「里山の棚田」のイメージで農業へ
2人は埼玉県加須市で2023年に独立就農した。田んぼの面積は順調に増え、23ヘクタールまで拡大した。売り先は大手コメ卸のほか、地元の銀行にも販売している。株主優待のギフト用だ。
23ヘクタールは、すでに国内の稲作の平均を大きく上回る。就農から4年でここまで大きくなるには、研修先の早川農場(加須市)の多大なサポートがあった。機械を貸してくれたり、販路を紹介してくれたりした。
先行きを考えると、設備をどうするかは当初から課題だった。もし小規模な営農にとどめ、家計は他の収入で支える兼業の道を選ぶのなら、話は違っていただろう。だが2人が目指したのは「稲作の専業農家」だ。
良太さんはもともと会社員で、「コメを作りたい」と思って農業の世界に入った。研修に入る前、農業には「里山の棚田のようなところでのんびりやる」というイメージがあった。稲を「はざがけ」する光景も頭にあった。
「現実はまったく違った」。研修するうち、稲作のリアルな姿を知った。「農業で食べていこうと思えば、小さい機械では成り立たない」。早川農場は地元でも有数の大規模経営。そこで学んだことが独立後の指針となった。

小西良太さん
収入確保には大型機械が必要
里山のイメージを払拭して独立した2人にとって、2026年は節目の年になった。大型の倉庫を建て、トラクターとコンバインを新車で購入した。精米機と色彩選別機も買った。総投資額は8200万円だ。
これまで50馬力のトラクターは持っていた。だが農場の面積が大きくなるのに伴い、作業が限界に近づきつつあった。周囲からは「その機械でよくやってるね」と言われていた。
今回買ったのは114馬力。日本のトラクターでは最も大きな部類に入る。良太さんは「作業効率はスピードが左右する」と強調する。
短時間で作業が終わるという意味だけではない。例えば耕耘に手間取っていると、田んぼに水が来るタイミングに間に合わないといったことが起きる。田植えも事情は同じ。水利は地域で共同で管理しているからだ。
作業の遅れが積み重なると収量が減り、収入減を招く恐れもある。「収入を確保するには効率のいい機械が必要」。投資をためらっていては、栽培を軌道に乗せることは難しい。稲作にとって設備は営農の要なのだ。

小西侑希さん
倉庫の敷地は事前に買っておいた
投資に必要な資金は日本政策金融公庫の融資を活用した。米価が上がり、収益が改善したことで借りやすくなったという。そう書くと、たまたま高米価のおかげで投資できたと思う人がいるかもしれないが、実際は違う。
就農1年目には今回倉庫を建てた場所を見に来て、立地の良さを気に入っていた。「後々必要になるのは見えているので、買っておいた方がいい」と考え、いまから1年あまり前に土地を購入した。
そのために必要な500万円には自己資金を充てた。会社に勤めていたときにためておいたお金だ。それが稲作という設備が必要な作物で生きた。
高米価の恩恵は「設備投資をする時期が思ったより早まった」ということに過ぎない。投資はあくまで長期的な視点にもとづく。
そして倉庫を建てる際、さらなる先も見据えてある工夫をした。建物の高さを8メートルにしたのだ。トラクターやコンバインを入れるだけならこの高さは必要ない。いずれコメの乾燥機を導入することを視野に入れている。

購入したばかりのコンバイン
モデルケースになりたい
侑希さんは「自分たちの拠点ができた。これでようやく始まるという感じ」としみじみ話す。ではこれから何を目指すのか。この点について、良太さんは「地域の稲作のモデルケースになれたらいい」と語る。



















