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乾田直播に使える農薬・BSを解説 作期ごとに適した資材が見つかる!

相馬はじめ

ライター:

乾田直播に使える農薬・BSを解説 作期ごとに適した資材が見つかる!

米作りの現場で、省力化やコスト削減の切り札として関心が高まっている乾田直播(かんでんちょくはん)。しかし、いざ挑戦しようと考えたときに「雑草対策はこれまでと同じ?」「苗立ちは安定するの?」などの、たくさんの疑問や不安が頭をよぎります。そこで今回は乾田直播の成功をサポートする農薬とイネの力を引き出すBS(バイオスティミュラント)資材を紹介します。作期ごとに分かりやすく整理していますので、ぜひ栽培に役立ててください。

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乾田直播の成否は雑草対策が9割! 防除体系を築く農薬選び

乾田直播に使える農薬・BSを解説 作期ごとに適した資材が見つかる!

乾田直播を成功させる上で、避けては通れないのが雑草対策です。成否の9割は、雑草をいかに防除できるかにかかっていると言っても過言ではありません。

なぜ乾田直播は雑草の防除が重要なのか?

その理由は、乾田直播の栽培工程そのものにあります。
従来の移植栽培で行われる代かきは、単に田んぼを均平にするだけの作業ではありません。土と水を丁寧にかき混ぜることで、土の表面に酸素の少ない層を作り出し、多くの雑草の種子が発芽するのを物理的に抑え込むという、先人たちの知恵が詰まった防除技術でした。

しかし省力化を目的とする乾田直播では、代かきを行いません。水を張らない乾いた畑のような状態で種をまくため、雑草にとっても発芽しやすい好条件が整ってしまうのです。
さらに、移植栽培のように大きく育った苗を植えるのではなく、種からスタートするため、初期のイネは雑草との生存競争において圧倒的に不利な状況に置かれます。
このため乾田直播では、生育ステージごとに適切な農薬を戦略的に組み合わせて使用するという、防除体系を築くことが重要になるのです。

播種(はしゅ)〜出芽前:雑草の予防と除草

播種〜出芽前:雑草の予防と殲滅

イネの種をまいてから小さな芽が出るまでの雑草対策は、その後の生育から終了を大きく左右します。ここでは、移植栽培の考え方の違いとともに、乾田直播における2つのアプローチ、雑草の予防と除草の重要性をお伝えします。

移植栽培で使う「初期一発剤」の粒剤は使えない

まず押さえておきたいのは、乾田直播と移植栽培に適した除草剤の違いです。移植栽培では、田植えと同時に(または直後に)粒剤の「初期一発処理剤」を散布するのが一般的です。
しかし乾田直播はこの時期に、これらの粒剤は使えません。なぜなら、粒剤の有効成分は、田んぼの水に溶けて拡散することで効果を発揮するからです。水を張っていない乾田状態では、粒剤はただ土の上に転がっているだけで、雑草を抑えることができないのです。
そのため乾田直播では、畑作用の液剤や乳剤タイプの除草剤を戦略的に使用する必要があります。

土壌処理剤でこれから生える雑草を防除する

土壌処理剤:これから生える雑草を抑える

畑作用の土壌処理剤は、土の表面に薬剤の薄い層(処理層)を作り、これから発芽しようとする雑草の種子を抑え込む、いわば予防薬です。播種直後から使用することで、イネが出芽するまでの間、雑草に脅かされない状態を保つことができます。乾田直播に適した土壌処理剤は、以下の通りです。

土壌処理剤 有効成分
・トレファノサイド剤 トリフルラリン
・マーシェット乳剤 ブタクロール
・サターンバアロ剤
・サターン乳剤
ベンチオカーブなど

雑草の発生が多いと予想される圃場(ほじょう)では、上記の土壌処理剤を組み込むことが安定した防除のカギ。ただし播種時期が早い(4月などの)場合、薬剤を散布してから雑草が本格的に動き出すまでの期間が長くなり、イネが出芽する前に効果が切れてしまう薬効切れのリスクがあります。土壌処理剤は散布のタイミングを見極めることが重要です。

非選択性除草剤で今いる雑草をリセット

非選択性除草剤は、すでに出芽してしまった雑草を根こそぎ枯らす薬です。土壌処理剤をすり抜けて生えてきた雑草を除草するために使用します。乾田直播に用いられる非選択性除草剤は、以下の通りです。

非選択性除草剤 有効成分
・ラウンドアップ
・カルナクス
・草枯らし
グリホサート
・プリグロックスL ジクワット・パラコート

ただ非選択性除草剤は、土の中に残って効果を発揮する残効性がないことから、できるだけ多くの雑草が出そろった後に散布したいのが本音。しかし、イネの芽が土から少しでも顔を出してしまうと、そのイネまで枯らしてしまう致命的な薬害が出ます。そのため「雑草は出そろったが、イネの芽はまだ土の中にいる」という、ほんの数日間の適期を見極めて散布するスキルが求められます。

出芽後〜水入れ前:イネと雑草を見分ける選択的除草

出芽後〜水入れ前:イネと雑草を見分ける選択的除草

イネの芽が無事に出そろい、少しずつ緑が濃くなってくるこの時期。ここからはイネには影響を与えず、雑草だけを枯らす選択性除草剤の出番です。

使いやすさで選ぶか、効果で選ぶか

この時期に使える薬剤は、大きく分けて以下の2タイプに分類できます。

  • 生育ステージに依存しないタイプ
  • 生育ステージに依存するタイプ

それぞれの特徴を理解し、使う薬剤を選ぶ能力が求められます。

イネの生育ステージに依存しない除草剤

代表的な薬剤

  • クリンチャーEW
  • クリンチャーバスME液剤
  • ノミニー液剤など

特徴:イネの葉齢を気にせず散布できるため、作業計画が立てやすいのが魅力。

例えば、クリンチャーEWはイネ科雑草、特に防除が難しい雑草であるノビエへの効果が高い薬剤です。注意点として、広葉雑草には効果がないため、別途対策が必要です。また、効果を引き出すには、薬剤の付着性などを高める展着剤の併用が必須。出芽前の土壌処理剤でノビエの生育が抑制されている状態だと、効果が劣ることがあるため、注意が必要です。

イネの生育ステージに依存する除草剤

代表的な薬剤

  • ハードパンチDF
  • バックアタックDF
  • ワイドアタックSC

特徴:使用時期に制限はあるが、出芽前の土壌処理剤と組み合わせた乾田期2回体系などで計画的に使用することで、高い効果を発揮できる。

上記のうちハードパンチDFは、イネの2葉期から使用できます。ただし、ノビエの5葉期までに散布しないと十分な効果が得られません。天候や気温なども参考に、葉齢の進み具合を見て計画を立てましょう。

大前提として、どの薬剤を用いるにせよ、絶対的なタイムリミットが存在します。それはノビエの5葉期までです。雑草がこれ以上大きくなると、薬剤が効きにくくなり、手遅れになる可能性があります。雑草が多発している圃場では、ノビエが3〜4葉期の早めのタイミングで散布することが、乾田直播を成功に導くコツです。

水入れ後の処理:移植栽培の経験が生きる

水入れ後の処理:移植栽培の経験が生きる

圃場に入水した後の除草は、乾田直播における雑草防除の総仕上げです。ここからの考え方は、基本的に移植栽培と大きく変わることはありません。移植栽培で培った知識と経験を生かせるステージと言えるでしょう。
使用する除草剤も、移植栽培でなじみのある中期剤や後期剤が中心となります。

入水後に使える代表的な除草剤

  • エンペラーフロアブル
  • ボデーガードフロアブル
  • レブラスジャンボ
  • アッパレZジャンボ
  • ワイドアタックSC
  • ヒエクリーン1キロ粒剤

基本は同じだからこそ、乾田直播ではより一層の注意が必要なポイントが2つあります。

圃場の均平と水管理の徹底

除草剤の効果を安定させるには、土の表面が露出しないよう、均一に湛水(たんすい)状態を保つことが絶対条件です。これは移植栽培も同じですが、代かきを行わない乾田直播の圃場は、わずかな高低差が残りやすい傾向があります。土が露出している箇所は、除草剤の効果が満足に発揮されず、雑草が再生する原因になります。

漏水対策の重要性

代かきをしない圃場は、移植栽培に比べて水が抜けやすい状態にあります。日減水深(1日に減る水の深さ)が2センチ以上になるような圃場では、水と一緒に除草成分も土の深層部へ流れてしまい、効果不足や、根が薬剤を吸うことによる薬害などのリスクが高まります。あぜ塗りなどの漏水対策は、移植栽培のとき以上に念入りに行うことが大切です。

乾田直播で押さえておきたい鳥害対策

押さえておきたい「鳥害対策」

乾田直播において、雑草と並んで収量を左右する要因が鳥による食害です。せっかくまいた種もみが鳥に食べられてしまっては、元も子もありません。
まだ他の餌が少ない3〜4月の早期に播種する場合は、鳥害のリスクが非常に高まります。
そのためのもっとも基本的かつ効果的な対策が、播種前の種子処理です。

代表的な資材はチウラム(商品名:キヒゲンなど)

チウラムは、鳥が嫌う成分(忌避効果成分)を持つだけでなく、イネの重要病害である、いもち病やばか苗病などに対する殺菌効果も併せ持つ、種子消毒剤です。
播種前にチウラムを種子に粉衣(粉末状にしてまぶすこと)すれば、鳥からの食害を大幅に減らし、健全な苗立ちをサポートすることができます。

乾田直播を後押しするバイオスティミュラント資材

乾田直播を後押しするバイオスティミュラント資材

農薬による守りの雑草対策と並行して、近年、乾田直播の成功率を高める攻めのアプローチとして注目されているのが、バイオスティミュラント(以下、BS)です。
BSとは農薬のように病害虫や雑草を直接たたくものではなく、肥料のように植物に直接栄養を与えるものでもありません。
BSの役割は、植物が本来持っている力を内側から引き出し、さまざまな環境ストレスに対する抵抗力を高めること。人間で言えば、病気を治す薬ではなく、日々の体調を整え、夏バテやストレスに負けない体を作るためのサプリメントや栄養ドリンクのような存在と考えると分かりやすいでしょう。
苗立ちが不安定になりがちな乾田直播において、BSはイネの力強いスタートダッシュを後押しする、強力なパートナーです。

乾田直播で注目のBS資材

ここでは乾田直播での活用が期待される代表的なBS資材を4つ紹介します。

MYKOS(マイコス)

MYKOSは、イネの根に共生する「菌根菌」を種子に付着させる資材です。菌根菌は、根の表面積を飛躍的に広げ、土壌中のリン酸などの養分吸収を強力にサポートします。これにより、初期生育が安定し、力強い苗立ちが期待できます。注意点として、マイコス菌根菌は「生きた菌」です。種子消毒で殺菌剤を併用すると効果がなくなるので気をつけてください。

X(クロス)-RCS

アサヒグループが手掛けるX-RCSは、ビール酵母の細胞壁から作られた資材で、植物の根の成長を促進する効果が報告されています。マイコス菌との相性も良く、種子粉衣時に同時に処理することで、さらなる相乗効果が期待されています。

ユートリシャN

ユートリシャNは、微生物の力によって空気中の窒素を作物に供給できる養分へと変える資材です。乾田直播のように水を使わないことで肥料ムラが生じやすい栽培方法において、その効果が注目されています。実際に導入した事例では、圃場全体の生育ムラが解消され、窒素が穏やかに効き続けることで収量が平均8%増加したと報告されています。また、高温下でも収穫直前まで葉の緑が維持され、品質の維持にも貢献したそうです。

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BIOZ(ビオズ)サンストーン

BIOZサンストーンは、イネの力強いスタートダッシュを後押しする、種子処理用のBSです。種もみに塗布することで、発芽の勢いを高め、力強い根張りを助け、播種後の乾燥などの環境ストレスに負けないタフな苗を育てるという、3つの重要な効果を発揮します。これにより初期生育のムラが抑えられ、収量安定の土台を築くことが期待できます。

乾田直播に使える農薬・BSまとめ

まとめ:乾田直播に使える資材

乾田直播の成功には、戦略的な雑草対策と、健全な初期生育のサポートが不可欠です。本記事では、そのための具体的な選択肢として、生育ステージごとに活用できる農薬と、植物の潜在能力を引き出すバイオスティミュラントを解説しました。これらは、乾田直播で直面する課題を解決するための有効なツールです。
そして最終的には、自身の圃場環境(雑草の種類や土壌の状態など)をよく観察し、目的に合った資材を適切に組み合わせることが大切です。

※ 農薬を使用する際は、必ず製品のラベル表示をよく読み、登録されている作物や使用時期、使用量を厳守してください。また、使用にあたっては、地域の農業指導機関のアドバイスも参考にすることをおすすめします。

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