来年に向け、畑の排水対策を考える
筆者が住む関西では、2021年は梅雨入りがとても早かったうえ、いつもは畑が乾いて仕方がない8月中旬にもまるで梅雨かのような長雨が続きました。
筆者の地域には重粘土の圃場(ほじょう)が多いうえ、そのほとんどが水田転換畑で、排水対策には苦労しています。
春にはこれまで出たことがなかったタマネギのべと病が頻発し、夏には排水性の悪い畑で3日程度も冠水。あらためて畑の排水性の大切さを痛感した年になりました。
来年に向けて、どのように対策をしようか。まずはスコップで穴を掘ってみました。
スコップで掘って、ウネの断面を見た
比較的排水のよい粘土畑
上の写真は比較的排水性のよい畑で栽培中のオクラのウネの断面で、マルチをめくり上げてスコップで掘ってみました。
オクラの白い根は深さ18センチまでに密集しており、そこから23センチまでは密度は薄いものの、まだいくらかはっています。しかし、それより深いところには雑草の根もほとんどありません。
断面を指の腹でギュッと押してみると弾力があり、軟らかい地上部ほど根が旺盛に張っていますが、23センチより深い、ほとんど根のないところはガチガチに硬い耕盤層になっていました。耕盤層とは、主に農機の踏圧などで土が締まった層のこと。この硬い層に水が滞留する、ということがとてもよくわかります。
耕しすぎてカチカチになった粘土畑
上の写真は、極端に水抜けが悪い畑の写真です。耕盤層の深さは先ほどの畑と同じくらいですが、こちらは表層までかなり硬く、雑草の根もほとんど生えていません。
じつはこの畑、この春に排水性を改善しようと、管理機でかなり細かく砕土したところなのです。ふわふわになった表層が大雨で叩かれるうちに、砕土した土の隙間(すきま)に微粒の粘土がぎっしりと詰まり、まるで耕盤層のように硬くなってしまっていました。
こういう畑の場合は、無理に細かく耕すのは逆効果でした。もみ殻などの有機物で隙間をつくったほうがよかったのかもしれません。
腐葉土いっぱいの栗林
一方、一度も耕していないにもかかわらず、上の畑よりもずっと排水性がよいのが栗林です。大雨直後でもくぼみに水がたまらないくらいの畑です。
土の色からもわかるように、こちらは腐葉土が長年積み重なってできた黒土。どこまでも掘れるくらいほくほくの土で、深いところまで雑草の根が生えています。また、掘り上げた土からは大量の虫が出てきます。
粘土質をここまで改善するのは難しいですが、何らかの方法で土と土のあいだに隙間をつくると、植物の根が入り、そこで虫や微生物が生活することで、いっそう排水性がよくなりそうです。
隙間の量を知る「三相分布」を簡単に調べてみた
せっかくなので、土を掘ったついでに「三相分布」を調べてみました。
三相分布とは、土の中の土・水・空気の割合のことです。厳密に測るのは難しいですが、身近にあるもので簡単に測定することはできます。
三相分布を測る手順
用意する道具
- 直径5センチの缶を、高さ5センチに切ってつくった土採取器(容積100立方センチ)
- 平らな板
- 汚れてもよいフライパン
- 計量器
- アルミホイル
手順は以下のとおりです。
①測りたい部分に缶の口を当て、缶底に板を当てて全部埋まるまで押し込み、土を採取します。
②とった土は、すぐに重さを計測し、数値を控えておきます。
③土をフライパンなどで炒めて水分を飛ばし、乾いた土の重さを測ります。
三相分布の計算式(採取器が100立方センチの場合)
三相分布は以下の計算式で求められます。
①水分率(土に含まれていた水分の割合)
湿った土の重さ-乾いた土の重さ=水分率
②固相率(土の割合)
乾いた土の重さ÷2.7(土粒子の比重)=固相率
③空気率(土に含まれていた空気の割合)
100-①水分率-②固相率=空気率
黒ボク土以外の畑では、水持ちのよさを表す水分率と、水はけのよさを表す空気率がそれぞれ20%以上あれば作物の生育に適する土、とされています。
ちなみに、水はけが悪い私の畑では、水分率が36%と多く、空気率が16%と基準より少なかったです。水持ちは十分なので、水分を含みにくいもみ殻などの資材で土壌改良をする予定です。
スコップ1杯分の穴からわかることはたくさんあります。今年の天候に振り回された人は試してみてください。