作物の「日焼け」とは?

日焼けの初期症状(アテモヤ)
作物の日焼けは、病原菌や害虫によって起こるものではなく、主に強い日射や高温によって植物の組織が傷つく生理障害である。日焼けというと果実を思い浮かべやすいが、実際には果実だけではなく、多くの部位に発生する。
日焼けが発生する場所
・果実
・葉
・新芽
・枝
・樹幹
・野菜の茎
果実では、日光の当たった面が白色や黄色に抜けたようになり、その後、黄色~褐色、重症になると黒褐色に変化することがある。重度の場合は、食味が落ちたり、もちろん、商品として出荷できない状態になる。
葉では葉焼けとして現れ、葉の一部が白く抜けたり、褐変して枯れ込んだりする。果樹では若い樹の幹や、それまで葉で覆われていた枝が突然直射日光にさらされることで、樹皮が傷むこともある。枝が焼けてしまうと、枝の内側の組織が破壊され、養水分が流れなくなる。また、台風直後の強い日照により、塩害による被害も相まって、枯れ上がるほどの被害になることもある。

重度の枝の日焼け(アボカド)
気温よりも「植物体の表面温度」に注意
特に最近の夏はとにかく暑く、植物を育てるのが難しくなっているが、日焼けに関してさらに気をつけないといけないことは、気温と果実の温度は同じではないということである。直射日光を受けている果実(あるいは枝葉など)は、太陽からの放射エネルギーを吸収するため、周囲の気温よりはるかに高温になる。
ある場所では、日中の気温が40℃を超えたというニュースも珍しくなくなってきているが、植物の温度はそれ以上になるケースが多々ある。
筆者らの育てるマンゴーなどは特に、着色のため、果実を葉の上に吊り上げ、日光を直接浴びせるが、最近は強すぎる光のせいで日焼けが発生するようになった。そのため、果実の上部に果実を包む袋を加工して、日傘を作っている。マンゴー果実の管理方法も見直さないといけないなと感じるようになってきた。

マンゴーの日焼け防止用日傘
また、マンゴーだけではなく、その他多くの果実なども、日中の果実表面温度は、周囲の気温より10~12℃程度高くなることが報告されている。リンゴ果実の研究では、果実表面温度がおよそ46~49℃に達すると黄色~褐色の日焼けが発生し、約52±1℃では表皮・表皮下細胞が熱によって破壊される[1]。
作物を育てる上で重要なことは、気温だけではなく、作物そのものが何℃になっているのかという視点を持つことである。
特に日焼けしやすいタイミング
日焼けは夏の暑い時期にじわじわと起こることもあるが、急激な環境変化にも注意する必要がある。沖縄では特に、梅雨明けの急な晴れ間続きで、一気に果実が焼けることも少なくない。
また、強剪定や摘葉をした直後なども気を付けた方が良い。それまで葉の陰になっていた果実や枝に、剪定後いきなり直射日光が当たるようになると日焼けしやすい。夏の時期の剪定は気をつけようと言われるのはそのためだ。
袋を外した直後の果実なども気をつけたい。袋掛けによって長期間遮光されていた果実を突然強い日差しにさらすと、一気に焼けてしまう。最初から日光を受けながら育った果実で、日焼けを起こしていないものは意外と強いこともあるが、袋掛けをしているものは収穫の直前まで気をつけなければいけない。
これは果実だけではなく、枝葉にも当てはまる。例えば、ずっと日陰においていた鉢植え植物などを、いきなり直射日光にさらすと、日焼けを起こす場合が多い。筆者らも、鉢植えで色々な果樹を育てており、模様替えを称して色々と植物の置き場を変更すると、次の日には日焼けで葉がダメージを受けていたことが多々ある。

いきなり外に出してかなり日焼けしたミルクフルーツ

日焼けした葉(ミルクフルーツ)
どの作物にも言えることだが、徐々に環境の変化に慣らしていく必要がある。そのため、他所で購入した苗木などの取り扱いには気をつけたい。不安な場合は、夏の購入は控え、春や秋など、割と気温的に穏やかな時期の購入を検討しよう。
台風後は特に気をつけること!
筆者が栽培している沖縄では台風も多い。台風によって葉が飛ばされたり傷んだりすると、それまで葉の陰に隠れていた幹や枝、果実が突然強い日射にさらされることがある。また、植物自体に付着した塩分などの影響で、枝葉が焼けたり、塩害で水分が吸収できなくなって焼けることも多々ある。
台風通過後は、3~6時間以内に植物に散水をして、台風でついた塩などを洗い流す必要がある。
最近では、2026年7月11日にきた台風9号の影響で、多くの作物に塩害が出た。筆者はその時たまたま、12日まで海外に出張に行っており、13日にしか散水できなかったため、かなり多くの果樹が焼けていた。読者の皆さんもこれを反面教師に大切な若木を日焼けから守ろう。

台風通過後1日で枯れ上がったタヒチモンビン

レイシの枝葉もかなり焼けた

スイートキャッサバも全焼した
作物の日焼けを防ぐ8つの対策
さて、ここでは沖縄県で多くの作物を育てる筆者が、実際に行っている日焼け対策を8つ紹介する。
| 1 遮光ネットを利用する 2 日焼けに強い植物を「シェードツリー」として利用する 3 白色の塗布材を利用する 4 切り上げ剪定で上の枝葉を残す 5 果実袋や簡易的な被覆を利用する 6 水切れを防ぎ、株元などにマルチをする 7 散水による蒸発冷却を利用する 8 急に環境を変えない |
それぞれを詳しく解説していく。
1 遮光ネットを利用する
日焼けに関して、最も取りかかりやすい対策方法が遮光である。果樹をネットで覆ったり、あるいは、果樹園全体を遮光ネットで覆ってしまう方法だ。家庭菜園でも、夏の間は作物の上部に遮光ネットを張る方が生育が良いことが多い。
筆者は家の庭でもいくつか植物を育てているので、毎年夏になると50%遮光のネットを庭の全面に張っている。

庭は鉢植えだけだが、遮光ネットで覆っている
また、ビニールハウスの中も植物によっては、遮光ネットを2重張り(ハウスの内側にさらに遮光ネットを張る)にしているところもある。

筆者らの苗木生産ハウス。観葉植物など直射に弱いものは特に遮光をする
最近は露地でも遮光ネットがないと生育が悪いため、筆者らは果樹を植える際もこのように全体的に遮光ネット(30%遮光)で覆うようにしている。

遮光ネットのみの手作り簡易ハウス
以下は台湾で果樹栽培をする友人の園地であるが、ドリアンなどの直射日光に弱い果樹の場合は、このように一本丸ごと、遮光ネットで覆っていた。

遮光ネットで周囲を覆ったドリアンの木
2 他の植物を「シェードツリー」として利用する
遮光ネットも使いやすいが、日焼けに強い作物を「シェードツリー」として利用するというのも立派な対策である。筆者は、沖縄で果樹の若木を植える際、周囲に日除け用にバナナを植えることがよくある。

バナナを等間隔に植えてその間に果樹を植える
バナナは、日焼けにとても強く、さらに葉が大きいため、かなり日陰を作ってくれる。さらに成長も早いため、「シェードツリー」として有効である。バナナは台風に弱いイメージもあるが、バナナ自体を60cm~80cm程度、深く植えると転倒しにくい。また、バナナ自体も果実を生産してくれるので一石二鳥だ!
3 白色の塗布材を利用する

枝の表面に塗布材を利用する
筆者は果樹の若木などで、日差しが強く当たる幹を白色の塗布材で覆うことがある。上部だけでも、塗布することで、太陽から受ける放射エネルギーの一部を反射し、樹皮表面の急激な温度上昇を抑えるのである。
樹幹用資材としては、炭酸カルシウムを主成分とする「ホワイトンパウダー」などがあり、メーカーも樹幹に被膜を形成して温度変化を抑え、日焼けから保護する用途を案内している。
4 切り上げ剪定で上の枝葉を残す

下の枝を切って、上の枝を残す
果樹の日焼け対策では、剪定方法もかなり重要である。筆者は「切り上げ剪定」を行うことが多い。切り上げ剪定というのは、分枝部でどちらかの枝を間引く場合、上側の枝を残して、下側の枝を剪定していく方法であり、切って枝を上げていくことから「切り上げ」と呼んでいる。
下側の不要な枝を間引きながら、樹冠上部に必要な葉を残すことで、木の内側が強い光から守られる。葉は光合成器官であると同時に、果実や枝を強烈な日射から守る日傘でもあるし、さらに下方から水分を上方へ引き上げるポンプの役割も持っている。
真夏に樹冠上部の枝葉を取り除いてしまうと、それまで日陰だった果実や主枝、幹に突然直射日光が当たり始めて日焼けを起こすことが多い。
果樹では「風通しを良くすること」や「樹冠内部まで光を入れること」が大切だと言われるが、程度が大切であり、特に夏の時期に急に剪定をするのは逆効果になることがある。
5 果実袋や簡易的な被覆を利用する
果実そのものを袋や資材で覆い、直射日光を弱める方法もよくやられる。
日焼けしやすい果実だけを部分的に保護する方法であれば、園全体に遮光ネットを設置するより簡単な場合もある。

アボカドの袋がけ
果実全体を覆ってしまう方法も有効であるし、太陽光が当たる上部だけを覆う方法もある。
後者の場合、果実の膨らみや状態をすぐに確認でき、収穫タイミングなどを判断しやすい。果実全体を覆ってしまうと、果実の状態を確認するためにわざわざ袋を外さないといけないという煩わしさもあるが、同時に害虫防除もできるため有効ではある。

マンゴーの袋がけ

ビワの袋がけ
ちなみに台湾では、果実全体を覆う袋に、中身を確認するための窓がついているタイプがあり、この道具はとても便利だなと感心している。

台湾には中身を確認する窓がついた袋がある(果実はレンブ)
また、局所的な対応にはなるが、接ぎ木をした後は、このように茶封筒を被せて、穂木を日焼けから守っている。

接ぎ木をした後はこのような茶封筒を被せる
6 水切れを防ぎ、株元などにマルチをする
真夏は水管理も重要である。特に、鉢植えや浅根性の作物では、晴天の日中に急激に土壌水分が減ることがある。水切れを起こすと、日焼けも加速しやすい。朝は元気だった作物が午後になるとしおれている場合、マルチなど何かしらの対策をした方が良い。

防草シートでも十分効果がある
7 散水による蒸発冷却を利用する
大規模な果樹園などでは、樹冠上から散水して植物体を冷却する「蒸発冷却」という方法も利用される。打ち水のような感覚で、空間全体の温度を数℃下げて、日焼けなどの被害を抑えるやり方である。
日中の温度や日差しが強い時に植物へ水やりをするのは根を痛めてしまい逆効果になることが多いが、土壌にかけるというよりは、果樹が植えられている周囲やその空間全体に散水して、空間を冷やすと良い。水が蒸発するときに熱を奪うため、果実や葉の温度を下げることができる。
苗木や果実を販売する商業施設などでは、マイクロスプリンクラーを使った冷却がなされていることも多い。これは、果実の高温障害を減らし品質の改善につながる。ただし、水の使用量が増えることや、作物を長時間濡らすことで病害リスクが変化する可能性もある。家庭菜園で行う場合には、作物にむやみに水をかけ続けるというよりは、ある程度、病害リスクを考えながら行おう。
8 急に環境を変えない
最後は、設備がなくてもできる非常に重要な対策であるが、急に植物の環境を変えないことも伝えておきたい。植物はある程度の時間をかけて環境に順応するものである。同じ品目や品種でも、日向で育った場合と日陰で育った場合とでは、日射に対する強さが異なる。日陰で数年育った植物をいきなり日向に出すと、数時間ですぐに日焼けを起こすことが多い。
そのため、そういったものを日向の環境に移したい場合には、いきなり日差しの強い場所へ出すのではなく、徐々に日当たりの良い場所へ移動させることが重要である。
筆者は、それなりの大きな鉢で育てているリベリカコーヒー苗をハウスの中から外に一時的に出していただけで、日焼けをさせてしまった。大きい苗であれば大丈夫だろうと考えていたが、かなり日焼けが起こった。次からは気をつけていきたいと思う。

コーヒー苗も外に出すと一日で日焼けした

コーヒー苗の日焼けの様子
まとめ
作物の日焼けは、単純に暑いから起こる現象ではなく、強い光と高い植物体温、さらに水分ストレス、環境の変化など多くの要因が重なることで、植物の防御能力を超えて、果実や葉、枝、幹の細胞が傷害を受ける。そのため、対策に関しても、遮光ネットや、塗布材、袋がけ、マルチ、散水など、いくつかの方法を組み合わせると良い。作物が十分に光合成できる光を確保しながら、組織を傷めるほどの過剰な光と熱だけを減らすというバランスは、ある程度日焼けをさせてしまうという失敗をしないと実感できないことでもあるが、そういったことも栽培経験の糧にしていきましょう!
[1]Schrader, L. E., Zhang, J. & Duplaga, W. K. (2001). Two Types of Sunburn in Apple Caused by High Fruit Surface (Peel) Temperature. Plant Health Progress, 2(1). DOI: 10.1094/PHP-2001-1004-01-RS.


















