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小さい農家の夏対策 「夏の葉物」のススメと病害虫防除【ゼロからはじめる独立農家#23】

西田 栄喜

ライター:

連載企画:ゼロからはじめる独立農家

小さい農家の夏対策 「夏の葉物」のススメと病害虫防除【ゼロからはじめる独立農家#23】

これからいよいよ夏本番。夏に向けて野菜の種類も豊富になり収量もどんどん増えてきて楽しみな季節。その半面、野菜に負けない勢いで伸びてくる雑草。そして病害虫対策も必要となってきくる悩ましい季節でもあります。特に近年は温暖化の影響からか豪雨や酷暑が当たり前となり、これまでの常識が通用しなくなってきました。そんな中で小さい農家だからこそできること、おすすめの夏対策を紹介します。

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夏には夏の葉野菜がある! 3つのおすすめ

夏野菜セット

彩り豊かな夏の野菜セット。実野菜は単価が高く、葉野菜を入れることでバランスと見栄えが良くなる

我が菜園生活 風来(ふうらい)の野菜販売のメインは野菜セット。単品販売はほぼありません。野菜セットにすることでまとまった金額で販売できること、またこちらで野菜を選ぶことができ、畑の都合に合わせて出せるのが大きなメリットです。

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野菜セットはお客様にとっては野菜を選べないのがデメリットですが、旬で豊作の野菜が中心となるので、相対的に量が多めとなり、好みの相性が良ければWin-Winの関係になれます。風来の場合は私が収穫から箱詰めまでをするので、小回りを利かせ、できるだけリクエストをかなえられるようお客様と対話しています。対話に時間はとられますが、このやりとりが長く買い続けてもらえる秘訣(ひけつ)ではないかと思っています。実際、風来では野菜セットの定期便(毎週や隔週お届け)を10年以上続けている人もたくさんいます。

一年で野菜の一番少ない春の端境期を抜けると、初夏からは野菜の豊富な季節。トマト、キュウリ、ナスといった夏野菜のスターがそろってきます。ただ、実野菜はそれぞれ単価も高く設定しますので、冬場と同じ価格の野菜セットではパッと見ると量が少なく感じられます。そんな夏のセットのボリュームを出すために必要なのが葉野菜です。しかしこの時期は青虫などの食害が多く、また気温が高くすぐに花が咲くので白菜やキャベツ、水菜、小松菜などを育てるのは容易ではありません。また高温に弱いレタス、リーフレタスも栽培が難しくなります。

そこでこの時期に育てている葉野菜が、エジプトや東南アジアなど原産のモロヘイヤ、ツルムラサキ、空心菜。暑い地域で育ってきたので日本の夏でも大丈夫です。また小松菜などのように1回収穫して終わりではなく、どんどん生えてくる葉を少しづつ収穫するので、1本の株が長く活躍してくれます。

ちなみにツルムラサキは名前のとおり、スタンダードなものはつるが赤紫色なのですが、細身で収穫するのは大変です。市販されているのはほとんど青茎種というつるが緑色のツルムラサキで、茎が太く、栽培がとても簡単なのでおすすめです。

モロヘイヤや空心菜もかなり知られてきましたが、まだマイナーな野菜なので野菜セットに入れる時はチラシや袋に野菜の紹介と食べ方の説明を入れるといいでしょう。夏の葉野菜はねばりけがあり栄養価も高いものが多いのでそのことも書くと喜ばれ、野菜セットの価値も上がります。

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雑草対策、病害虫を避ける栽培方法

夏の野菜栽培でやっかいなのが雑草、そして病害虫です。

夏の畑は雑草との光の奪い合い。野菜も上に高く伸びるものが多くありますが、夏の雑草もまた背の高いものが多く、その雑草をいかに抑えるか、それが問題です。風来でも当初、敷きわらやもみ殻マルチなどの自然素材も試しましたが、生命力旺盛な夏のイネ科の雑草にはほとんど効果がなく、今は黒ビニールマルチで対応しています。
詳しい方法は過去の記事「小さい畑の省力化術 限られた面積を最大限活用するには【ゼロからはじめる独立農家#20】」にありますので、参考にしてみてください。

上の記事でも紹介している「コンパニオンプランツ」は、一緒に植えることでお互いに良い影響を与え合う組み合わせの植物で、これを利用することで作物の成長を促進したり、病害虫の発生を抑えてくれたりします。夏はナスやピーマン、キュウリの脇にエダマメやインゲンを植えます。またトマト、ミニトマトの脇にバジルまたはシソを植えています。いずれも夏の雑草に負けないよう、マルチを敷いてから植えてください。

コンパニオンプランツを活用する上で、もうひとつ気をつけるべきことはサブの野菜がメインの野菜(ナス、キュウリ、トマトなど)より早く収穫できるようにすること。メインの夏野菜が終わったのに、脇のバジルやシソが元気で片付けるのがもったいなく、秋・冬野菜の準備の時期がずれたことが何度もありました。

茄子の脇で育つ枝豆

ナスの脇で育つエダマメ。夏の人気野菜

また病気対策として一番力をいれているのは、うねを高くするということです。根が水に長くつかっていると酸欠状態になり枯れたり、また病気が水をつたわり広がったりします。特に近年はゲリラ豪雨のように短時間で大量の雨が降ることも増えてきました。風来でもそれで一度ピーマンを全滅させてしまったことがあります。栽培方法もいろいろありますが、どの栽培方法でも水はけの良い畑を目指すことをおすすめします。

小さい農家、夏にあると便利なアイテム

収穫してから価値がどんどん落ちていくのが生鮮品です。特に夏場の葉野菜、そして実野菜も常温でおくと日持ちしません。冬場の野菜と違い、夏の実野菜はどんどん成長していくので収量はその日次第。収穫したものをすべてその日に発送できればいいのですが、それもなかなか難しいところ。

そこで活躍してくれるのが「玄米・野菜低温貯蔵庫」です。主に業務用でサイズはいろいろありますが、幅900×奥行き800×高さ1800ミリぐらいで15万円ほどのものでもひとつあるととても便利です。葉物は真夏だと1日で商品としては使えなくなりますが、冷蔵庫があれば2~3日保存しておけますし、トマトやキュウリなど実野菜も保存期間が倍になります。その安心感が他の作業の余裕を生み出します。

風来での夏野菜の保存、活用方法は、塩漬けにして余裕ができた時に加工するというものです。また酢漬け(ピクルス)にするということもしています。こういった漬物加工は以前なら気軽にすすめていたのですが、食品衛生法の改正にともないハードルが高くなりました。食の安全性強化という点で改正は必要なところですが、農家が加工するにはより強い覚悟が必要になってきました。
(食品衛生法の改正については次回触れたいと思います。)

もう一つ、こちらはお金に余裕ができてからでいいのですが、夏の雑草対策であると便利なのがハンマーナイフモアです。高速で回転する刃により、雑草を刈りとると同時に細断します。刈る高さも調整できるすぐれもの。何より刈った草を運び出す必要がないのでその後の作業効率も良くなります。

夏に大活躍のハンマーナイフモア

夏に大活躍のハンマーナイフモア。楽しく草刈りができる

風来では自走式ハンマーナイフモアの中でも一番小型のものを持っています。大きな面積の場合は大型で馬力があるものがいいのですが、一うねごとに管理するような小さい農業スタイルには小型のものをおすすめします。夏にはとても重宝しています。

以前、「『固定費神話』をぶちやぶれ~その農業機械は本当に必要か?~【ゼロからはじめる独立農家#08】」でも書きましたが、それぞれのイニシャルコスト、ランニングコスト、そのことで助かる時間、人件費など考えてそれぞれ購入してもらえればと思います。

いずれにしても農家にとって一番大切なのは農家その人自身。熱中症対策、体力温存については何より重視してください。「休むことも農家の仕事」私自身そう言い聞かせて、特に真夏は無理しないように心がけています。

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