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春先の育苗の味方 電熱温床の設置の仕方や実際の費用

連載企画:凄い!農家のアイデア集

春先の育苗の味方 電熱温床の設置の仕方や実際の費用

2月に入ると、いよいよ果菜類の育苗シーズン。この時期にナスやピーマンなどの育苗をするには温床が必要ですが、今回はさまざまな温床があるなかで、電気で一定の温度に保つことができる「電熱温床」の話。設置の仕方や費用、気になる電気代まで、兼業農家を営む筆者が設置した当初に困ったことについても紹介します。

温床は「自分でつくるホットカーペット」

温床とは?

高温を要求するオクラも、温床なら春先から育苗できる

温床というのは、なんらかの方法で地面を温め、寒い時期でも発芽・育苗をしやすくするものです。ほとんどは、ビニールハウスの中に、さらに小さなトンネルで囲って、二重に保温します。
ナスやピーマン、トマトなどの果菜類は発芽適温が20〜25度と高いため、5月初旬から中旬にかけて苗を植えるには、温床を使って、早めに育苗を始めなくてはなりません。
わが地域では、2月中旬の外気温は氷点下8度になることもありますが、温床の中は20度程度と一定。どんな野菜も気苦労なしに育苗できます。

踏み込み温床と電熱温床の違い

その昔は、山から集めた落ち葉などを発酵させて、そこで発生した発酵熱を利用する「踏み込み温床」が主流でした。落ち葉を集める労力がかかりますが、たいしてお金もかからず、なおかつ、発酵し終えた落ち葉を自家製腐葉土として育苗培土などに利用できます。
一方で、うまく発酵させて、温度を一定に保つには経験とコツが必要です。私も踏み込み温床には何度かチャレンジしていますが、まだまだ勉強中です。
一方、電気の力を借りる電熱温床は、電気代はかかるものの、設置方法さえ間違わなければ、誰でも簡単に、温度を一定に保つことができる温床をつくることができます。
私のように、踏み込み温床に何度かチャレンジしてうまくいかなかったという人は、一度、電熱温床をつくってみてもいいかもしれません。

電熱温床の仕組み

私が電熱温床に使うサーモスタット

電熱温床の仕組みは簡単です。
土中に張り巡らせた電熱線に通電すると、電熱線から発生した熱が地面を伝わり、床を温めてくれます。「布が土に置き換わったホットカーペット」とすると、想像がつきやすいでしょうか。
また、農電サーモといったサーモスタットと組み合わせると、ねらった温度(気温、地温)まで上がると電熱線のスイッチがオフになり、それより下がるとオンになる、というように自動で温床内の温度を一定に保ってくれます。熱帯魚の水槽を一定の温度に保つような感じです。

電熱温床の実際

私が使っているのは、育苗ハウス(16坪)に設置した、約2坪の小さな電熱温床(1.5×4.5メートル)です。育苗用のセルトレイをぎっちり詰めると、37枚入るようにしています。128穴のトレイだと、最高で約4700本の苗をつくることができるというわけです。

必要な資材と価格

2坪の温床の場合に必要な資材と、購入価格は以下のとおりです。

絶対に必要なのは、農電サーモと農電ケーブルで、温床の面積はもちろん、電圧や電源の種類で価格が変わってきます。また、メーカーのサイトを見ると、適切な組み合わせも書いてあるので、自分の農業や予算にあったものを選んでください。
その他は、既に持っているものをできるだけ活用すると安く済みます。
ちなみにこの場合の電気代は、1時間稼働するにつきおおむねコタツと同程度、約20円の電気代がかかる計算です。10時間稼動するとみて、1日当たり200円ほどでしょうか。

設置の仕方

温床をつくるのはそれほど難しくはなく、2坪くらいなら半日もあれば一人で設置できます。

温床部分を20センチほど掘り、平らにする

水糸(みずいと:水平を示すために張る糸)などを使い、地面を平らにする

まずは、電熱線を埋め込むために、温床を設置しようと思う部分を20センチほど掘り、平らにします。地面が凸凹だと、電熱線の効果にムラができるので、深さが一定になるようにします。
掘った時に出る土は、後々埋め戻すので、邪魔にならないところに山にしておきます。

床面と壁面に断熱パネルを設置する

床面と壁面を断熱パネルで囲い、床のパネルが見えなくなるくらいに土をかける

まずは断熱パネルを床面が埋まるように何枚か敷きます。ピッタリと敷き詰めるのではなく、水が抜けるように、各パネルに1センチほどの隙間(すきま)を持たせました。壁面も断熱パネルで囲い、杭などで固定します。床に敷く断熱材は、市販の断熱パネルじゃなくても、もみ殻や稲わらなど、家にあるものを使う人もいるようです。

電熱線を張る

緑色のひもが農電ケーブル。長さに応じて、間隔を決める。基本は、冷気の当たりやすい壁面付近ほど狭くなるように設置する

敷いた断熱パネルに数センチほど、土を薄く敷きます。これは仮に漏電した際に断熱パネルが燃えてしまうのが心配で、やりました。
それから、向かい合う2辺の壁面沿いに一定の間隔で竹でつくった杭を打ち込み、そこに電熱線を引っ掛けながら張っていきます。間隔は、つくりたい温床の広さや形によりますが、冷えやすい周辺部を密に張るのがコツです。

単相の農電ケーブルを設置する場合の間隔の例。数字の単位はセンチ

土を埋め戻して、床を平らにする

電熱線が張れたら、土で埋め戻して、再び床を平らにします。ここでキチンと平らにできていないと、苗の生育にムラができるので注意が必要です。
また、温床の中は、苗だけではなく、雑草もすくすくと生育します。びっちり並べたセルトレイの隙間から生える草をむしるのは大変なので、手間を減らすために、防草シートは敷いておいたほうがいいと思います。

育苗を始める前にやること

育苗を始める1日前に、育苗床にたっぷりと水をまいて、土を湿らせておいたうえで、電熱線に通電をして、目的の温度になるように床を温めておきます。農電サーモが機能するように、温度感知部を温床の中に挿して、最低、ひと晩おきます。
翌日、播種(はしゅ)したセルトレイを温床の中に並べたら、トンネルの骨組みをつくり、トンネル用フィルムの農ポリと、その上に保温シートを被せて、完成。保温シートとして私が使用しているホットンカバーは、保温はもちろん、春先の日差しで温床内の温度が上がりすぎないように遮光する役割も果たします。

完成した温床。被覆資材は農ポリと、白いホットンカバー。苗の様子を見て、被覆資材をとったり開閉したりして温度と光量を調節する

温床の内部。ホットンカバーは光が透過するので、内部が真っ暗にはならない

直売所で苗を売って電気代を稼ごう

以上のように、電熱温床の設置や使い方はそれほど難しくありません。温床があれば、できる作型の幅がグッと広がります。
かかってしまう電気代は、せっかくの温床を無駄にしないように、常に温床の中をセルトレイ でいっぱいにして、余剰苗を直売所で販売して賄っています。販売するとなると、育苗の緊張感も高まり、レベルアップにつながります。

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