目指すのはいつでも野菜が収穫できる畑
最近、野菜を買ったのはいつだろうか。忘れた。ともあれ、わが家の野菜の自給率が90%を超えているのは間違いない。近所の農家からいただくおすそ分けまで含めれば、スーパーで買う野菜はおそらく消費量の5%程度ではないだろうか。それが何かといえば、例えば年が明けてからのタマネギだ。トマトやナスなど旬を味わう野菜と違って一年中使うものなので、栽培や貯蔵がうまくいかないと足りなくなる。それから、モヤシ。ほかには何かあったかな……。思い出せない。まぁ、それくらい野菜は自給できているってことだ。

タマネギは家庭で最も多く使う野菜のひとつ。貯蔵性も高いので、なるべくたくさんつくっておきたい
この原稿を書いている5月の今、畑ではソラマメにエンドウ、キャベツにイチゴと、とにかく何かしら収穫できる。6月になればジャガイモやタマネギ、ニンニクに加えて、トマトやキュウリといった夏野菜もとれ始める。そのすべては100%オーガニック。菜園のある暮らしはベリーリッチ。

今年はソラマメが豊作。これだけのソラマメをスーパーで買ったらいくらになるかな
年間を通して切れ目なく常に数種類の野菜が食卓に上ること。それが自給の肝だ。簡単そうに聞こえるが、何も考えずに育てていると、ある時期だけ豊作で、あとは何もない──という事態になりかねない。だからこそ心がけていることが3つある。「少量多品目栽培」「時間差栽培」「端境期対策」である。
自給率を高める3つのコツ
1. 少量多品目栽培
自給用の畑では20〜50品目を目安に、一年を通して切れ目なくとれるよう野菜をつくる。これを少量多品目栽培という。さまざまな種類の野菜があることで食卓が豊かになり、失敗したときのリスクも軽減される。品目が限られると、病害や天候などの要因で全滅する恐れがあるが、多品目であれば、ある野菜に病気や害虫が発生しても、性質の異なる野菜には広がりにくい。実際、すべての作物を理想通りにつくるのは難しい。失敗しても別の野菜がとれる状況をつくっておくことが大切なのだ。

ある夏の日の収穫の一部。これで夜は何をつくろうか
野菜の種類だけでなく、品種も多様化できるとさらにレジリエンス(変動やダメージからの回復力)が高まる。トマトであれば、大玉がうまくできなくても、中玉やミニもあわせてつくっておけば、それはとれるかもしれない。品種によって食味や栽培のしやすさも異なる。毎年トマトがうまくできないという人は、品種を変えてみるのもひとつの手だ。
2. 時間差栽培
種まきや植えつけは、一度にまとめてやらず、時期をずらして何回かに分ける。これが時間差栽培だ。例えば春まき野菜なら、早めにまけば寒さのリスクはあるものの、害虫が少なく育てやすい。適期まきは安定しやすく、遅めにまけば収穫時期を後ろに延ばせる。どれかが失敗しても、全部やられる可能性は低くなる。
時期をずらすと、野菜が順番に育つのもいいところだ。キャベツが一度に20個とれると正直困るが、毎週少しずつなら食卓で無理なく消費できる。細かな計画を立てなくても、2週間おきくらいに種をまくだけで収穫時期は自然と分散する。結果として、野菜が少なくなる時期の穴埋めにもなる。

奥の背の低いトウモロコシは、手前のトウモロコシの2週間後に種をまいたもの
3. 端境期対策
自給率を高めるうえで難しいのが「端境(はざかい)期」だ。野菜が切り替わる春先と秋口は、どうしても食卓が寂しくなりやすい。
春の端境期対策では、冬のうちから保温して野菜を育て始めることだ。ビニールトンネルを使えば、コマツナやホウレンソウなどの葉物を早めに収穫できる。キャベツやブロッコリーも、晩秋に植えておけば春の貴重な野菜になる。
一方、秋の端境期は、夏野菜をどこまで引っ張れるかがポイントだ。ナスやキュウリの抑制栽培に加え、長期収穫できるピーマンやオクラも頼りになる。また、サツマイモやサトイモの早掘りも、この時期の助けになる。
同じ野菜でも、品種によって栽培時期はかなり違う。種袋の情報を参考に年間を通して野菜が途切れないように組み合わせていくのだ。

キャベツは品種を組み合わせることで、ほぼ一年中栽培できる
自給のための栽培プラン
では、実際に一年を通してどのように野菜を育てていくか。わが家のおおまかな流れを紹介しよう。
【春】3月〜6月
畑が本格的にスタートする春。3月に先陣を切るのはジャガイモだ。毎年かなり多めに植える。翌年春まで貯蔵できるので、わが家では主食級の存在だ。8月下旬には秋ジャガを植えつけ、これは冬から翌年初夏まで食べ続けられるので、ジャガイモは一年中切れることがない。
トマトは4月に50株植えつける。トウモロコシとエダマメの最初の種まきも4月で、時期をずらしながら何回かに分けてまく。キュウリは4月中旬に2〜3株の苗を植え、5月と6月にも2株ずつ植える。弱った株は早めに片付け、若い株にバトンタッチしながら秋までとり続ける(ちょっと飽きるけど)。ナスやピーマンは気温が下がる10月までとれる。サツマイモは20〜30株。貯蔵性が高く、秋から翌年初夏くらいまで食卓を支えてくれる。

ジャガイモはたっぷり1年分つくる。植えつけから3カ月で収穫できるのもいいところ
【夏】7月〜8月
7月の頭にダイズとゴマの種をまく。収穫は11月だ。常温保存で一年中利用できる。8月にはキャベツやブロッコリー、ハクサイなど秋どりの野菜の苗づくりを始め、ニンジンやダイコンは畑に直接種をまく。ホウレンソウなどの葉物類は9月上旬から複数回、時期をずらしながら種をまく。9月上旬までに栽培をスタートすれば、10月中旬には立派に育つ。気温が下がると生育が緩やかになるので、冬の間は畑に置いておき、必要なときにとればいい。

ホウレンソウは9月から11月まで種をまく
【秋・冬】9月〜2月
10月以降の種まきは翌年への投資である。不織布やビニールトンネルで保温し、冬を耐えさせる。キャベツも11月に植えつければ、野菜が少なくなる春先に貴重な存在になる。タマネギは9月に種をまき、植えつけは11月、収穫は翌年5〜6月だ。
12月は種まき・植えつけはお休み。1月下旬から保温した畝にコマツナなどの葉物やダイコン、ニンジンの種をまく。2月になったら踏み込み温床(落ち葉や米ぬかの発酵熱を利用した簡易温床)を仕込み、春植えのキャベツやブロッコリー、トマトなどの夏野菜の育苗をスタートする。
こうしてわが家では、年間を通してほぼ途切れることなく野菜をつくり続けている。

晩秋に植えつけたキャベツの苗は不織布のトンネルで保温。春の端境期に収穫できる
どんな野菜をどれくらいつくるか
「消費量」「通年性」「貯蔵性」──この3つが高い野菜ほどたくさんつくる。なお、通年性とは年間を通して栽培できる性質を指す。
| 消費量が多い野菜 | タマネギ、キャベツ、ダイコン、ジャガイモ、ニンジン、トマト、ネギなど |
| 通年栽培できる野菜 | キャベツ、ダイコン、ブロッコリー、ネギ、コマツナ、チンゲンサイ、リーフレタス、ホウレンソウなど |
| 貯蔵性が高い野菜 | タマネギ、ニンニク、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、カボチャ、ネギ、ダイコン、ニンジン、ラッカセイなど |

ネギも使い勝手のいい野菜。タマネギがないときの代用にもなる
わが家の場合、最もたくさんつくるのはタマネギとネギとジャガイモだ。半年以上の貯蔵が可能で、多くの料理で欠かせない素材なので、いくらあっても無駄がない。キャベツやダイコンや葉物類は夏の終わりから翌年の春まで、ほぼ通年育てられるので、ちょこちょこ種をまいておくといつでも食卓に出せ、野菜が少なくなる時期にも重宝する。
ほかにトマトも大量につくる。夏の間はフレッシュで楽しめるのはもちろん、トマトソースにすれば長期保存も可能だからだ。トウモロコシやエダマメもたくさんつくりたい野菜だ。そのままおやつのように食べられるし、冷凍すれば保存もできる。

夏は毎日のように食卓にトマトが並ぶ。トマトソースも1年分仕込む
一方、キュウリやナスやピーマンは1株にたくさんの実がなるので、2〜3株あれば十分。それ以上は消費しきれない。毎日キュウリが10本はキツイでしょ。で、そんなときに限って、おすそ分けでキュウリをいただいたりするんだ。
大切なのは野菜づくりを楽しむこと
私が野菜づくりをしているのは、自給のためというのもあるけれど、種をまいて育っていく野菜を世話してやるのが楽しいからだ。趣味なんです。好きだからいろいろ考えちゃって、結果として自給につながっているってだけ。
自給できるほど畑が広くなければ、それなりでもいいじゃないか。自分でつくった野菜を食べられれば、それだけで私はうれしい。野菜づくりを楽しみましょう。自給は結果としてついてくる。


















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