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営農型太陽光発電で耕作放棄地を再生。建設会社が農業部署を立ち上げたワケ(2/2)

営農型太陽光発電で耕作放棄地を再生。建設会社が農業部署を立ち上げたワケ

JR君津駅から車を走らせること15分、病院や民家に囲まれた千葉県君津市の畑の一角に、一面の太陽光パネルが高々とそびえ立っている。その下では、20種類以上にも及ぶブルーベリーの苗木が顔をのぞかせる。いわゆるソーラーシェアリングを行うこの圃場(ほじょう)を運営するのは、地元の建設会社が2020年に立ち上げたばかりの新規事業部だ。これまで農業とは無縁だった同社が新規参入に踏み切った背景を聞いた。

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初収穫は今夏の予定で、本格的に収穫が見込める定植から5年目の2026年にはブルーベリーの出荷のみで800万円の売り上げを見込んでいる。

一方の発電については、売電期間が20年。その収益も年間で計約800万円を見込んでいる。ただし、同社は経済産業省の認可を早い段階から取得していたため、24円/kWhと高単価での売電が可能となっていることは補足しておきたい。

「千葉県は意外と災害が多い地域なので、有事の際は電力を供給するなど、地域の中で役に立てる場所にしていきたいですね」(松本さん)

アグリ事業部ではこのほか、木更津市内にある2カ所の耕作放棄地でも、同様の営農型太陽光発電を予定している。早ければ5月中にもブルーベリーの定植準備が始まる。

安心安全な作物を作りながら、地域へ還元できる取り組みに

千葉県内をはじめ、営農型太陽光発電を始める事業者は増えているものの、うまくいっていない事例も多く見受けられる。その理由について松本さんは「売電収入ありきで安易に始めてしまうことが原因ではないか」と分析する。

事実、同社が農地の一時転用申請に赴いた際、地元の農業委員会からは懐疑的な声も多くあったと、松本さんは振り返る。「売電収入が目的ではないのか、ちゃんと農業をやってくれるのかと、心配事が多かったのではと思います。私自身も農業に携わってきた身として、そこは理解できます」

それゆえ同社では、営農へ特に力を注いでいる。これから着工予定の木更津市の圃場では、発電量の低下や資材コスト増もいとわず、農作業に支障のない範囲でパネルの間隔を広くする(日照率を高める)などして、より作物の生育を促す設計としている。

「耕作放棄地の増加が叫ばれる今、誰かが何かやらない限り、状況は永遠にそのまま。ほかの誰かが解決策をもっているわけではないのです。だからこそ、創意工夫しながら、そうした場所を生かす手立てを考えるのが重要で、こうした取り組みに共感してくれる仲間も必要」と、松本さんは語気を強める。

ゆくゆくはこれらのブルーベリー園を観光農園化する構想もあるという。

「未利用資源から新たな価値を生み出す」ことをポリシーに、新たなビジネスモデルを生み出そうとしている同社の今後に注目したい。

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