消費者が「買いやすい」状態をつくる
欲しいと思ったときにすぐに買えるか。これはとても重要です。
あなたの消費者が地元の人なら、すぐそこの産直市場や自前の直売所で買える。この状態にしておかないといけません。
欲しいときに買えなければ、この世にないのと同じです。哲学者ジョージ・バークリーは「存在するということは知覚されているということである」と言いました。つまり言い換えると「知覚されないと存在しないのと同じ」なのです。
だからといって「では日本中、世界中で買いやすい状態に持っていかないといけないのか……」とは思わないでください。冒頭の「あなたの消費者が地元の人なら」が重要です。
設定した消費者が地元の人なら、地元の人が買いやすければそれでいいのです。あなたの商品はどの状態が買いやすいのか、消費者目線で考えてみましょう。
「知っている」は「好き」になる
人はいつも見かけるもの、何度も見かけるものを好きになります。これは心理学者ロバート・ザイアンスが提唱した「単純接触効果」と呼ばれるものです。
僕はさらにこれを独自に「知っている人効果」と名付けています。知っている人から「これ美味しいよ、食べてみて」とすすめられると、無条件に味も品質も信用しますよね。
こういった効果を活用するために、あなたも消費者にとって「知っている人」になりましょう。そのためにはあなたの農園、あなた自身、そしてあなたの商品を「いつもよく見かける」という状態に持っていきます。「いつも行く産直市場には必ずあなたの農園の商品があるよね」という状態です。こうすると単純接触効果により好感を持たれ、信頼され、買われやすくなります。
さらには「知っている」ので美味しさも増します。人は味覚で味わいません、脳で味わうものです。脳が情報を味わっているのです。
「よく見かける」をつくる売り場の選び方
では、あなたの商品はどこで買えるのか。大企業でない限り、どこででも買えるというのは無理です。したがって、買える場所を戦略的に設定していく必要があります。
実際はすべての売り場では買えないが、認識として「よく見かける」という状態に持っていければゴールです。たとえば半径5km圏内のどの店とどの店に置いてもらえれば「よく見かける」という状態になるか。また、マルシェといったイベントなども、どこに出店すれば「いつも見かける」という状態になるか? と考えていきます。
産直市場、スーパー、道の駅、青果店、百貨店、レストラン、スイーツ店、産直ECサイト、自社サイト、ふるさと納税、SNS、マルシェ、地元イベント、展示・商談会などなど、売り場は多種多様です。よく考えて設定していきましょう。
消費者の「知ってる」「好き」を加速するPOPの作り方
「POPなんて誰も見ないし読まない」という方が多いですが、大間違いです! 誰も見ない、読まないのではなく、見せること、読ませることができていないだけです。読まれるPOPの作り方を伝授します。
①キャッチコピーがすべて
すべてはキャッチコピー次第です。これに失敗すると誰も読みません。一番陥りやすい失敗が「商品名」を大きく書いてしまうことです。POPの上部、一番目立つところに「トマト」と書いてしまうのです。そんなのは商品を見ればわかります。
そうではなく、トマトの特徴をキャッチコピーにして書きましょう。
キャッチコピーは、消費者や世の中へ向けての「私たちとは○○だ」「この商品はこういう特徴がある」という説明や紹介の一言です。
キャッチコピーはくどくどとした長文ではいけません。短くて消費者の心をつかむ、まさにキャッチーさが大切です。

②値段は入れちゃダメ!
値段を入れるのはPOPではなくプライスカードです。ただ、価格で勝負したい場合は大きく入れましょう。でも、価格勝負はしたくありませんよね。
③手書きVS.フォント
「文字は手書きがいいですか?」とよく質問をいただきます。僕は「できるだけ手書きがいいです」とお答えしています。手書きだとあなたの人柄が感じられ、声すら聞こえてくる感じがするからです。「知っている人効果」が発揮され、買ってもらいやすくなります。
ただし「読める字で丁寧に」が前提です。たまに「手書きの良さを出すんじゃ!」となぐり書きで書いている人がいますが……読めないと意味がありません。
④食べ方&保存方法
食べ方と保存方法はできるだけ表記してください。消費者は無知です。それを知らせるだけで買う理由ができます。
⑤あなたをどこかに
農園のロゴマークのシールを作っていれば、そのシールもPOPに貼っておきましょう。ない場合は農園名を入れておきましょう。「このPOPで説明している特徴はうちのトマトにしか当てはまらないものですよ」という世界観を作っておきましょう。

POPは最も低予算でできる販売促進です。しかも効果がなければすぐにやり直しもできます。ぜひチャレンジしてみてください!
自前の直売所をつくるなら
農家のみなさんが自宅敷地内や園地に設置されている直売所。あれは僕たち消費者からすると、「他人のおうち」なのでとても入りにくいです。そこで、「ウェルカム! どうぞ、どうぞ!」という印象を作ることが大切です。たとえば、幟(のぼり)を立ててみる。1本あるだけで、そこは「他人のおうち」から「お店」に変わります。これは単に入りやすさを演出するだけではありません。「農家が余ったものを置いているんだろ。安く買ってやるわ」という、歓迎できない人を排除する効果もあるのです。残念なことですが、「置いているだけ」だとそう思われることもあります。
棚も作り、商品や色や大きさなどを揃え、綺麗に陳列してみてください。しっかりした売り場だ、と見せることで、「余ったもの」ではなく「商品」になります。余っているものを高く買う人はいませんが、商品だと適正価格で買ってもらえます。
また「ちゃんとしたお店だ」という雰囲気作りは、盗難などを減らす効果もあるでしょう。もちろん、何をしても盗む人は盗みます。しかし、そういった気持ちを少しでも起こさせないためにも、「ちゃんとしているぞ」と見せることが大事です。また、決済方法はPayPayなどのスマホ決済のみでもいいかもしれません。夕方の散歩などで財布は持ってきていないがスマホは持っている、という方も多いですよ。
「お店」だという認識ですべてをデザインしてみましょう。
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<著者プロフィール>
角田誠(つのだまこと)
株式会社はりまぜデザイン代表。2007年に100円ショップ向けデザイン会社を立ち上げ、数々のヒットを飛ばし、大手100円ショップ全商品の中で年間売上1位を獲得する。2013年に農業専門に事業転換。ブランディング・マーケティングをふまえ農家の所得向上・事業承継を目指す。47都道府県、650軒以上の農家にデザイン提供を行う。

















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