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弱冠25歳で独立、果物知識で生計を立てる。果物業界が注目する「はたんきょー」とは何者なのか

少年B

ライター:

弱冠25歳で独立、果物知識で生計を立てる。果物業界が注目する「はたんきょー」とは何者なのか

果物に関する投稿が話題を呼び、SNSで注目されている若者がいます。彼の名は「はたんきょー」。一般のユーザーからはもちろん、農家や青果店、市場関係者からも注目されているというはたんきょーさんとは一体何者なのか。今回は、はたんきょーさんと付き合いの長いフリーライターの少年Bさんに、はたんきょーさんの過去やこれからについて、徹底的にインタビューしてもらいました!

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果物との関係は2歳から

──はたんきょーさんはいつから果物が好きなんですか?

もうずっとですね。子どものころ、ままごと用のフルーツ・野菜セットを渡されて。

──マジックテープでくっついているのを、おもちゃの包丁で切るやつ。

そうそう、そのおもちゃの果物にすごく興味を示してたらしくて。記憶はないですが、父親が「この子は果物が好きなのかもしれないから、本物を触らせた方がいい」と2歳の誕生日に本物の果物を買ってきてくれて、それからハマったそうです。
だから小さい頃から身近に果物があるし、現在も果物中心の生活をしてて。大学も農学部に入って、横浜の果物屋でバイトをしてましたね。そして、大学2年のときに食べ比べ会を開催することになりました。

4歳のころのはたんきょーさん。当時から果物が好きだった

──いわゆるガクチカが、果物の食べ比べ会なんですね。

そうですね、それが縁になって新卒で都内の老舗果専店に就職しました。果物の知識を買われて、新卒1年目からバイヤーをやることもできて。たぶんそのお店でも史上初だと思います。

そこで1年10ヶ月勤めて、退職して独立しました。

──はたんきょーさんは果物のどういうところが好きなんですか?

果物が好きって言うと、普通の人は「食べるのが好き」だ思うんですが、自分の場合は「飽きないから好き」って感じですね。

掘ったら掘っただけ新しい発見があるし、果物って日本だけじゃなくて世界各国にあるので。今も新しい品種がどんどん出てきてるし、逆に歴史的な品種や野生種もあるし。だから飽きないっていうか、知的好奇心を満たせるというか。

──なるほど。

例えばスイカを食べすぎて飽きてきたなと思ってもすぐブドウが出てくるし、ブドウに飽きても梨が出てくる。1年通して次の果物がどんどん出てくるから飽きないってところがありますね。

年によって気候が違えば味も違うし、新しい品種が出てくればなくなる品種もある。そういうところも飽きないですよね。

──自分みたいにブドウ専門の人とは好きなポイントがまた違いますね。

あと、商品として見たときにどういう立ち位置になるか、どういうお店にハマるかを考えるのも楽しいですね。経営シミュレーションゲームみたいな感じで。

──と言いますと?

その品種を見て、「どういう特性があるか」「味や外観を含めて、どういう評価を受けそうか」っていうのを考えて、スーパー向きなのか、百貨店に並ぶのかを考えるんです。

今は青果店だけでなく、飲食店などの色んなお店にもネットワークがあるから、商品として合いそうなところに紹介して売ってもらったり、使ってもらったり、っていうのを実際にできるのが楽しいです。金銭的なメリットは別にないけど、好奇心のためにやってるところがあるかな。

──食べるのが好きとか、果物のグッズを身にまとって……みたいな気持ちはないですか?

そういう人を見ると、同じ果物好きでもベクトルが違うんだなーって思いますね。一般的には果物は食べるものだと思うけど、自分は食べることがそんなに好きじゃないから。

──果物は好きなのに、食べるのは別に好きじゃないっていう。

そういう矛盾がありますね。それに悩んだこともあるし、義務感で食べてるときもある。個人的にはいろんな果物やその品種をちょっとずつ食べられればいいです。

好きなものは決まってるから、好きで食べる用のものと、味を見る用のものとで分けてます。好みもけっこう細かくて、「この品種は好きだけど、今年の出来だとちょっと柔らかいから嫌い」とかもあって。仕事で市場に行くようになって、味見をさせてもらうことも多いので、プライベートでは果物を食べる量が減ったかな。

──野菜の方がたくさん食べているとか。

食べるのは野菜のほうが好きですね。野菜は何も考えなくても食べられるけど、果物の場合は食べると味や食感などについて考えてしまうので、食べるだけで疲れてしまって。考えちゃうから食べたくないということもあります。

だから食べ比べ会でたくさんの品種をちょっとずつ食べるっていうのは、お客さんに喜んでもらえるっていうのもあるけど、自分にもメリットがあると思いますね。

「食べ比べ会」開催のきっかけ

──はたんきょーさんが学生時代から開催している「食べ比べ会」について聞かせてください。

一番最初はトロピカルフルーツの食べ比べ会でした。僕、トロピカルフルーツが大嫌いで。でも食べてみたいっていう興味はあって。それで、人を集めればいろんな種類のものを少しずつ食べられるなと思いついたのが始まりです。

──食べ比べ会を始めたきっかけは?

よその社会人サークルで、生のカカオからチョコレートを作る会っていうのがあって。生のカカオに興味があったから参加したんですが、そこで「社会人ってこんなに自由なんだ、こんなことをやってもいいんだ」って思って。

それで「果物の食べ比べ会なら自分にもできるかも」と思って、そのサークルの方々に相談をして、会場の手配方法などを教えてもらって、そのコミュニティの周りで始めたのがきっかけですね。正直、こんなに続くとは思ってなかったです。

──当初、食べ比べ会の狙いはどこにあったんですか?

最初は「自分も食べたいし、みんなも食べたいよね?」みたいな感じのイベントでしたね。トロピカルフルーツ会のあと、秋にいろんな果物を買いまくってたら食べきれなくなっちゃって、リンゴが冷蔵庫に40種類ぐらいあって。

それで、「あ、また食べる会やればいいじゃん」と。告知したら30人ぐらい来てくれたので、買い足して結局105品種ぐらい出したと思います。

──イベントというより、余ったりんごを消費しようという会。

ほんとそう。少年Bさんと出会ったのもそのりんご会だったよね。

──懐かしいですね。今はどのようなモチベーションで食べ比べ会を?

今年の果物の出来はどうかとか、ワインのテイスティングみたいな意味で少量ずつ色々食べられるのがいいところだと思います。自分以外の人の感想も聞ける貴重な機会です。

──時には自分がまだ食べたことない品種を入れたり。

食べ比べ会のお客さんは果物が好きっていうのもあるけど、知的好奇心が旺盛な方が多いです。新品種や、まだ食べたことのないものを食べたいというのはよく聞きます。常連さんも多いので、何かしら変化をつけないと飽きられるんじゃないかっていう怖さもありますね。

単純に果物の盛り合わせを食べるのとは違って、果物の味自体はもちろん、自分たちの果物へのこだわりを楽しみに来てくださってるって感じがしますね。逆に、他のお店と一緒にやるコラボイベントだと、自分が本当においしいと思ったものを濃縮して持っていくようなイメージで集めることが多いかな。

──食べ比べ会をやっていく上で困ったことなどは。

思い出深かったのが、翌年やった2回目のトロピカル会ですね。食べ比べ会の案内をLINEグループでしていたのですが、開催数日前に1人からキャンセルしたいと申し出がありました。OKしたら、そのあと一気に10人ぐらいキャンセルが続いてしまって。

当時大学生だったので、キャンセルされた方々の参加費がバイトの月収ぐらいの金額になるくらいで……。すでに果物の発注をした後だったのでさすがに困りました。そのことをTwitter(現X)に投稿したら拡散されて。それを見て参加してくれた方々が常連さんになってくれたので、記憶に残ってますね。

──懐かしいですね。昼・夜の2部制にして、各回40人ぐらい来た記憶があります。

80人ぐらい参加してくださって。今でもこの会が一番参加者が多かったんじゃないかなと思います。結果的にキャンセルした人数よりはるかに多くの人が来てくれて、本当に助かりました。あのときの参加者の方々には今でも感謝してます。

「花マル農園」とはどんな活動なのか

──はたんきょーさんは「花マル農園」というサークルに所属していますが、あれはいったい?

もともとは少年Bさんがコミケに参加するために作ったサークルですね。「一緒に果物の同人誌を作って、100回目のコミケに出よう」と誘われて。それで食べ比べ会に来てくれた芋好きな人たちも誘って、果物と芋のマニア集団として同人活動を始めて。

──当初は同人誌の頒布がメインの活動でしたね。

そう、コミケやおもしろ同人誌バザール、文学フリマなど、いろんなイベントで果物の本を頒布することができて。果物そのものの活動ではないけど、楽しいし刺激になりました。意外と果物関係の方がブースに遊びにきてくれたりしてうれしかったな。

当時使ってた通販サイトで同人誌がすごく売れたことをきっかけに、果物のカードを作るお仕事がきたり、マイナビ農業の記事の監修をしたりもしたけど、基本的には非営利の社会人サークルみたいな感じで活動してますね。

──食べ比べ会も当初ははたんきょーさん個人で行っていたものが、サークルとしての活動に。

食べ比べ会では他にも色々なトラブルがあって。周囲の期待値と自分のキャパシティが釣り合わなくなって、心が折れそうになったときに、Bさんが「個人でやりきれないならサークルとして一緒にやろうよ」と言ってくれて。そこからサークルでの活動になりましたね。

今でも、食べ比べ会の半数以上は自分が主催の会だけど、芋やブドウ、イチゴは他メンバーの主催になったことで自分もちょっと気が楽になりました。主催メンバーによってテイストも違うので、その差もお客さんに楽しんでもらえてるような気がします。

──チームでやることで責任の分散ができたと。

花マル農園メンバーの少年Bさんも匠さんも、最初は参加者としてお金を払いながら手伝ってもくれていて。今考えるとありえないんだけど、本当に助かりました。そこからメンバーも増えたし、常連さんからスタッフになってくれる人もいて、今の体制になりました。

──はたんきょーさんはフリーランスの果物屋として、新たに「花香果(かかか)フルーツ」を立ち上げましたが、食べ比べ会は今後どのように変わっていきますか?

食べ比べ会に関しては変わらないと思います。利益はそこまで考えずに、参加者においしいものやおもしろいものを食べてほしい。今まで来てくれた方々もいるし、独立したからって急にスタンスを変えるのもちょっとイヤだし。

花香果フルーツには花マル農園のメンバーも参加してもらってますが、花マル農園のメンバーの中には副業禁止の人もいるから、花マル農園はあくまでも趣味の団体として続けていこうかなと。

フリーランスの果物屋としての、これから

──はたんきょーさんはなぜ独立という形を取ったんですか?

前職の老舗果専店に入社したとき、僕は「ここが日本で一番果物について詳しいお店だ!」と思って入ったんです。結果的に辞めてしまったんですけど、今でもあの店以上にいい果物屋はないと思っています。

それに、人に使われるとどうしても自分の思いややりたいこととは違ったこともやらなきゃいけない。自分であまりいいと思わない商材でも扱わなきゃいけないこともあるかもしれない。「こんなの売るの?」って思いながら仕事をしたくないな……って思ってしまって。

花香果フルーツのメンバー。右は筆者の少年B、左はイチゴ担当の匠

──ならば、自分で独立して果物屋をやろうと。今後の店舗展開は考えていますか?

今のところは予定してないですね。お店を構えると固定費もかかるし、お店を開けなきゃいけないから、自由もきかない。産地に行ったり、海外の果物を見に行ったりする時間が減ってしまうので、それはイヤかなって。

現状ではファーマーズマーケットへの出店と、準備中ですがフルーツギフトなどのインターネット通販、それから果物と市場をつなぐ卸の3業態を考えています。

──固定費は極力減らして、果物に注ぐという。

今は大田市場の仲卸さんに場所を借りてるけど、さすがにずっとこのままではいられないので、配送作業のための場所を借りようと思って探してます。今後発生する固定費はそれぐらいですね。

お店を作るのにお金を使うんだったら、そのぶんいい果物を仕入れるために使いたいです。ある程度自由に動きつつ、「花香果フルーツなら間違いない」って思ってもらえるようになりたいですね。

──今後の果物業界において、花香果フルーツはどのような立ち位置を狙っていますか?

お歳暮という文化もだいぶ減っていって、果物業界はかなり縮小していくと思います。若い人も果物なんてほとんど食べないじゃないですか。でも、5000円の果物は買わなくても、5000円のパフェは売れるんですよね。

果物にこだわったスイーツには需要があるし、そういうお店はいい果物を欲しがってくれるんです。市場のことも産地のこともある程度はわかるので、そういった卸業務が事業の中心になってくるのかな、とは思ってます。

──なるほど。

とはいえ、自分が選んだ果物をお客さんに直接販売するのはやりがいもありますし、そういう意味で通販やファーマーズマーケットへの出店は続けていきたいと思います。

花香果フルーツのターゲットは、果物やおいしいものが好きな人です。そういう人に、僕たちがこだわった果物を食べてもらえるように活動していく予定です。

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