切る枝と残す枝の判断の難しさ
まずはじめに、切る枝と残す枝の判断に関する断りを入れておきたい。品目や品種、樹齢、樹勢、栽培地、仕立て方、剪定時期、木の状況、そして栽培者が目指す樹形によって異なるため、同じ枝でも、判断が変わることがある。
例えば、勢いよく上へ伸びる徒長枝は、不要枝の代表として紹介されることが多い。しかし、樹勢が弱く枯れそうな木の場合、徒長枝が樹勢を回復させるための重要な枝になる。
また、前回の記事では、切り上げ剪定を紹介したが、上向きの枝を切るのか残すのかも、生産者によって異なるのが現状である。
さらに、沖縄のように日射が強い地域では、樹冠内部の枝葉を一度に除きすぎると、それまで陰になっていた幹や主枝が急に強光にさらされ、日焼けを起こすことがあるため、一部内向きの枝を残す場合がある。
最終的な枝の配置には栽培者の経験や感性も表れる。果実を多くならせたいのか、作業しやすい高さに抑えたいのか、庭木として自然な姿を楽しみたいのかによって、理想の形はさまざまだ。したがって、本記事で紹介する10種類は、残す明確な目的がなければ、優先的に剪定を検討したい枝と捉えてほしい。初心者が木の前で立ち往生しないための、最初の判断材料である。
初心者でも見分けやすい!「切るべき枝」10選
1.枯れ枝

ジャボチカバの枯れ枝
まず、絶対に取り除いてほしい枝がある。それが枯れ枝だ。一度枯れてしまった枝は、もちろん葉をつけず、光合成にも果実生産にも寄与しない。そのままにすると、作業中に目に入ったり、体へ当たったりする危険もある。
また、枯れ枝を放置することによって、枯れ枝が炭疽病菌やカンキツ黒点病菌などの糸状菌が生き残る場所となり、次作の伝染源になることがある。生産樹において枯れ枝を残すメリットはないため、見つけ次第取り除くようにしたい。
ただし、落葉果樹の休眠期は、生きた枝も葉がなく枯れて見える。判断に迷うときは、芽がふくらんでいるか、枝に弾力があるかを確認する。迷う場合には、細い枝の表皮をほんの少しだけこすり、内側に緑色の生きた組織が見えるかを確かめたら良い。

表皮を薄く削って確認する方法
枝先だけが枯れている場合は、生きた芽や健全な分岐まで戻って切り、枝全体が枯れている場合は、枝の付け根にあるブランチカラーを傷つけない位置で切り戻す。切り方は、以前記事で紹介した「正しい剪定の方法」を参考にしていただきたい。
また、以下のように、指でも簡単に枝を取り除ける場合はそれでも良い。

指でも簡単に外せるなら取り除く
2.ひこばえ

幹から力強く出た2本のひこばえ
ひこばえとは、株元や地中の根から勢いよく発生する枝である。特に接ぎ木苗では、接ぎ木部より下から出る芽を見逃さないようにしたい。
接ぎ木された穂木よりも台木の方が、樹勢が強かったりすると、台木側から勢いよく枝が伸びることがある。これをそのままにすると、台木側の枝が優勢になり、育てたい品種の生育を妨げることがある。
ひこばえは、地上部だけを短く切ると再び発生しやすいため、発生源を確認し、できるだけ付け根から除く。ひこばえは、なるべく早く取り除くことで、傷も小さくて済むし、穂木の成長も早くなる。

付け根の方から切る
3.下垂枝
下垂枝とは、枝先が下を向き、垂れ下がるように伸びた枝である。特に、地面近くまで垂れる枝は、草刈りや施肥、収穫などの作業も妨げるため、積極的に剪定する。また、樹冠内部や骨格枝の下側に入り込んだ下垂枝は日光を受けにくく、次第に弱って枯れ枝になりやすいため、筆者は早めに剪定してしまう。
地面近くまで下垂する枝を取り除くことによって、風通しが良くなって、病害虫が発生しにくくなる。健康的な木を作るためには、まず初めに剪定する候補になりやすい枝である。

地面につくような枝は切ってしまおう(アテモヤ)

切ったあとの様子(アテモヤ)
4.内向枝
内向枝とは、樹冠の外側ではなく、幹や木の中心へ向かって伸びる枝である。伸びた先に幹や別の枝があるため、樹冠内部が混み合うことになる。内向枝の除去は、目指す樹形があれば、なるべく早いうちに行わないといけない。特に、コンパクトな樹形に仕上げたい場合は、内向枝があると、樹冠内部が混み合って生産性の悪い木になってしまう。細いうちに取り除けば傷口も小さく、暴れにくい。
一方で、すでに内向枝が太くなってしまい、内向枝の葉が、幹や主枝を強光から守っている場合がある。とくに強い日射を受ける地域では、樹冠内部を一度に空洞のようにしてしまうと日焼けの危険が高まる。切るか迷う枝は一時的に残し、樹冠外側の葉量が十分に確保されてから段階的に整理してもよい。

内向枝を切る前と切った後の様子(アテモヤ)
写真のアテモヤは、内向枝2本を切った様子である。まだまだ枝が混み合ってるので、やらなければいけない剪定はたくさんあるが、内向きに伸びる枝を切るだけでかなりスッキリとした印象を受ける。
5.交差枝
交差枝とは、ほかの枝と交差するように伸び、同じ空間を取り合っている枝である。風で揺れるたびに枝同士が擦れると、樹皮が傷つき、傷口が広がることがある。そうなると、どちらかが枯れ枝になったり、病害虫の住処になってしまう。まだ接触していなくても、両方の枝が太くなったときにぶつかることが予想できるなら、細いうちにどちらかを整理した方がよい。

矢印の位置で枝が交差している。もともと内向きに伸びた枝を間引く

ぶつかっている枝はなるべく若いうちにどちらかを間引く
6.三つ又枝・四つ又枝
本記事では、一つの枝先やごく近い位置から、同じくらいの勢いを持つ枝が3本、4本と分かれて伸びた状態を「三つ又枝」「四つ又枝」と呼ぶ。剪定後の切り口付近から複数の新梢が一斉に伸びたときにも生じやすい。若いうちはそこまで気にならないこともあるが、そのままにして枝が太くなると、急に混み合ってくる。また、それぞれが太くなれば、日当たりを奪い合うだけでなく、果実生産に向かない枝になってしまう。
枝がまだ若いうちに、将来伸ばしたい方向にある1本、または2本を選び、残りを間引く。先端を途中で一律に短く切ると、再び複数の芽が動いて枝数が増えることがあるため、不要な枝は基本的に分岐部から切り戻し剪定を行う。
三つ又枝の場合、中央の枝を切るのは難しいので、どちらか端の枝でも良い。
以下の例は、リュウガンの木であるが、右側の枝を残して、残りは間引き剪定をした。

左側と中央を間引き剪定した
7.徒長枝
徒長枝とは、幹や枝の上面などから、ほかの枝より著しく強く、長く伸びる枝である。直立し、節間が長く、葉が大きいことが多い。栄養成長が強く、果実生産に向かないことが多いので、付け根から間引くのが基本である。また細いうちに剪定をすれば、大きな剪定傷を作らずに済む。
徒長枝は成長速度が早く、ハウスで栽培している場合には、あっという間にビニールに突き刺さるため注意する。特に、筆者らの栽培するスターフルーツは徒長枝が発生しやすく、何度もビニールを破った経験がある。修繕代が高くつくため、何度も切り倒そうかと考えたが、徒長枝を放置した自分が悪い。
以下はスターフルーツの徒長枝であるが、こちらは6本も出現していた。こちらも枝元からバッサリ切ると、光も入ってとても良い状態になった。言うまでもなく、もっと早めに切るべきである。

スターフルーツの徒長枝の剪定
8.平行枝

アセロラの並行枝、手で握っている部分を切った
平行枝とは、近い位置から同じ方向へ伸び、重なるように並んでいる枝である。近距離で同じ方向へ伸びる枝を両方残すと、葉が重なって下側の枝が日陰になり、枝同士が同じ空間を取り合う。将来どちらも太くなれば、作業の邪魔になったり、お互いに果実生産の邪魔をしてしまう。
基本的には、周囲の枝との間隔や将来の結果位置、全体の様子を確認して、どちらか一方の良い枝を残す。不要な枝は、付け根から間引き剪定をして取り除く。
ただし、同じ方向へ伸びていても、発生位置が十分に離れ、それぞれに採光空間が確保されていれば問題はない。棚仕立てでは、側枝を一定の間隔で平行に配置することもある。
9.車枝

ビワの車枝(すでに不要な枝は切られている状態)
車枝とは、幹や枝のほぼ同じ位置から、車輪のスポークのように3本以上の枝が放射状に出た状態である。木を上から見ると判別しやすい。一か所に枝が集中するため、枝葉が混み合い、風通しなどが悪くなる原因になる。特に、枝同士の間隔が狭く、角度の小さい分岐した枝は、どちらかを間引く方が良い。枝が細いうちに、樹冠の空いている方向へ伸びる枝を1~3本選び、残りを付け根から整理する。
10.裂けた枝
強風、果実の重み、積雪などによって付け根や途中が裂けた枝も、優先的に剪定する。裂け目から雨水が入り、裂けた傷からさらに腐朽が進むこともあるため、なるべく早めに除去するようにする。特に、沖縄県などの台風が常に来るような場所では、枝が裂けることが多々ある。
台風後、一見、健康的に見える状態でも、枝の付け根に亀裂が入っていたり、樹皮の一部だけでつながっていたりすることがある。細い枝であれば、裂けた傷が残らないように枝全体を切り落とす。

台風のあと折れて裂けた枝も分枝部から切る
太い枝の場合は、裂けた部分より内側にある健全な分岐まで戻って切ることを基本とする。ただし、それによって木の骨格となる枝の大半を失う場合や、主幹・太い主枝の分岐部が裂けた場合は、支柱やワイヤーなどによる補強によって残せることもある。ただし、裂けた枝には大きな荷重がかかっていることがあり、切断中に急に落下する危険もあるため、安易に傷をノコギリで削らず、枝先から徐々に処理していく。
剪定はとても時間がかかるものだ!
本来、剪定作業は意外と時間がかかる作業である。日々剪定をしている筆者でもある程度の大きさの木を切る場合は、2~30分かかることが多い。枝は一度切ってしまうと、また新しい枝が生えてくるのに時間がかかるため、慎重かつ、考えながら切っている。
実際の作業では、2~3本ほど枝の剪定をすると、木から少し離れ、目指す樹形と残したい骨格枝を確認する。このように、その都度木全体を確認していかないと、取り返しのつかないことがあるため、慎重に切るべきだ。枝のすぐ近くにいると一本一本しか見えないが、離れると、樹冠のどこに空間ができたか、残した枝がどの方向へ伸びるかがわかる。切るか迷う枝にはテープなどで印をつけ、すぐに切らず、別の角度から見直してもよい。剪定前後を同じ位置から撮影し、翌年の枝の反応まで記録すると、自分の剪定を振り返る優れた教材になるので、写真を撮っておくのもおすすめである。
不要な枝が多くても、太い枝を同じ年に一度に切りすぎないことも重要である。葉は光合成を行い、木を支える養分を作る器官である。大量の枝葉を急に失うと、木は残された芽を強く伸ばし、多数の徒長枝を発生させることがある。大きく乱れた成木は、完成を急がず、数年かけて少しずつ作り直していく方が、実は近道であることもある。
まとめ
剪定は「切る技術」であると同時に、「残す枝を選ぶ技術」である。しかも、どの枝を残すかに唯一の正解はない。樹種や品種、気候、樹勢、栽培目的が変われば、理想の樹形も変わる。だからこそ、初心者は最初から木全体を完璧に仕上げようとせず、切る理由が明確な枝から始めるとよい。今回紹介した10種類の枝を整理するだけでも、混み合って見えた樹冠の骨格が現れ、採光や風通し、作業性を改善するための大きな一歩になるだろう。
剪定とは単に木を小さくする作業ではなく、数年後の木の姿を作る大切な作業なのだと気づかされる。ぜひ、将来的な木々を想像しながら、剪定を楽しんでいただけたら幸いだ。

















