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人が集い、行き交う「縁側カフェ」へ。安定経営を目指した、6次産業化への挑戦

人が集い、行き交う「縁側カフェ」へ。安定経営を目指した、6次産業化への挑戦

農業経営を軌道に乗せるためには、規模拡大や複合栽培、6次産業化等さまざまな方法があります。福島県西会津町に移住就農した元教師夫人は、6次産業化によって農業経営の安定化を図った一人。その軌跡をたどると、農業で生きていくために必要な心構えと、消費者から愛されるものづくりの本質が見えてきました。

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心機一転、首都圏から移住。元教師夫妻が農業を選んだ理由

福島県麻耶郡西会津町は、会津地方西部の県境に位置し、新潟県阿賀町に隣接する人口約6千人の小さな町です。古くから会津の霊地として親しまれ、飯豊山に抱かれた大自然ときれいな水、豊かな大地で育まれた農作物は「西会津ミネラル野菜」としてブランド化もされています。

そんな西会津町に埼玉県から移住した佐藤昭子さんの前職は中学の美術教師。同じく教師だったご主人のふるさとでもあるこの地で、約20年前から農業を営んでいます。「初めて主人の実家を訪れたとき、視界に入る隣家が一軒もない自然の豊かさに感動し、いつかここ住みたいと心から思いました」。

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移住就農の経緯を話す佐藤さん

佐藤さん夫妻は2002年、双子の娘さんたちが福島県内の大学に進学をしたことを機に移住就農を決意。「水稲農家だった義父母が高齢になったことも移住の後押しになりました。とはいえ、当時は今のように就農支援制度もなく、退職金を全てつぎ込んでの営農スタートでした」。

佐藤さん夫妻が始めたのは菌床シイタケと菌床キクラゲ 。当時、国産の菌床キクラゲ は珍しく、同町でも初めての試みでした。

農業経営成功の秘訣は、農産物の販売と6次化の「2本柱」

持ち前の明るさで「なんとかなる」と始めた農業でしたが、いざやってみると、農産物の生産と販売だけでは赤字続き。生計を立てることの難しさに直面したといいます。
状況を打破するために講じた手段が「6次産業化」でした。無添加のシイタケ健康茶をはじめとした加工品は評判を呼び、売上も上々。こうした経験から佐藤さんは「農業経営は2本、3本の柱が必要」と話します。

「農産物の生産、販売だけで食べていくには、規模拡大や設備投資など初期費用がかかり、回収までに時間がかかります。天候にも左右されるため収入が安定しない側面もあり、別の収入源を確保する必要があることを痛感しました。農業は経営と同義。生産者も、経営者としての意識が大切だと思います」。

「人と同じことはしない」がモットーの佐藤さんは体に良いものにこだわり、会津地方の素材を生かした無添加の「會’sフード」開発に着手。菌床キノコ栽培も軌道に乗り、理想の営農スタイルを確立しました。

ところが、2011年3月11日に東日本大震災が発生。原発事故により、佐藤さんの菌床キノコは風評被害にさらされます。断腸の思いで栽培を自粛した夫妻は、新たな6次産業に着手。それが「ふくしま美味しい大賞2016」飲料部門で大賞を受賞した「メープルサイダー」です。

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看板商品の「メープルサイダー」

根底にあるのは「愛情」。家族に喜ばれるものをつくりたい

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リスタートを期してオープンした「縁側カフェ」

震災後、佐藤さん夫妻は自宅を改装し「縁側カフェ」をオープンします。提供するメニューは義父母が育てた米を加工した玄米粉や米粉を使ったパンケーキやピザ。せっかくなら、パンケーキにかけるメープルシロップも自分たちの手で作りたいと考え、国産メープルシロップの製造技術を学びます。

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カフェでは、米粉を使ったピザやパンケーキが提供されています

「製造技術を学ぶ中で、うちの山に自生するイタヤカエデでもシロップの原材料となる樹液が採取できることがわかりました。樹液はさらささらとした透明色で、煮詰めることで私たちがよく知る茶色のシロップになります。せっかくなら透明な樹液をそのまま使いたいと思いついたのがメープルサイダーです」。

お孫さんの大好物でもあるサイダーをもっと身体に良いものにしたい。そんな愛情から思いついたメープルサイダー。6次化に挑むにあたり、最初に手掛けたシイタケ健康茶も、もともとは自身の母親がシイタケの戻し汁を健康のために飲んでいたことがきっかけでした。

「家族に喜ばれるものをつくりたい。もっと多くの人に役に立つ商品を作りたい。私の根底にはいつも家族への愛情があります。利益を追求することはもちろん大切ですが、ものづくりに一番必要なのは『愛情』だと思います」。

苦楽を共にしてきたご主人は2年前に他界。現在は娘の晋子(くにこ)さんが右腕となり、カフェ経営や商品開発に尽力。「ゆくゆくはゲストハウスをオープンさせたい」と話す2人の明るい笑顔からは、西会津町の暮らしを心から楽しんでいる様子がうかがえます。

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展望を語る晋子さん(右)

「明治時代の女性の仕事は『(子供を)産み・育て・見守る』の3つと、高齢のご婦人に教わったことがありますが、これは今の農業にもあてはまると思います。6次産業は農産物を育て(加工)、見守る(販売)こと。手をかけて育てた農作物がどんなふうに育っていくのか、とても楽しみなんです」(佐藤さん)。

先祖が守ってきた田んぼは現在、有機農法での水稲栽培を開始するため休耕中。2022年を目処に栽培をスタートする予定とのことです。

人が集い、行き交う「縁側カフェ」。その小さな店のチャレンジはやがて枝葉を広げ、大樹となって人々を温かく迎え入れる場所となることでしょう。

取材協力
キノコハウス 縁側カフェ
福島県耶麻郡西会津町奥川大字元島字上家ノ前2216
TEL&FAX: 0241-49-2614

http://kinokohouse.jp/

福島県就農支援情報サイト「ふくのう」もご覧ください

福島県就農支援情報サイト「ふくのう」

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