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企業参入で稲作をもうすぐ20年、「体力が続く限りずっと」と望む会社員

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

企業参入で稲作をもうすぐ20年、「体力が続く限りずっと」と望む会社員

新規事業を始めるので、担当してほしい――。社員が会社からそんな指示を受けるのは珍しいことではない。ただそれが農業となると、経験者はそう多くないだろう。谷村建設(新潟県糸魚川市)の子会社、糸魚川農業興舎(同)で働く渡辺敏哉(わたなべ・としや)さんにインタビューした。

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「一度もうまくいっていない」

谷村建設は2005年に糸魚川農業興舎(以下農業興舎)を設立した。「地域の課題は農家の後継者不足」「地域が衰退すれば本業の建設業も難しくなる」。谷村建設のオーナーがそう考えたことが農業参入のきっかけになった。農業興舎はこの方針の通り、20年近くにわたって農業を続けてきた。

約20ヘクタールの水田で稲作を手がけているほか、ブドウやトマトなども栽培している。作物の品質への評価は高く、糸魚川市内だけでなく各地の個人顧客に直接販売している。中元や歳暮の贈答用で谷村建設の取引先に配ることもある。それが、口コミでファンを増やすことにもつながっている。

稲作を担当している渡辺さんは非農家の出身。谷村建設で10年余り建設現場の仕事をしていたが、農業参入を機に稲作を任された。「彼の人柄なら集落に無理なく溶け込める」。そう会社が判断したからだった。実際、渡辺さんは地域と摩擦を起こすことなく、自然に担い手として認められた。

農業興舎

糸魚川農業興舎

農業興舎の田んぼの多くは、「市野々(いちのの)」という山あいの集落にある。長年そこでコメづくりをしてきた斉藤義昭(さいとう・よしあき)さんから約3ヘクタールの田んぼを借りたことが、農業興舎の稲作の出発点になった。

稲作担当になった渡辺さんの日々は、朝8時に斉藤さんの家を訪ね、その日に何をすべきかを教えてもらうことからスタートした。

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