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新規就農に縛られずのびのび夢を実現 三重県の農家民宿「なかや」(2/3)

新規就農に縛られずのびのび夢を実現 三重県の農家民宿「なかや」

三重県津市美杉町。かつて産業の中心が林業だっただけに、山々には杉がそびえ立ち、美しい風景が見られます。近年、自然を求めて移住してくる人々も増えている美杉町。10年前の2007年に移住を果たした岩田二三男(いわたふみお)さんは、農家民宿「なかや」のオーナーです。会社員を辞めた後に民宿をはじめて、現在に至るまでの話をうかがいました。

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導かれるように美杉町へ

農家民宿

「引き寄せられるようなご縁を感じました。」

岩田さんは「なかや」との出会いをそう笑います。なかやは南北朝時代に伊勢国司となった北畠顕泰(きたばたけあきやす)に従ってやってきた武将の一族の家だったそうです。築約100年の堂々とした日本家屋で、かまどなど昔ながらの古い造りが残っていました。

農家民宿

一目見て「ここが良い」と気に入った岩田さんは、仲介者にお願いして、空家となっていたなかやに体験宿泊をさせてもらいました。

「泊まったときに、この家を代々守ってきた方の想いが建物から感じられました。『この家を守って働けや〜』と言われたような気がします。ほかの家より少々高かったんですが、伊勢本街道筋である立地条件や家の造りに惚れ込みました。そこで、会社を辞めて退職金で買うことにしたのです」。

「田舎に通うのは好きでも、暮らすのは別の話」といった考え方の奥さんは大反対。それでも、「あの家がいい」と繰り返し、最後は半ば強引に家を買ったそうです。

農家民宿として登録し、米作りを開始

農家民宿

岩田さんが「なかや」を買った目的は、農業を営むことではありません。本当にしたいことは「場作り」でした。田舎に都会に住んでいる人がやってきてリフレッシュして帰っていく、人が集まってくつろげる拠点を作りたかったのです。そこで、「なかや」を農家民宿として登録しました。

「農家民宿は、農業の体験をメニューにします。だから農業をはじめないといけない。でも、農業を体験したこともないから、どうしようかと思っていたのです。ですが近所の人に『畑か田んぼか、どっちをやるか』と聞かれ、たまたま道具が手に入ったものですから、土地の人に田んぼを3反貸してもらって稲作を始めました」。

シニア向け農業大学校で、米作りを教わりながら同時進行していきました。いわば泥縄です。耕運機や田植機はなかったので、全部を手作業で試みましたがいざ作業をしてみるとこれは大変な重労働です。見かねた周りの方が機械を貸してくれて「稲作には機械が必要だ」と実感したそうです。

脱穀機は持っていましたが、稲を機械のある家まで運ぶのは大変なので、田んぼまでリヤカーで運びました。しかし、道は平坦ではありません。

「這うように坂を引っ張って大変でした。翌年は自走式の脱穀機を使うことにしました。草取りも大変な作業で最初は手で取っていましたが、考え方を変えました。毎日必死にやらないでも秋になったら枯れます」と、岩田さんは笑います。

農家民宿

その中でも、こだわっているのは、除草剤や化学肥料は使わず米を作ること。子どものためにも、安全でおいしい米作りに力を注いでいます。

農家民宿なので、タイミングが合えば田植えや稲刈りをメニューとして案内します。ですが「メニュー」だけの体験では美杉町全体や田舎の雰囲気を感じづらくなることがわかり、別の体験メニューを行っている町の人たちと、宿泊者を結ぶこともしています。

地元の人からのキツい一言で目からウロコ

農家民宿

「できることから始めればいい」。早々と自分のこだわりを捨てられたのは、地元の人から衝撃的な一言を言われたからでした。

「あんたはいくらがんばっても、村の人にはなれへんのやからな」。

移住先に馴染もうと、頑張っている人にとっては厳しい言葉でした。ところが、岩田さんはこれを聞いて逆に楽になったと言います。

「『あー、そうなんや』って目からウロコが落ちました。『お前みたいないい加減なやり方してたら村の人間とは認めん』ってことだったかもしれないけれど、どうせ村の人になれないのなら、気楽にすればええんやと思ったのです」。

岩田さんは美杉町に来てからの10年を「前半の5年は村の人になろうと一生懸命になっていた時代、後半の5年はなるようにしかならないと楽になった時代」と言います。そして、自分がやりたかった“場作り”に向き合うことにしました。

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