【福島県福島市】生活圏内で農業を!子育て世代にもやさしい「都市近郊農業」に見る、新しい営農のカタチ|マイナビ農業

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【福島県福島市】生活圏内で農業を!子育て世代にもやさしい「都市近郊農業」に見る、新しい営農のカタチ

【福島県福島市】生活圏内で農業を!子育て世代にもやさしい「都市近郊農業」に見る、新しい営農のカタチ

社会科の授業で習った「都市近郊農業」。都心部に近い場所で営まれることから鮮度が求められる作物の輸送時間短縮に大きな利点があるのが特長です。この近郊農業、視点を変えれば消費者だけでなく、子育て世代や夫婦、単身者も自分のペースで自分らしい農業ができる営農方法ということがわかります。福島駅から車でわずか5分の場所で主にトマトのハウス栽培を営む若きファーマーの取り組みから、都市近郊農業の可能性をひも解いてみましょう!

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農業の可能性を広げる「都市近郊農業」とは?

「近郊農業」とは、都市の近郊で行われる農業を意味します。農産物を販売する市場や消費地が近いことを生かし、鮮度が求められる生鮮野菜、花、果物、鶏卵などが生産されています。都市で生活する人たちに向けたさまざまな作物が作られていることから、「都市近郊農業」と呼ばれることも。

       

生活圏内で営農をすることは、ライフスタイルが多様化する昨今、自分のペースで自分らしく農業ができることを意味します。例えば、ほ場が遠いことで懸念される、
●ほ場と住居に距離があり、通うのが大変
●子供の送り迎えに時間がかかる
●場所によっては携帯電話の電波が入りにくい
こうした課題が都市近郊農業なら解消することができます。

都市近郊農業は首都圏や人口が多い都市だけに限定された営農ではありません。むしろ、中心市街地とほ場の距離がある地方都市こそ、都市近郊農業を生かすことができます。
それを実践しているのが、福島県福島市で主にトマト(ハウス)、キュウリ、ズッキーニ(露地)を手がける『れぎゅーむれぎゅーむ』代表の今野拓也さんです。就農から7年目を迎えた今野さんの現在地、就農までの道のりをお聞きしました。

祖父母が残したほ場をフィールドに。パティシエから農家へ、ゼロからの挑戦

『れぎゅーむれぎゅーむ』代表の今野拓也さん。légume(レギューム)=フランス語で野菜の意味

福島県の県都・福島市は、県北地域における行政、商業、通勤・通学などの中心都市です。JR福島駅から車で約5分、距離にして約2kmの市街地にほ場を持つ福島市出身の今野拓也さん(36歳)は、農家の長男です。高校卒業後はパティシエを目指して東京の専門学校に進学。フランスでの修行を経て、帰国後は都内で製菓学校のアシスタントや、フランス菓子店のパティシエとして活躍していました。

「農家の長男として、いつかは農家を継がなければと思ってはいましたが、東日本大震災がそれを早めました。祖父母が農業を引退してから期間が空いてしまったので、農地は耕作放棄地に近い状態。その土地を活用した新しい視点での農業ができないかと考え、就農を決意し、2015年に農業を始めました。認定新規就農者となったのが2018年のことです」。

農家に生まれたとはいえ、今野さん自身に農業の経験はほとんどなく、農地の確保以外は全てがゼロからの挑戦でした。当時は農業承継者が新規就農者として補助金を受けるには規定があり、貯金を切り崩しながら露地栽培で季節にあわせて約20種類の作物を少量多品目で栽培し、主に直売所で販売。福島市は大規模経営の農家が多く、今野さんのように都市近郊農業を実践している農家はほとんどいなかったため、栽培技術や知識は本やインターネットを活用しながら農協の営農指導員や県の普及指導員の指導を頼りにしていたそうです。

住宅街にある10aの鉄骨ハウスでトマトを栽培

皮が薄く、食べやすい今野さんのトマト。取材スタッフ一同「柔らかくて甘い!」と感動

「作物が安定して収穫できるようになると、周囲の農家さんも認めてくれるようになり、たくさんの方が声をかけてくれるようになりました。それからは、多少距離があっても指導を仰ぐため、ベテラン農家さんのもとに自分から足を運ぶようにしました。若手就農者を応援してくれる福島市の風土は、とてもあたたかく、ありがたく感じています」。

省力化・効率化を見据え、ハウス内環境制御システムを整備

「周辺が住宅地なので、騒音や農薬散布には常に配慮しています」

露地栽培は夏に収穫が集中するため、冬の寒さが厳しい福島市では冬場の収入源をどう確保するかが安定経営のカギになります。そこで今野さんは就農から4年を迎えた年に、農業次世代人材投資資金(経営開始型)と青年等就農資金を活用し、10aの鉄骨ハウスを購入して、トマトのハウス栽培に乗り出します。また、子供が生まれたことを機に、子育てをしながらの農業経営を考えるようになったそうです。これが現在の営農スタイル確立のきっかけになったと当時を振り返ります。

「子育て世代の夫婦が農業をやるのは、労力的にも時間的にもかなり難しいと言えます。そこで導入したのがハウス内環境制御システムです。ハウスの自動開閉や、かん水の自動化、温度センサーによる暖房などを導入したことで省力化と効率化を図ることができました。また、経験の浅い部分を機械が補ってくれるので、作物の品質向上にもつながっています」。

「人手が足りない部分は機械を導入することで補うことができます」

今野さんの自宅からほ場までは車で約5分。周辺には商店や保育園、飲食店、コンビニなどが充実しています。車を20分も走らせれば広大な田畑や果樹園が広がる福島市は今野さん曰く、「ちょうどいい田舎」。渋滞がほとんど発生しないため、首都圏の20分と地方のそれとでは時間以上の距離があります。対して、消費者と近い位置で農作物を栽培できる都市近郊農業は、作物に付加価値を付けられると今野さんは分析します。

福島駅前の様子。福島駅から約5分のところに今野さんのほ場はあります。

「食べごろを店に並ぶ時期に合わせるため、流通に適したトマトは皮が厚い品種が一般的です。消費者と距離が近い都市近郊農業は、食べごろを待ってから収穫ができ、皮が薄く食べやすいトマトを作ることができます。ここでしか食べられない作物を作ることで差別化を図れるのも都市近郊農業のメリットだと思います」。
就農6年目を迎えた2021年に認定農業者になった今野さん。若い世代が農業に参入しやすい環境を整えたいとの思いから認定研修機関となり、現在、3名の研修生を受け入れています。

子育てと農業の両立がしたい。肯定してくれたのが今野さんでした

2021年4月より、今野さんのもとで農業研修に勤しむ福島市在住の平松夏澄さんは、美容師のご主人と4歳のお子さんの3人家族です。調理師免許を持っていることから食への関心は強く、自然と農業に興味を抱くようになったそうです。
「農業をやりたいと話すと、多くの人は子供が小さいうちは大変、女性ひとりでは難しいと言います。そんなとき、小さいお子さんがいても営農している今野さんの存在を知り、“子育てと農業の両立はやり方次第”と言ってもらえたことで、はじめて自分の思いを肯定してもらえたように思いました」。

平松さんの研修期間は2年。「1年目は農業とは何かを学び、2年目は技術や知識を身につけていきたい」と、抱負を話してくれました

農業は大規模経営だけではなく、労働力や生活スタイルに合わせた小規模経営でも成り立つことを身をもって教える今野さんは、研修生を受け入れるに際し、自身が経験した就農までのハードルを、少しでも下げたいという思いがあったと話します。

「自然とともに生きる農業は魅力的であると同時に、天候に大きく左右されるリスクがあります。また、資金面や農地の確保、補助金申請の手続きなど、新規参入にはさまざまなハードルがあります。それらの不安材料を少しでも解消し、農業に参入しやすい方向に導くのがわたしの役目。技術や知識は未熟な面もあるので、研修生と一緒に成長したいと考えています」。

今野さんの指導を受ける平松さん

市街地にある今野さんのほ場は、幼稚園に通うお子さんの送り迎えにも便利と平松さん。体力的、時間的に難しい作業は機械が補うことで、女性だから、子供が小さいからという理由は農業のスタート地点に立てない理由にはならないことを、今野さんの営農スタイルは示しています。

「市街地に近い場所でも耕作放棄地が目立つようになってきました。それはとても寂しいことです。農業を志す若者と耕作放棄地を結びつけることで、担い手不足を解消することができます。今後は法人化を視野に入れ、就農希望者の受け皿として、独立と雇用の選択肢を作っていきたいと考えています」(今野さん)。

新鮮な作物の提供と、ライフスタイルに合わせた営農。消費者と生産者、その両方にさまざまなメリットをもたらす都市近郊農業。大規模営農も含め、多様な営農スタイルを実現できる福島県なら、自分らしい営農スタイルがきっと見つかることでしょう。

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【取材協力】

『れぎゅーむれぎゅーむ』代表 今野拓也さん
東日本大震災を機に福島へUターンし、2018年に認定新規就農者となる。ズッキーニとトマトの2品種でJGAPを取得。現在は認定農業者となり、独立を目指す研修生を3名受け入れている。

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