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30歳で会社員から漁師へ。入舎7カ月で就職した修了生が語る、京都府「海の民学舎」での学びと働き方

30歳で会社員から漁師へ。入舎7カ月で就職した修了生が語る、京都府「海の民学舎」での学びと働き方

漁業に興味はあっても、「どんな漁業があるのか」「求人はどこで探すのか」「未経験からでも働けるのか」など、情報収集の段階でつまずく人は少なくありません。求人先への個別の問い合わせだけでは、仕事内容や地域との相性まではわからず、就業後のミスマッチが生じやすくなります。京都府の「海の民学舎」は漁師を育成するための公的な研修機関。個人の目的に合わせたサポートで、京都の海へ新人漁師を送り出しています。

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多様な漁業を体験し、自分に合う働き方を探せる京都の海

京都府沿岸には、穏やかな内湾域から日本海に開けた外海域まで、変化に富んだ漁場があり、沿岸には豊かな藻場が広がります。特産のズワイガニをはじめ、多様な魚介類にも恵まれています。定置網、底びき網、釣り・はえ縄、二枚貝養殖、素潜りや水視漁法で貝や海藻を捕獲する採介藻漁業など、幅広い漁業が営まれていることも特色です。

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定置網漁業の様子

海の民学舎では、研修を通してさまざまな漁法を実際に体験できます。また、定置網漁業を中心に法人経営の事業体があり、未経験者が「サラリーマン漁師」として就職し、技術を身に付ける道も開かれています。複数の現場を経験し、自分に向いている漁業を見極めるとともに、雇用漁師として働くのか、将来独立を目指すのかといった可能性を具体的に描けることが、京都で学ぶ大きな利点です。

漁師を目指す人を「海の民学舎」が伴走支援

海の民学舎は、京都府や京都府漁業協同組合などが運営に関わる、新たに漁師を目指す人のための公的な研修機関です。

研修期間は、1年目の座学・実習と2年目の就業研修を合わせた2年間が基本で、一定のカリキュラムは整備していますが、一人ひとりが目指す漁師像から逆算して組み立てる、オーダーメイド型の研修が最大の特徴です。雇用型か独立型か、希望する漁法や地域での暮らし、収入面など、本人が重視する条件を踏まえて「漁業就業へのロードマップ」を一緒に描き、必要な技術や知識の習得から、地域との関係づくり、就業先とのマッチングまで支援します。

座学風景

近年は、早期就業を重点的に後押ししています。1年目の前半には、府内で行われている主要な漁法を実際に船に乗って体験し、自分の適性を確かめます。そのうえで、早ければ後半(9月頃)には希望する漁業会社で就業体験(インターンシップ)を行い、雇用に至るケースもあります。事務局が現場の求人情報を把握し、本人の希望と求人条件が合えば、1年以内の就業も可能です。採用後も2年目までは学舎生として支援を受けられます。転職者にとって大きな課題となる無収入期間を短くしながら、自分に合う仕事を探せる仕組みです。

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定置網漁業実習 魚選りの様子

海の民学舎 公式サイトはこちら

30歳で会社員から漁師へ。在学中に雇用就業 修了生インタビュー 石黒佳大(いしぐろ けいた)さん 32歳(取材時) 第10期生

子どもの頃からの夢「漁師」になる!

愛知県出身で、前職は自動車会社の社員でした。小さい頃からの夢は漁師。海釣りが大好きで、休みのたびに島根や和歌山、石川などの海を訪ね歩きました。30歳を前にして「このままだと人生に悔いが残りそうだ」と思い、一度くらい失敗してもいいから憧れの海の仕事に挑戦しようと決めました。

しかし、親も自分もサラリーマン。漁業とのつながりはありません。「どうやったら漁師になれるのか」をインターネットで調べる中で「海の民学舎」など全国に漁業者を育成する学校があることを知りました。実家に何かあれば駆けつけられる距離の石川、福井も候補でしたが、研修内容が充実しており、漁業を基礎から学べる公的教育機関のある京都に決めました。

入舎7カ月で雇用就業。基礎があるから現場がわかった

学舎では定置網やはえ縄など、さまざまな漁法を船上で体験しました。

定置網漁業実習の様子

自分に合う就業先を選び、将来の個人操業を考える材料にもなりました。在学中には海の民学舎のプログラムを通じて、小型船舶操縦士免許(1級・2級)や、フォークリフト、揚貨装置の運転資格なども取得しました。

研修中は収入がなかったため、会社員時代の貯金と、研修の中で繋がりのできた牡蠣養殖事業者でのアルバイトで生活費を賄いました。家賃の安い寮も大きな支えになりました。

4月に入舎し、その年の11月に就職しました。希望していた底びき網船に欠員が出ることになり、漁協を通じて学舎に求人が寄せられたのです。9月から乗船して仕事ぶりを見てもらい、カニ漁が始まる11月に雇用契約を結びました。

底びき網荷下ろし風景

現場では、地区ごとに異なるロープワークを覚え、揺れる船上で網を直すなど、研修とは違う実践的な技術が求められます。それでも基礎を学んでいたので、先輩の指示を理解できました。

網直し練習風景

あとは本人の意欲次第。「ここで仕事をするんだ」という気持ちを示せば、先輩たちも応えてくれます。就職後も修了までは学舎生として在籍し、漁のないときは授業へ参加するなかで、同期とのつながりも深まりました。

10期生の集合写真

冬はカニの底びき網、夏はアワビの潜水漁

学舎を修了して半年足らずの現在、京丹後市の間人(たいざ)漁港を拠点とする底びき網漁業の会社に勤めながら、個人事業として潜水漁も行っています。底びき網の漁期は9月から3月で、メインの収入源はカニです。1回の操業は12時間から、長いときは36時間に及びます。冬の日本海は天候が変わりやすく、海が荒れる前に漁を終えるため、深夜に出港することもあります。会社は法人化されているので給料は月給制で休漁期も支払われ、福利厚生もあり、仕組みは会社員時代と大きく変わりません。

底びき網 カニの選別の様子

2026年5月には京都府漁業協同組合の准組合員資格を取得し、素潜りでサザエやアワビを獲る個人操業を始めました。もともと趣味だったスピアフィッシング(魚突き)の経験を生かせる仕事です。自分の裁量で漁ができ、雇用の安定収入があるうえで、個人操業では働いた分が収入になる。この組み合わせが、仕事のモチベーションになっています。

素潜りでアワビを採っている様子

一網ごとに成果が見える仕事

漁師の魅力は「好きを仕事にできる」こと。サラリーマン時代は自分の仕事がどうお金になるのか見えませんでしたが、今は自分が獲ったものが目の前で成果に変わります。自分の船も持ったので、今後はイカ釣りなどに漁を広げていこうと考えています。

漁師を目指す人に伝えたいのは、「海や魚が好き」という気持ちが何より大事だということ。辛いことや危険もありますが、やる気があれば道は拓けると思います。

趣味の釣りを楽しむ様子

修了後も続くフォロー体制

「私たちは就業をゴールとはせず、修了後も必要に応じた支援を続けています。その一つが経営面のサポートです。帳簿付けの講座をはじめ、青色申告や確定申告に向けた研修を行い、税理士などの専門家に相談できる機会も設けています。独立や副業に必要な経営実務から漁村での暮らしまで継続的に相談に応じます。」
と話すのは、海の民学舎の篠原 義昭さん。石黒さんを始め、多くの入舎者をサポートしてきました。

写真左:第10期 卒業生の石黒 佳大さん 写真右:海の民学舎の篠原 義昭さん

修了生には1人ずつ「チューター(世話人)」がつきます。会社の先輩や親方には直接相談しにくい仕事や私生活の悩みを気軽に話せる存在です。チューターは月に1度、修了生の様子を事務局へ報告し、必要があれば私たちから本人に連絡を取ります。

学舎開設から10年余りがたち、一期生が後輩の師匠になったり、浜のリーダーとして活躍する例も出てきました。修了生と行政、漁協のつながりを保ち、ともに京都の漁業と漁村を元気にしていくことが、海の民学舎の大きな目標です。

海の民学舎が新入舎生を募集中

海の民学舎では、例年7月頃から次年度の入舎生を募集します。入舎生は例年少人数で、多様な漁業を体験して適性を見極めるところから、就業先とのマッチング、修了後の経営や暮らしの相談まで、一人ひとりに合わせて支援します。

ただし、入舎すれば自動的に漁師になれるわけではありません。自ら学び、行動し、漁師になる道を切り開こうとする姿勢が必要です。求めるのは、何より海や魚が好きで、基本的な自己管理ができる方。漁業は朝が早く、船は待ってくれません。学歴や経験は問わず、意欲のある人を、浜は温かく迎えてくれます。

募集要項や応募方法、説明会の日程は、海の民学舎の公式サイトでご確認ください。京都の海で漁師になる、そのはじめの一歩から海の民学舎が伴走します。

※取材当時は第13期生を募集中。

13期生募集要項はこちら

お問い合わせ

「海の民学舎」運営協議会
〒626-0052 京都府宮津市小田宿野1029-3
TEL:0772-25-3030/FAX:0772-25-1532
E-mail:info■uminotamigakusya.jp

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