モロヘイヤの基礎知識
モロヘイヤとはどんな野菜?

モロヘイヤは東地中海地方原産の葉物野菜です。エジプトでは葉をスープとして食べるのが一般的ですが、チュニジアでは乾燥させたモロヘイヤ粉末を調理に使うなど国によって食べ方はさまざまです。日本では茹でてお浸しや、粘り気を出してご飯にかけたり、炒め物にしたりといろいろなレシピで親しまれています。また、和名はシマツナソ(縞綱麻)と言い、「麻」という字の通り、繊維材料として現在でも用いられています。分類はアオイ科ツナソ属で、同じく粘り気が特徴のオクラやハイビスカスの仲間です。
モロヘイヤ栽培の魅力と特徴
モロヘイヤ栽培の魅力はなんと言っても初心者にも育てやすいこと。暑さに強く、寒さに弱い夏向きの野菜で、近年猛暑の続く日本でも育てやすい性質です。また、病害虫が少なく、他の葉物野菜に比べると葉っぱが穴だらけで収穫できないという心配が少ないのもうれしいところ。
トマトやナスといった実のなる野菜に比べると、葉だけを管理すればいいため栽培もシンプルで負担が少なく済みます。また、1〜2株で夏の間ずっと収穫可能という生育旺盛な点も魅力的です。プランターでも栽培できるほか、スーパーで買ったモロヘイヤから挿し木で増やせるといった手軽さも兼ね備えています。
栄養価や健康への効果
モロヘイヤは栄養価が非常に高く、βカロテン、ビタミンB2、カルシウム、鉄分などが豊富です。特にβカロテンは緑黄色野菜の中でもトップクラスで、抗酸化作用や免疫力向上、疲労回復、夏バテ防止に効果的です。また、繊維材料にも使われるように、食物繊維が大変豊富で100g当たりの食物繊維はゴボウに匹敵する値となっています。
夏場の農作業での疲れが吹き飛びそうな、まさに「健康野菜」の代表格です。
種、莢、若い葉に含まれる毒性成分に注意
モロヘイヤの種子や莢、発芽直後の若芽にはストロファンチジンなどの毒性成分が含まれ、誤食するとめまいや嘔吐などの中毒症状を引き起こす可能性があります。過去には牛の死亡例も報告されています。
農水省のHPによると、収穫期の葉、茎、根の各部位並びに蕾(つぼみ)発生期の葉、茎、根、蕾の各部位には含まれず、野菜として販売されているモロヘイヤや、加工食品からも検出されないこと、家庭菜園では収穫時に莢が混入しないよう注意することが呼びかけられています。
モロヘイヤの栽培暦

種まき時期と、発芽率を高めるためのポイント
モロヘイヤの発芽適温は25~30℃と高めのため、露地に直播する場合はゴールデンウィーク後が理想的です。地温をしっかり確保するために、マルチングで土を覆うと発芽率が向上します。
低温に弱いため、3〜4月など早い時期に種まきをしたい場合は、発芽育苗機やトンネル、ハウスなどでしっかりと保温することが重要です。その際は、直接直播するよりも、ポリポットやセルトレイで苗を育ててから植え付ける方が確実です。
なお、種まきの適期は中間地では5月上旬から7月上旬が目安。播種が遅れると収穫できる期間が短くなるので、のんびりしすぎはよくありません。
土壌作りと適した場所の選び方

モロヘイヤの栽培には、日当たりと風通しの良い場所が適しています。株がこんもりと大きく育つため、他の作物と近すぎると干渉してしまいます。植え付けの際は、十分な株間を確保してのびのびと育てられるスペースを取りましょう。
また、種とりを目的とする場合は、年末頃まで畑に植えたままになるため、長期間管理しやすいよう畑の端などに植えるのがおすすめです。
プランターで育てる場合も同様に、日当たりの良い場所を選び、風通しを意識して設置すると旺盛に育ちます。
モロヘイヤ栽培で準備する道具
モロヘイヤはひょろひょろ伸びずにこんもりと茂るので、通常は支柱やネットを立てなくても問題ありません。ただし、摘芯の位置が高い場合や、風が強い場所では茎が倒れやすいため、支柱で支えてあげると安心です。
露地栽培では、雑草の繁茂を防ぎつつ地温を上げるために、黒マルチを活用するのがおすすめです。プランター栽培は乾燥しやすいため、ワラや敷き藁などで地表を覆って水分の蒸発を防ぐと効果的です。
モロヘイヤの土づくり
植え付けの2週間前には苦土石灰をまいて酸度をpH6.0〜6.5に調整しておきます。1週間前に堆肥と肥料を混ぜて耕します。畝を作ったらマルチを被せて地温を上げておきます。プランターの場合は市販の野菜用培養土でOKです。
モロヘイヤの種まき、植え付け
発芽をスムーズに進めるため、種は前日から一晩水に浸けて吸水させておきましょう。育苗土には深さ1cmほどの穴を作り、1㎝間隔で5〜6粒の種をまきます。モロヘイヤの種は非常に小さいため、覆土はごく薄く、5mm程度で十分です。種が流れないように、指でやさしく土を押さえて鎮圧します。
発芽が順調に進んで芽がたくさん出た場合は、本葉が出てきた段階で間引きを行い、まずは3本を残します。その後、本葉が5〜6枚ほどになった時点で1本に絞ります。ただし、混み合っていなければ、複数株をそのまま育てても構いません。自然と元気な株が勝ち抜いていきます。

間引く際は、手で抜かずにハサミで根元を切るようにし、残したい株を傷つけないよう注意してください。また、幼苗には毒性のある成分が含まれる可能性があるため、間引き菜を食べるのは避けましょう。
種まきから約30日が経ち、高さ15cmほどに育ったら植え付けのタイミングです。株間は40cmほど空けて、植え付け後にはたっぷりと水を与えてください。

モロヘイヤの摘芯、切り戻し
モロヘイヤは放っておくと2mくらいまで大きく成長します。たくさん収穫するためには脇芽を増やすことが肝心です。草丈40〜70cmで摘芯すると脇芽が増えて収穫量がアップします。指でぽきっと折れる位置(頂点から15cmほど)で摘芯しましょう。摘芯後は脇芽が次々と伸びるので、脇芽をどんどん収穫します。混みあっていて光が当たらないような場所は収量につながらない上に、病害虫の温床となります。切り戻してすっきりさせてあげましょう。


モロヘイヤの肥料やり、水やり
モロヘイヤは前作の土に肥料成分が残っていれば、植え付け直後の施肥は省略できます。ただし、収穫を続けていくうちに徐々に肥料切れの兆候が表れることもあります。葉の色が薄くなったり、茎が赤茶色になるのは、追肥が必要なサインです。そんな時は、葉がよく茂っている真下の土を少し掘り、化成肥料を埋めると効果的です。
また、プランター栽培の場合、水やりはとても重要です。モロヘイヤは乾燥に弱く、特に真夏は水分不足でしおれやすいため、プランター栽培では朝晩の水やりを欠かさないようにしましょう。水不足は葉が硬くなり、食味の低下につながることもあります。
葉が茂りやすいモロヘイヤは、その分蒸散によって水分が失われやすい植物です。露地栽培であっても長期間雨が降らない場合は水やりをしてあげましょう。
適切な水やりが、長期間にわたって元気な状態で収穫を楽しむためのコツです。
モロヘイヤの収穫
連続収穫のコツと効率的な取り方
モロヘイヤは葉を食べる野菜なので、「いつでも収穫できる」と思いがちですが、あまり早い段階で採り始めると株が十分に育たず、収量が増えません。そのため、収穫の開始は草丈が40cm以上になってからがおすすめです。時間に余裕があるなら、さらに大きく50~70cmまで育ててから収穫してもいいでしょう。
収穫時は、頂点から枝先の15〜20cmを摘み取ります。収穫する際に、必ず1~2節を残して切らないとわき芽が発生してこないので注意してください。ハサミを使っても問題ありませんが、手で折れる柔らかい部分を収穫すると、そのまま茎ごと調理できるので便利です。畑に入って「食べたい分だけ手で摘み取る」スタイルでもOK。わき芽が次々に伸びるので、繰り返し長く収穫を楽しむことができます。

花や種ができる前に注意すること
モロヘイヤは短日植物と呼ばれ、日照時間が減ると花芽をつける性質があります。花がついた後でも花を取り除きながら収穫は可能ですが、茎が硬くなって食べづらくなります。料理するときには葉だけを摘んで調理するといいでしょう。
注意したいのは、莢(さや)に毒性があること。絶対に食べてはいけません。農林水産省によると、蕾発生期の葉、茎、根、蕾には毒は含まれないとされているので、莢を確実に除去することが重要です。
小さな子どもやペットがいる家庭では、誤食の予防のためにも、花がついたら早めに株ごと刈り取る方が安心です。

モロヘイヤでよく見られる病害虫
葉ぶくれ病
葉の表面に水ぶくれのような凹凸が生じる病気です。原因は子のう菌類の一種で、ビニールハウスや雨よけ栽培での発生が報告されています。特に高温多湿条件下で発生が多いため、風通しを良くして湿気をため込まないようにしましょう。
うどんこ病
葉がうどんの粉をまいたように白くなる病気です。春から秋にかけて、日照不足や乾燥気味の環境で発生が多くなります。肥料切れでも窒素過多でも起こりやすくなる病気なので、ちょうど良い量の肥料を与えるようにしましょう。発生したら病気の葉は取り除き、混みあっている部分は剪定して風通しを良くします。
灰色かび病
カビ(糸状菌)が原因の病気で、特に梅雨のような湿度が高い時期に発生が多くなります。風通しが悪いと発生しやすいので、葉の混みあっている部分は剪定してすっきりさせてあげましょう。マルチングで泥はねを防ぐのも有効です。
ハダニ
葉の裏に小さな点々や、クモの巣のような糸が見えたらハダニかもしれません。ひどくなると葉全体がかすれたようになり、黄色に変色して枯れてしまいます。ハダニは乾燥に強く水に弱い性質があるので、梅雨明け後の高温時に発生しやすいです。葉の裏をじょうろの水で流すと予防効果があります。農薬を使う場合はモロヘイヤや野菜で登録のあるものを使いましょう。
アザミウマ
体長2ミリほどのこちらもハダニ同様小さな虫です。体は糸のように細く、ぴょんぴょん跳ねるので見つけるのも一苦労。葉が縮れたり、細かい傷がついたりします。
アブラムシ
アブラムシは柔らかい葉が大好きなので、植え付け初期に付きやすいです。肥料の与えすぎや密植を避け、風通しを良くしましょう。
モロヘイヤ栽培でよくある質問
Q. スーパーで売っているモロヘイヤを増やすことはできますか?
A. はい。葉をカットして水につけておくと根が出て、挿し木で増やせます。根が出てくるまで日陰で管理し、元気な根が出たら土に植え付けます。植えてしばらくは頻繁に水やりをし、根の活着を促しましょう。
Q. 初心者でも育てられますか?
A. 病害虫が少なく、支柱も不要なため初心者向きです。苗から始めるとさらに安心です。ぜひ挑戦してみてください。
Q. 葉から毛が生えているのですが、奇形ですか?これは食べられるのでしょうか
A. ツナソ属植物(Corchorus L.)の葉は縁がギザギザしています。そのギザギザの1つが「葉耳」とよばれる1対の針状の突起に変化して「毛」のように見えています。奇形ではなく元からこのような形をしているので、心配せずに食べてください。
モロヘイヤをプランターで栽培するには。地植えとの違い
プランターは乾燥しやすいため、水やりの頻度を多めに
プランター栽培と露地栽培で圧倒的に違うのが土の量です。プランターが小さい場合は特に土が水分を保持できる量が少なくなるため乾燥しやすくなります。そこで、プランター栽培では水やりが欠かせません。特にモロヘイヤは真夏の暑い時期に栽培するため、乾燥が大敵です。毎日朝晩、水やりをたっぷりしてあげましょう。あまりに乾燥がひどい場合は敷きワラをひいたり、プランターごと日陰に移動するなどしてモロヘイヤを守ってください。
収穫量は地植えよりやや少なめだが、管理が楽
プランター栽培では根域が狭まるぶん、地上部の生育も控えめになります。マンションのベランダで育てる場合は日照量もかなり減るため、収穫量はどうしても露地栽培に比べると少なくなるでしょう。ただし、台風になぎ倒されたり、虫の大群にやられたりという自然災害からは守りやすいのがプランターのいいところ。小まめな手入れや追肥などの管理作業を行えば、連続収穫で夏の間ずっと楽しむことが可能です。ただし、たくさん収穫したいからと密植するのは禁物です。10号鉢に1株、60cmプランターに2株が目安。それ以上は植えすぎないようにしましょう。
タイミングを抑えれば、1~2株で夏中収穫可能
モロヘイヤは、暑さに強く栄養価が高い夏野菜です。病害虫が少なく、初心者でも育てやすいのが魅力です。種まきや苗選び、摘芯、収穫のタイミングを押さえれば、家庭菜園では1〜2株で夏の間ずっと収穫できるほどの生命力があります。
栽培中は、毒性成分への注意や水やりの工夫、肥料管理を行うことで、安定して品質のよい葉を収穫できます。また、プランターでの栽培も可能なので、ベランダや庭でも気軽に楽しめます。スーパーで購入したモロヘイヤを使った挿し木も試してみましょう。
栽培の楽しさと食味の良さ、そして健康効果の高さを一度経験すれば、きっと「モロヘイヤファン」になるはず!次の夏野菜は、ぜひモロヘイヤを育ててみてください。



























