需要が高まるカット野菜、産地から野菜本来の品位で届けるには
国内のカット野菜の市場は、業務用・家庭用共に伸びており、そこでの国産青果物へのニーズも高まっている。産地にとってはブランド野菜に一次加工の付加価値をつけて供給できるチャンスだが、カット後の品位(外観・食味・ビタミンC量)の保持が難しく、消費期限の短さから流通の制約を受けることもある。
こうしたネガティブな常識を打ち破り、カット加工後もおいしい野菜を実現したのがライオンハイジーンの『野菜キレイSaOシステム』だ。工場から出荷される最終製品の菌数を抑制する新技術で、従来のカット野菜の課題解消に寄与する。同社商品企画グループと研究所にその効果と展望を聞いた。

導入効果と開発秘話を語ってくれた商品企画グループと研究所の皆さん
カット野菜の製造はカット工程が菌数上昇に最も影響する。大量の野菜を連続してカットするため交差汚染のリスクを抱えている。そこで、スライサーにオゾン水と専用洗剤をかけ流して洗浄・殺菌しながら野菜をカットするのがこのシステムだ。

既存設備に組み合わせるだけで導入可能。最大4台のスライサーと接続できる
「これにより従来のカット後の浸漬殺菌工程を省く、または、短縮化することができ、水資源などユーティリティコストの削減も実現します」と商品企画グループの濱谷健太さん。
「一般的な殺菌剤の次亜塩素酸水は酸化力が強いため野菜断面の細胞への負荷が大きく、傷みを早めてしまうことが品位低下や消費期限の短さの原因でした。それを洗浄方法と工程の両面から見直したシステムです」と同、松本耕平さん。

商品企画グループ濱谷さん(左)と松本さん(右)
2023年夏に初号機を導入した高知県のカット野菜工場では、殺菌工程の簡略化、菌数制御の安定化、加工後の野菜の変色劣化を遅らせる効果が見られ、取引先が求める鮮度保持や食品ロス削減のニーズに応えられると言う。従来のカット野菜の消費期限が延びれば、県外出荷の弾みになると期待を寄せている。
洗浄・殺菌技術の革新が、産地に新たな可能性をもたらす
『野菜キレイSaOシステム』は、同社のオゾンの基礎研究と技術研鑽の賜物。学会や論文での学術発表もしている。
「オゾンは殺菌と漂白に有用ですが、常温常圧ではガス(気体)なので使いにくい。オゾンを水に溶かしながら、水をはじく性質のある野菜表面に作用させるように使うのは、洗剤メーカーである当社の得意分野です」と同社研究所の椛島真一郎さんと水野義隆さんが技術背景を話してくれた。

研究所の椛島さん(左)と水野さん(右)
オゾンは菌などの有機物を酸化した瞬間に空気中の一成分である酸素となるため蓄積しない。次亜塩素酸をオゾンに置き換えることで、カット野菜の菌数抑制はもちろん、褐変を遅らせ、塩素臭や苦みもなく、野菜本来の味と香りでお客様へ届けることができる。

カット処理6日後の菌数が抑制されていることが分かる
近年、農産物の産地ブランディングと販売促進のため、自治体やJAが地域ぐるみでカット野菜などの加工所を新設する事例も見られる。産地でのおいしさと鮮度をそのままに、一次加工済みのカット野菜として供給できれば、その需要先はさらに広がることが期待される。
ライオンハイジーンが実現した菌数抑制の技術は、食の根幹である安全安心に寄与し、消費期限延長による流通課題の解消や食品ロス削減をもたらし、ひいては産地の持続可能性にもつながる。
さまざまな野菜と切り方で品質や食味を検証し、どれを食べても野菜本来の味や食感をキープしていたという『野菜キレイSaOシステム』は、工場への汎用性が高く、スライサーの刃やコンベアが傷みにくいというメリットもある。「産地のクオリティとブランド力を保ってカット野菜にできるシステムです」と同社の皆さん。そこには、持続的な日本の農業への思いが込められている。
CHECK!!
問い合わせ先
ライオンハイジーン株式会社
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電話:03-6739-9071(商品企画グループ)