農業の厳しさはやがて楽しさになる。飲食業界を経て独立就農した、若き小松菜農家の現在地

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農業の厳しさはやがて楽しさになる。飲食業界を経て独立就農した、若き小松菜農家の現在地

農業の厳しさはやがて楽しさになる。飲食業界を経て独立就農した、若き小松菜農家の現在地
最終更新日:2021年03月18日

就農を志す理由は人それぞれですが、「やってみたい」というシンプルな理由だからこそ、気負わず挑戦できることがあります。福島県田村市で小松菜のハウス栽培を手がける青年も、そうした思いを抱いて農業の世界に飛び込んだ一人。「良いものを食卓に届けたい」。揺るぎない信念の背景には、農業人としての誇りと、同じ志を持つ仲間の存在がありました。

非農家から独立就農へ。知識・経験ゼロからの挑戦

福島県田村市は中通り地方の阿武隈高原に位置する丘陵起伏が特徴的な地域です。畑作物栽培の長い歴史がある同市は生産者の技術が高く、夏秋野菜の産地として進展しています。

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福島県の名所・同市の小沢の桜

そんな田村市の船引地区で小松菜を生産してるいのが渡辺農園代表の渡辺浩延さんです。29歳の若きファーマーは高校卒業後、地元である田村市から大学進学をきっかけに上京。卒業後は3年ほど飲食業に従事し、食に関わることで農業への関心が強くなったと話します。

「食材を調理し、お客様に提供しているうちに食への関心がますます強くなりました。中でも料理の主役になりにくい野菜に興味を抱き、生産者として良い食材を提供したいと考えるようになりました」。

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就農の経緯を語ってくれた渡辺さん

違う視点から、より深く食に関わる仕事がしたいと、同市にUターンした渡辺さんですが、自身は非農家出身で農業知識は皆無。ノウハウを学ぶため、地元農家や農業普及所へ出向いて知見を深めていったといいます。

「今考えると下調べもせず、なかなか無謀だったとは思うのですが、訪ねた農家さんはとても親切に就農へのアドバイスをしてくれました。残念ながらその農家では研修を行なっていなかったため、新規就農希望者の支援等を行う『株式会社JAアグリサポートたむら』を田村農業普及所から紹介してもらい、研修を始めることができました」。

約1年半、アグリサポートたむらでの農業研修を通じて夏秋トマトやブロッコリーの生産や、水稲育苗などの知識や技術を身に着けた渡辺さん。2016年に念願の独立就農を果たします。

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2016年に就農し、現在は6棟のハウスで小松菜の栽培を手掛けています

「研修を通じて、栽培の基本的な部分から土づくりなどを学ぶことができました。経験も知識も全くなかった自分にとって、本当にありがたい就農支援制度でした」。

同じ志を持つ仲間との出会いが刺激に

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渡辺さんが手掛けた、青々とした小松菜

渡辺さんが栽培品目に小松菜を選んだ1番の理由は周年栽培ができ、年間を通して収入を確保できることです。現在、6棟のハウスを切り盛りするのは基本的に渡辺さん1人。袋詰めなどの作業は奥様が手伝ってくれるとのことです。

「小松菜は野菜の中でも料理の主役にはなりにくいですが、そこが自分の性格に合っているように思います。主役ではないかもしれないけれど、いろいろな料理にすることで美味しく食べてもらえる。だからこそ“良いもの”を作り続けていきたいですね」。

取材中、「良いものを作りたい」と繰り返し話す渡辺さん。味、見た目、栄養価、その定義は今もなお、模索中です。真摯な姿勢と言葉からは、一つの品目を極める静かな情熱が感じられます。その思いを支えるのが、同じ志を持つ仲間の存在です。

「就農2年目で『アグリクリエーターズたむら』に誘っていただき、農業人としてどうあるべきかを改めて考える機会に恵まれました。生産者の先輩や仲間との出会いは刺激でもあり、営農をするうえでも役立っています」。

「アグリクリエーターズたむら」とは、田村市内の若手農業者によって結成された団体。20代〜50代までの14名のメンバーが、農業で暮らしていける地域を実現するため、勉強会や視察、野菜のPR活動、新規就農者支援、マルシェの開催など、多岐にわたる活動に奔走しています。

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取材に訪れた21年1月、「アグリクリエーターズたむら」の活動の一環として、就農を志している方の視察を受け入れていました

「私自身はまだ、地域の課題を背負えるレベルに達してはいませんが、田村市の農業を絶やさないため、少しでも力になりたいと活動に参加しています」。
就農から4年、品質や収量が思うように達成できず苦労した場面があったと振り返る渡辺さんですが、その悔しさを楽しいと感じられる場面も増えてきたと言葉を続けます。

「農業は厳しい現実に直面することもあります。時間の使い方も難しく、技術や知識も自ら学ぶ意欲が必要です。自分が満足できたものでも、消費者が求めるレベルなのか自問自答の日々ですが、挑戦する気持ちを持ち続けることで農業人としての覚悟が備わっていくのだと思います」。

まずはやってみる。その一歩が、人生の分岐点

市場に出荷される小松菜は、渡辺さんをはじめとする生産者の弛みない努力と培った栽培技術により、消費者の元へ届けられます。
「農業をやってみたい」。その一途な想いだけで独立就農を果たした渡辺さんは、農業を志す人にメッセージを寄せてくれました。

「新しいことにチャレンジするとき、誰でも失敗はしたくないと考えると思います。でも、やってみないことには成功も失敗もありません。考えが甘いと言われるかもしれませんが、まずはやってみること、どんな方法でも最初の一歩を踏み出すことが大切だと思います。その一歩から、先のことを考えてもいいのではないでしょうか」。

経営安定のため、まずは1人でできる規模の栽培計画を立てているという渡辺さん。ゆくゆくは夫妻での営農を目指し、それに伴った規模拡大もしていく予定です。

新規就農者への支援が手厚い田村市には、長い歴史の中で培った畑作物栽培の技術や生産者の経験という財産があります。お手本となる農業人が現役で指導にあたる同市なら、目指す営農のビジョンを明確に描くことができるはず。
渡辺さんのように、厳しさを楽しさに感じられる農業の魅力をぜひ、福島県田村市で体感してみませんか?

【取材協力】
渡辺農園(福島県田村市)

福島県就農支援情報サイト「ふくのう」もご覧ください

福島県就農支援情報サイト「ふくのう」

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