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機械を貸して田んぼもあっせん ベテラン農家がつくる就農者のチーム

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

機械を貸して田んぼもあっせん ベテラン農家がつくる就農者のチーム

日本の農業の最大の課題は、高齢化による稲作農家の減少だ。野菜などと比べて広い農地と多額の設備投資が必要になるため、担い手を確保するのは簡単ではない。そんなハードルを乗り越える取り組みを取材した。

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新規就農を後押しするベテラン農家

取材したのは埼玉県加須市のベテラン農家、早川良史(はやかわ・よしちか)さんと、早川さんのもとで研修して独立した2人の稲作農家だ。

この連載で以前、大手コメ卸の神明による新規就農者の育成プロジェクトを紹介した。埼玉県のコメの集荷会社と共同ですでに新会社を立ち上げており、就農者が利用するコメの乾燥・貯蔵施設を3月をめどに完成させる。

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このプロジェクトで、研修の受け入れ先になっているのが早川さんの運営する早川農場だ。稲作の栽培技術を2~3年かけて学び、独立する。その後で必要になる乾燥・貯蔵施設を用意してあるのが事業の強みだ。

この時の取材で、早川さんは神明のプロジェクトが始まる以前から就農希望者の研修を受け入れ、独立を後押ししてきたことを知った。

なぜ稲作で就農するのか。農地の確保と設備投資という2つの課題をどうクリアしたのか。そのことを理解するために、早川農場を訪ねた。

早川良史さん

就農理由は「田んぼが好き」と「稲作の可能性」

取材で集まってくれたのは、早川農場で研修し、同じ加須市で独立した小西良太(こにし・りょうた)さんとその妻の侑希(ゆうき)さん、細野一司(ほその・かずし)さん、そして早川さんの4人だ。

小西さんは36歳。自動車の整備会社に勤めた後、早川農場で働きながら技術を学び、2023年に独立した。農家になろうと思ったのは「田んぼをバックに車の写真を撮りに行くなど、田園風景が好きだから」という。

早川農場を研修先に選んだのは、県の農林公社から紹介されたからだ。短期間で研修を終えて独立する予定だったが、「ここで働くのが楽しかったし、給料もきちんと払ってもらえた」ので、研修は5年間に及んだ。

侑希さんとの結婚を機に、「自営でやってみよう」と話し合い、独立を決意した。面積は4ヘクタールからスタートし、2025年は20ヘクタールに増える予定。地元のコメの仕入れ業者や神明などに販売している。

小西良太さんと侑希さん

細野さんは47歳。別の仕事から農業の世界に入った小西さんと違い、細野さんは運送会社の管理職として長年働きながら、農繁期には親戚の田んぼを手伝ってきた。そのため、稲作の厳しい状況も理解していた。

地域を見回すと、稲作農家は高齢化していて、大半は後継ぎがいなかった。経営規模も小さいまま。それでも運送会社をやめ、独立就農する道を選んだのは、やり方次第では可能性が開けると思ったからだ。

経営規模を大きくするのはその前提。新しい栽培技術や組織運営のノウハウも要ると考えた。コメと麦を合わせた作付面積が90ヘクタールに及び、社員を雇用している早川農場を研修先に選んだのはそのためだ。

社員の立場で約2年研修し、2023年に独立した。12ヘクタールからスタートし、コメと麦を合わせた作付面積は2025年で30ヘクタール強。販売先は小西さんとほぼ共通で、神明や地元の仕入れ業者などだ。

細野一司さん

足りない機械をレンタル

ここまで小西さんと細野さんの就農の経緯をざっと見てきたが、肝心なのはこの先だ。2人はなぜ田んぼと売り先を確保して就農できたのか。

答えは早川さんの紹介。地主が早川さんに貸そうとした田んぼを回してくれただけでなく、すでに早川さんが借りていた田んぼの一部を融通してくれた。そのほかに、地域で人脈を築いて新たに借りたケースもある。

では設備はどうしたのか。ここでも早川さんが力になってくれた。

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