マイナビ農業TOP > 生産技術 > ブドウのAI栽培や新品種「パープルM」をお披露目!ノウタス「ぶどうEXPO」で見えた未来型農業

ブドウのAI栽培や新品種「パープルM」をお披露目!ノウタス「ぶどうEXPO」で見えた未来型農業

ブドウのAI栽培や新品種「パープルM」をお披露目!ノウタス「ぶどうEXPO」で見えた未来型農業

アグリテインメント事業を推進するノウタス株式会社が岡山県にある林ぶどう研究所とブドウの品種改良に関するパートナーシップを締結。9月16日に大阪・関西万博内「HASSHOKU」で開催されたイベント「ぶどうEXPO」では、新品種「パープルM」のプロトタイプが公開されました。

twitter twitter twitter twitter
URLをコピー

「パープルM」プロジェクトとは?

「パープルM」プロジェクトは、2023年にラジオ番組「村上信五くんと経済クン」がきっかけで始まりました。
SUPER EIGHTの村上信五さんが、番組ゲストとして登場したノウタス株式会社の髙橋明久さんと意気投合。村上信五さんの「メンバーカラーが紫なので、村上のMとマスカットのMを足して、『パープルM』という名前の新品種を作りたい」と活動を開始しました。

2023年冬には、北海道大学でブドウ育種ワークショップを開催し、2024年には村上信五さんの出身地である、大阪府高槻市と連携協定を結び、ブドウ農園を開園。さらに、ブドウアドバイザーとしてノウタスに関わっている、ライターでブドウマニアの少年Bさんの紹介によって、林ぶどう研究所でブドウ育種の基礎知識を学ぶなど、着実にブドウに関する知識を深めていきました。

林ぶどう研究所の所長・林慎悟さんは、直接対面する前から「パープルM」プロジェクトに関心を寄せ、独自に研究を進めていたそう。今回、ノウタス株式会社は林ぶどう研究所とパートナーシップを締結することになりました。

関連記事
ノウタス、世界展開を見据えたブドウ育種ワークショップを開催
ノウタス、世界展開を見据えたブドウ育種ワークショップを開催
既存の品種を掛け合わせ、新たな品種を作る「育種」。その育種について考えるワークショップが北海道大学で行われました。 ワークショップを開催したのは、農業エンターテインメント事業を推進するノウタス株式会社と国立大学法人北海…
ノウタス、メンバーゆかりの大阪府高槻市と連携協定締結 ブドウの新種開発に期待膨らむ
ノウタス、メンバーゆかりの大阪府高槻市と連携協定締結 ブドウの新種開発に期待膨らむ
アグリテインメント事業を推進するノウタス株式会社が2024年6月、大阪府高槻市と連携協定を締結。また子会社のノウタス高槻農園株式会社が、同市にブドウを生産する参加型農園を開きました。「人生に農(ノウ)を足す(タス)」という同…

AIを活用したブドウのポット栽培技術

また、ノウタスはアグリサイエンス事業にも進出。AI技術を活用した鉢(ポット)単位でのブドウ栽培に成功しました。AIが鉢ごとの成長や休眠状態を自動で把握・制御することで、季節や場所を問わず安定したブドウ生産を可能にします。今後はこの栽培方法専用の用地を確保し、本格展開に乗り出します。

誕生した「パープルM」プロトタイプとは

「パープルM」のプロトタイプもお披露目!

「ぶどうEXPO」でお披露目された「パープルM」のプロトタイプは、色素の濃い黒ブドウ「ブラジル」と、味や食感のいい欧州系品種を掛け合わせて、林ぶどう研究所が交配した品種です。

村上信五さんは「『これかい!!!』と思うビジュアルかもしれませんが、これを元に量産体制の方法や農家に負担をかけない品種を目指したいです」「まだ課題は山積していますが、僕としてはシャインマスカットに変わるところまで行きたい」と力強く話しました。

左から、村上信五さん、林ぶどう研究所・林慎悟さん、ノウタス髙橋明久社長

シャインマスカットとは全く違うアプローチで作られたという「パープルM」。紫色をした小粒のブドウで、裂果の心配が少なく、育てやすいとのこと。今後、高槻市内の農園で植え付け作業を行い、3~4年後には収穫を目指すとしています。

関連記事
ブドウ育種家・林ぶどう研究所に聞く、交配育種の手順とは(除雄・交配編)
ブドウ育種家・林ぶどう研究所に聞く、交配育種の手順とは(除雄・交配編)
ブドウの新品種を作る方法はいくつかありますが、もっとも一般的なものが「交配育種」です。いつかは自分だけのオリジナル品種を作ってみたい。そんな野望を抱く農家さんもいるでしょう。自分の好きな品種を掛け合わせて、品種改良する…

革新的な共同研究の数々!

さらに、様々な企業・研究機関との共同研究を目指すことも発表されました。

まずはペロブスカイト太陽電池の農業活用。ノーベル賞候補としても注目される桐蔭横浜大学 特任教授の宮坂力氏と共に、この次世代型太陽電池を農業現場に導入し、軽量・柔軟かつ高効率な発電技術を活かして、農業用電力の自給自足モデル構築を目指します。

また、九州大学の松元賢教授が培養・応用を進めている、トリコデルマ菌培養土によるブドウ栽培技術が紹介されました。松元教授が発見した有用菌株を園芸・果樹分野に応用しようとする取り組みのひとつ。企業と大学が連携する最前線の研究成果として、多くの来場者や関係者の関心を集めました。今後は高槻農園でも研究を重ねていくとのことです。

発表する松元賢教授とノウタス髙橋明久社長

また、スマート農業DXを専門にしているAGRIST株式会社とブドウ収穫ロボットの共同研究をしていくことも発表されました。「いつでも、どこでも、だれでも」ブドウ生産が可能な世界を目指します。

企業とのコラボ商品も

「ぶどうEXPO」では、様々な企業とのコラボ商品の試食もありました。

コシノジュンコとのコラボ農作業着

ファッションデザイナー・コシノジュンコ氏との協業により、農作業着ブランド「MR.JUNKO WORK WEAR」が誕生!ノウタスが監修した機能的かつスタイリッシュなデザインのほか、別注モデルの展開も予定されており、“着る農業”の魅力がさらに広がりそうです!

規格外ぶどうのバウムクーヘン(ココトモファーム・マイナビ農業・アグベル)

昨年誕生したブドウのココトモファームとマイナビ農業とのコラボ商品であるのバウムクーヘンは、味や品質には問題がないものの、着色不良や傷がついてしまったブドウを農家から買い取り、米粉100%で作っています。

ぶどう琥珀糖(ハラペコラボ)

新商品となるハラペコラボの琥珀糖は、「和菓子でブドウをうまくアレンジして作れないか」という村上信五さんのアイデアから誕生。現在は販売準備中とのことで、発売が楽しみです。

ココトモファームのバウムクーヘン(写真手前)とかわいいカプセルに入った琥珀糖(写真奥)

紫ワイン(雫ジャパン)

雫ジャパンが販売する「紫ワイン」のパープルMコラボラベル「パープルM~紫ワイン~」も紹介されました。バタフライピーの抗酸化作用を活かした鮮やかな紫色が印象的でした!

シコメルフードテックの摘粒ぶどうのステーキソース

シコメルフードテックとのコラボレーションでは、ぶどうの栽培過程で間引かれる摘粒(てきりゅう)ぶどうを有効活用したステーキソースが開発されました。

規格外ぶどうの限定スイーツ(Mr. CHEESECAKE・長野須坂 牧農園)

人気ブランド「Mr. CHEESECAKE」との共同企画では、規格外ぶどうを使用した限定スイーツを提供。完熟ぶどうならではの香りやコクを生かし、フードロス削減とスイーツの新たな価値創出を両立しています。

まだしばらく先のことになりそうですが、今後は新品種「パープルM」を使用した他の商品展開も期待されます。


関連記事
持続可能な農業を形にした「パープルバウム」がついに発売 開発者が裏話を語り尽くす!
持続可能な農業を形にした「パープルバウム」がついに発売 開発者が裏話を語り尽くす!
「ありそうでなかった!」と開発者が語る6次化商品、ブドウのバウムクーヘンが完成しました。味や品質には問題がないものの、着色不良や傷がついてしまったブドウを農家から買い取り、米粉100% で作ったグルテンフリーのバウムクーヘン…

「ブドウの歴史を1房で味わう」食べ比べイベント

最後は、ブドウマニアの少年Bさんによる「ブドウの歴史を1房で味わう」食べ比べイベントが開催されました。
会場に現れたのは、全国から集められた33品種のブドウ。ブドウの房はおおむね30~35粒に仕上げられることが多く、1粒ずつ味わうとちょうどブドウ1房の量になります。

ブドウマニアの少年Bさん。全国のおいしいブドウを前に満面の笑み!

日本在来種の「甲州」から始まり、グレープジュースの原料としても使われている「コンコード」、ブドウシーズンの訪れを告げる「デラウェア」、高級品種の「マスカット・オブ・アレキサンドリア」など、海外から日本に入ってきた主要品種を時代に沿って紹介してくれました。

日本で育種された「ネオマスカット」や「マスカット・ベーリーA」、「巨峰」、「甲斐路」といった品種を紹介したあとは、みんな大好き「シャインマスカット」の出番。ここまでにシャインマスカットの祖父母にあたる品種を食べた後だけに、「祖父母にあたる品種の特性がよく出ています」という少年Bさんの説明に、会場にいた全員が頷いていました。

シャインマスカット以降に登場した品種としては、林ぶどう研究所が生み出した「マスカットジパング」や、1粒が40グラムを超えるという「ティアーズレッド」、大粒の「真沙果」といった品種も並べられ、来場者の度肝を抜くシーンも。

関連記事
ブドウ界に衝撃を与えた男が語る「育種の勧め」
ブドウ界に衝撃を与えた男が語る「育種の勧め」
かつてブドウ界に衝撃を与えた品種があります。その名は「ティアーズレッド」。一粒が最大で50グラムにもなるという超大粒のブドウ。そのブドウを作りだした関口孝(せきぐち・たかし)さんにお話を伺いました。「おらがブドウを作れ」…

シャインマスカットの子品種も紹介され、民間で育種された「マスカ・サーティーン」や「富士の輝」、長野県が開発した「クイーンルージュ」、島根県の「神紅」、山梨県の「サンシャインレッド」などが登場。
そして、最後のトリを飾ったのは、長野県の北澤ぶどう園が育種した「昭峰」。2025年秋から苗木の販売が解禁されたという、まさに最新の品種です。「このような品種たちによって、日本のブドウの歴史が作られてきました。この次に、『パープルM』が名を連ねてくれることを心から願っています」という少年Bさんの言葉で、ノウタスぶどうEXPOは締めくくられました。
次はどのような展開が待っているのか。ノウタス株式会社の動きから目が離せません。

関連キーワード

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE
  • Hatena
  • URLをコピー

関連記事

あなたへのおすすめ

タイアップ企画