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クラウドファンディングで新規就農資金500万円を調達! 成功のための地道な挑戦とは

クラウドファンディングで新規就農資金500万円を調達! 成功のための地道な挑戦とは

全国の農場を渡り歩くフリーランス農家のコバマツです。今回訪れたのは、沖縄県うるま市にあるトマタツファーム。ここに、沖縄県では珍しい養液栽培とICTを取り入れて新規就農した若き農業経営者がいます。なんと、新規就農資金をクラウドファンディングで調達したそう! 新規就農者に対する助成金がたくさんあるにもかかわらず、なぜクラウドファンディングで資金調達をしたのでしょうか? 補助金以外の方法で資金調達をするメリットについて聞きました。

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沖縄県で農業をしようと思ったワケ

一般的に新規就農は、自治体の補助金を活用したり、ある程度農業の経験を積んで、地域の人から応援を集めて認められたりしてからでないと実現することが難しいといわれます。
しかし、自分の理想とする農業の形を実現させるために、クラウドファンディングで新規就農のための資金調達をした農家がいると聞いてやってきました。一体どんなふうにクラウドファンディングを成功させたのか、いろいろ聞いてみたいと思います!

■新里龍武(しんざと・たつむ)さんプロフィール

プロフィール トマタツファーム株式会社代表。1992年、沖縄県石垣市生まれ。関西の大学を卒業後、スポーツ関連の企業に就職。退職後2019年から兵庫県にて1年半の就農研修を受け、2021年に沖縄県うるま市で養液栽培を活用して新規就農をする。就農資金をクラウドファンディングで500万円以上集めて、沖縄県では珍しく、トマトを養液栽培で周年栽培することに挑戦している。

コバマツ

新里さん、関西の大学に進学して、卒業後はスポーツ関係の企業で働いていたそうですね! なのにどうして沖縄で新規就農しようと思ったんですか?
僕自身は石垣市出身で、両親もそこで農業をしていたんです。関西の大学に進学して、就職してからも関西にいましたけど、いずれ沖縄に帰りたいなと思っていました。でも、小学校から大学までずっとバスケットボールに打ち込んできたので、仕事の選択肢が思い浮かばなくて……。「沖縄に帰って何をやろうか」と思った時に、両親が農業をしていたこともあって、「農業をしよう」と考えました。

新里さん

新里さんバスケ姿

沖縄インターハイ時は県の代表として活躍

コバマツ

スポーツ一筋だったんですね! 新里さんが就農したのは沖縄本島にあるうるま市ですよね? どうしてご両親がいる石垣市で就農しなかったんですか?
最初は石垣島の両親の農場の野菜を販売したり6次化したりして、農業と関わる仕事を生み出していこうと思っていたんですよね。でも、石垣島で両親がやっていた野菜栽培だと販路が限られてしまうなと思いました。だったら、石垣島よりもマーケットが広い沖縄本島で自分で新規就農した方が勝負できるんじゃないかと思って、沖縄本島で就農することを決めました。

新里さん

コバマツ

石垣島でもマンゴーのような島外出荷できる高単価な作物だと勝負できそうですけど、野菜だと島内出荷メインで販路が限られちゃいそうですもんね。売り先を考えて沖縄本島で新規就農したんですね!

研修との運命的な出会いで農業にのめり込む

かふートマト

トマタツファームでは大玉、中玉、小玉トマトを養液栽培で周年栽培している

コバマツ

数ある野菜の中で、どうしてトマト、しかも養液栽培で新規就農しようと思ったんですか?
直販も視野に入れていたので、野菜の中でもトップクラスの消費額で、味も甘さやおいしさを表現しやすく、販売面でも差別化しやすいのではと思い、トマトを選びました。養液栽培を選んだ理由は、研修先が取り入れていて「こんな効率的な農業があるんだ!」と衝撃を受けたからです。

新里さん

コバマツ

確かに、トマトは野菜の中でも味が分かりやすいですよね! 沖縄県で養液栽培って、あまり聞いたことがないですね! 研修先はどうやって見つけたんですか?
就農しようと決めたときはまだ関西にいたので、関西で研修先を探していました。就農するならトマトだと考えていて、「トマト農家 関西」でインターネットで検索した時に一番に出てきたのが、兵庫県の東馬場農園という所だったんです。
HPがある農園だとある程度信頼できるなと思い、連絡しました。

新里さん

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80アールのハウスでトマトとイチゴを栽培している東馬場農園(兵庫県神戸市)。収穫物の大半は近隣の量販店に卸し、残りはハウスに隣接するトレーラーハウスで直売している。特筆すべきは、売り上げとして約1億2000万円を上げている点。…

コバマツ

研修先ではどんな農業をしていたんですか?
ハウスに入った瞬間に「土が見当たらない。ハウスの中にコンピューターがある!」という衝撃を受けました。培地を使う養液栽培をしていて、ハウス内の温度や肥料・水の調整もデジタルで管理しているスマート農業を取り入れていました。僕が今まで知っていた農業とは違う形で、衝撃を受けたと同時に可能性も感じましたね。養液栽培なら、沖縄でも周年栽培をすることができるし、面白いんじゃないかなと思いました。

新里さん

トマタツファーム トマト

トマタツファームのハウスの中。土足厳禁で、管理が徹底されたトマトが栽培されている

コバマツ

それが実現できたら大革命じゃないですか! 沖縄の農業って、夏暑すぎて作物が作れないということが問題視されてますもん!
県外も含めて、気候変動に適応して、栽培方法を改善しているじゃないですか。沖縄も台風や温暖という気候の条件があるけど、改善点を見つけて解消していけばなんとかなるんじゃないかなと思って挑戦しました!

新里さん

クラウドファンディングで就農資金500万円調達!

コバマツ

養液栽培やスマート農業を導入するとなると、費用がものすごくかかりそうですよね! やはり国や自治体の補助金を活用したのでしょうか?
僕自身研修を兵庫県の農場で受けていたので、沖縄県内で農業の実績もなく当初は行政からもなかなか応援を得ることができませんでした。また県内でも前例がない養液栽培やスマート農業の導入を考えていたので、なかなか補助対象となる事業も見つかりませんでした。そこで、クラウドファンディングで資金調達をすることができないかと考えて実践しました!

新里さん

クラファンページ

新里さんのプロジェクトページ。たくさんの人からの応援を集めた

コバマツ

すごい! 500万円以上集まっているじゃないですか! これ誰かに協力してもらってやったんですか??
いえ、全部自分でページを作るところから発信までやりましたね!

新里さん

コバマツ

ただ発信するだけではこれだけの金額が集まらないと思うのですが、何か工夫したこととかあるんですか?
自分でクラウドファンディングのプロジェクトのビラをパソコンで作って、1万枚くらい印刷屋で刷ってもらっていろいろなお店にビラを配ったり、企業に飛び込みや紹介で訪問しに行ったりしました。そうすると結構いろいろな人が興味持ってくれたり、応援してくれたんです。

新里さん

プロジェクトビラ

1万枚作って配ったクラウドファンディングのビラ

コバマツ

クラウドファンディングといえばSNSで告知したりしている人が多い印象ですが、新里さんはそれだけではなく、そこはリアルで地道に会うことを重ねていったんですね!
クラウドファンディングを始めた当初から、資金だけではなく、ファン作りもしたいと考えていました。皆が農業の新しい挑戦にどれくらい関心があるのかも知りたかったし、僕の挑戦もいろいろな人に知って欲しかったんです。
資金集めのためにいろいろな人に直接会っていく中で、今トマタツファームで使っているロゴや包装のデザイナーやお客さんが見つかったりと、一気に人とのつながりが広がりましたね。

新里さん

箱のロゴ

現在使っている箱のデザイン

トマタツファーム ロゴ

クラウドファンディングを通して出会ったデザイナーによるトマタツファームのロゴ

コバマツ

資金だけじゃなくて事業に必要な協力者や販路も見つけていったんですね!
クラウドファンディングで集めた資金500万円と沖縄振興開発金融公庫から借りた資金で3700万円を活用して新規就農して現在2年目です。実績もできてきて、ようやく行政とも協力し合いながら規模拡大の話も進められているところです。

新里さん

コバマツ

行政は実績がないと動けないところがありますからね。クラウドファンディングで集めた資金で挑戦して、実績を作ってから行政と協力し合いながら事業を展開していくのも、新しい農業の形を作っていくために必要な選択かも!
集めた資金は何に活用したのでしょうか?
費用は全てハウスの建設費用と環境制御装置費用に充てました。ハウスは台風に耐えられる強度を持ち、植物にとって一番大事な光合成をするための光をより多く入れることのできるものが必要です。また、環境をコントロールするための装置も必要で、全ての設備を整えるには莫大(ばくだい)な費用がかかります。

新里さん

ハウス

沖縄の台風にも耐えられる強度のハウスを5棟建設した

溶液栽培のタンク

養液栽培のタンク

培地

養液栽培の培地

コバマツ

沖縄県ではなかなか前例がない養液栽培の設備投資やハウスの建設に使ったんですね!前例もなく補助の対象にならなくても、クラウドファンディングで前例は作れちゃいますね!

今後挑戦していきたいこと

コバマツ

今後やっていきたいことは?
今後は、規模拡大をしていきたいです。また、僕自身は農業を始めるまでの土地探しや資金集めに苦労しました。今はまだ若い人たちが農業をしたくても、「農業=独立」が当たり前。でも、農業法人が増えていけば一般企業に就職するような形で農業を仕事にできる。そのために十分な給料も休みもある、そんな農業法人にしていきたいですね。

新里さん

ラスト写真

「沖縄の夏は暑すぎて野菜が作れない。夏の間は沖縄産の野菜はないもの」。県内の農家、消費者はそれが当たり前だと思って過ごしてきたのではないでしょうか。
しかし、新里さんは養液栽培で周年栽培に挑戦し、沖縄の農業の当たり前を打ち破りました。前例がないことに新規就農者が挑戦するには、前例のない方法を選択するのも一つの方法かもしれません。誰もやっていないことでも挑戦し、そのために努力を積み重ねていけば、理想の農業の形を実践することができるのだなと思いました。

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