病気の父親のために養蜂の世界へ
鈴木さんは練馬区のほか、実家のある千葉市で養蜂を手がけている。農場とのコラボに力を入れているのは練馬区で、4カ所ミツバチの巣箱を入れている。ブルーベリー園とミカン園、観光農園、体験農園だ。
ミツバチを飼うようになったのは、病気の父親に見せたいと思ったのがきっかけだ。父親は有機栽培で野菜を育て、所有する山林の管理に力を入れていた。自然を大切に思う父親にとって、ミツバチは欠かせない存在だった。
父親が亡くなるのには間に合わなかったが、自生するニホンミツバチを巣箱に呼び込むことには成功した。それを機に養蜂の世界に入り、練馬区でセイヨウミツバチで農場とのコラボを始めた。2024年のことだ。

鈴木美幸さん
練馬区は都内でも農業が盛んな地域で、受粉を仲立ちするミツバチのニーズは多いと思っていた。だが予想に反し、多くの農家は「要らない」という反応だった。刺されるのを心配したのかもしれない。
実際はミツバチは「自分の仕事」に集中し、人を刺すことはまずない。それでも「巣箱を置かせてほしい」という提案への反応は鈍く、なかなか設置場所は見つからなかった。ようやく見つかったのがいまの4軒だ。
結論からいえば、巣箱を入れた農場だけでなく、近隣の農家にもミツバチがいることの効果があった。収量が目に見えて増えたからだ。その結果、ミツバチが蜜源に困らないように、作物を増やしてくれる農家も現れた。
「鈴なりに実るようになった」
巣箱を入れた農園の声を紹介しよう。例えば最初に鈴木さんとコラボしたブルーベリー園は7月が中心だった収穫期間が延びて、8月いっぱいまで収穫ができるようになった。それだけたくさん実るようになったのだ。
この農園はもともと近所に養蜂をしている人がいて、受粉を手助けしてくれていた。養蜂は趣味のレベルだったようだが、それでも恩恵はあった。その人が養蜂をやめたことで収量が落ち、ミツバチの大切さを実感していた。
巣箱を入れた農園の近くの農家からも、感謝の声が届いた。それまでズッキーニやカボチャを人の手で受粉させていたが、作業が大変で、栽培をやめようと思っていた。ミツバチのおかげで、人手に頼らずにすむようになった。

ブルーベリー園のミツバチ
思わぬ成果は他にもある。巣箱を入れたミカン園は、敷地に生えている栗の木まで「鈴なりに実るようになった」。

















