入に依存していることへの裏付けにもなります」。

そう分析するのは鈴木農場・伊東種苗店代表の鈴木光一(すずき・こういち)さんです。稲作農家をはじめとする生産者の多くは、価格を自ら決めることはほとんどなく、買取価格の変動を受け入れているのが現状。こうした経営形態に疑問を抱いた鈴木さんは、郡山の風土に適した作物を作り、自らの手で売ることを決意。祖母の実家が営んでいた種苗店を受け継ぎ、種苗メーカーと取引きするうちに野菜についてさまざまな情報を得ることになります。

『郡山ブランド野菜』作りを牽引する鈴木農場・伊東種苗店代表の鈴木光一さん。

『郡山ブランド野菜』作りを牽引する鈴木農場・伊東種苗店代表の鈴木光一さん。

「市場に出回る多くの野菜は、美味しさよりも流通のしやすさや価格が重要視されていることに気付きました。美味しくて栄養価も高いのに保存性や長時間の流通に課題があって世の中に出回らない野菜の存在を知り、種苗メーカーさんから種を譲り受けて、作ってみたのが今から30年前のことです」。

『郡山ブランド野菜』の直売所

直売所のほか、郡山でのマルシェ販売、試食商談会、料理研究会、東京・青山のファーマーズマーケットにも出店し、在京シェフやファンにも販売しています。

種苗店の一角に設けた野菜の直売所は当時としては珍しく、その美味しさは瞬く間に評判を呼びます。そんな時、常連客からのある一言が鈴木さんの心を動かします。

「こんなに美味しい野菜が作れるのに、郡山にはこれと言った特産品がない」

この言葉がきっかけとなり、2003年、仲間の生産者と共に「郡山ブランド野菜プロジェクト」を始動。1品目で数百もある品種の中から、品種特性や栽培方法の研究を基に郡山の気候風土に合ったものを選定し、栽培に着手しました。

担い手不足解消のカギは「利益向上」と「魅力発信」

30名のメンバーで構成される『郡山ブランド野菜協議会』では1年に1品種を選んで栽培します。郡山ブランド野菜第1号に認定されたエダマメの品種『グリーンスウィート』を始め、紅御前(ニンジン)、佐助ナス、とうみぎ丸(トウモロコシ)など現在までに13品種のブランド化に成功しています。市場受けではなく、本当に美味しい品種であることを重視して選んだ野菜は、農産物の価値を高めるきっかけになると鈴木さんは期待を寄せます。

「消費者が野菜を買う理由は決して安いだけではありません。美味しい、栄養価が高いなど、価格に見合った理由付けをすることで作物に価値が生まれます。消費者と生産者が共に納得する価格により収益性が生まれ、消費者は美味しい作物を手にすることができる。この仕組み作りも『郡山ブランド野菜』のミッションのひとつです」。

『郡山ブランド野菜』のリーフレット

『郡山ブランド野菜協議会』の思いや活動の様子などの情報が掲載されているリーフレット

担い手不足、労力不足が深刻化する日本の農業において、その原因を突き詰めると「儲からない」ことが一番の理由と考えられます。それは日本の生産者は長きにわたり自分で価格を決められなかったことが要因かもしれません。協議会では価格を自分たちで決めることに加え、二毛作にすることで年間の10aあたりの収益が100万円を達成。収益性をしっかり示し、農業に可能性を感じてもらうことが担い手育成には必要不可欠と鈴木さんは話します。

「農業に興味を持っている若者はたくさんいます。私たち生産者が明確なビジョンを示すとともに、経営面の不安を解消するための具体的な指標などを、若者に向けて情報発信することが農業の“これから”を変えるのではないでしょうか」。

『郡山ブランド野菜』から農業に可能性を感じてもらいたいー。
福島県指導農業士会の会長である鈴木さんは現在、就農希望者を研修生として受け入れ、指導にあたっています。

あなたがやりたい農業は何色ですか?個性を引き出す指導法

日本の農業の「これから」に可能性を示したいと話す鈴木さん

就農希望者の研修を受け入れることで、日本の農業の「これから」に可能性を示したいと話す鈴木さん

自らその門を叩く就農希望者が後を絶たない鈴木農場では、研修生の「個性」を大切にしています。そこには目指す農業、展望を明確にしてほしい願いが込められています。

「人間が生きていく上で欠かせない食べ物を作る農業は本来、食べてもらうまでを見届ける仕事であるべきだと私は思います。それを可能とする直売というスタイルは農業人にとっての醍醐味。しかし、自分たちがやっていることをそのまま真似るのではなく、参考にすることでその人らしい農業、生き方を見つけてくれたらと思い、指導にあたっています」。

美味しそうな色とりどりの野菜が並ぶ郡山で行われた開成マルシェの様子

美味しそうな色とりどりの野菜が並ぶ郡山で行われた開成マルシェの様子

日本の農業に風穴を開けた『郡山ブランド野菜』。この取組みは郡山市のみならず、日本のさまざまな地域で取り組むことができると鈴木さんは言葉を続けます。

「その土地の気候風土に合った作物を育て、自らの手で売る。それができれば日本の農業は活性化し、もっと発展していけるはず。海外市場にも負けない高品質な作物を次世代につないでいきたいですね」。

近代日本の疏水技術(※1)の先駆け「安積疏水(あさかそすい)」 を有する郡山市。水利が悪く不毛の大地だった郡山の安積原野に猪苗代湖からの水を引いたこの大事業は今もなお、郡山の農業を支えています。
そのチャレンジスピリッツが今も根付く土地で、あなたの「個性」を輝かせてみませんか。

※1:疏水技術=運送・給水・灌漑(かんがい)・発電などの目的で、土地を切り開いて水路を作るための技術。

取材協力

鈴木農場・伊東種苗店
〒963-0201
福島県郡山市大槻町字北寺18

福島県就農支援情報サイト「ふくのう」もご覧ください

福島県就農支援情報サイト「ふくのう」

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