野菜がのびのび育つ3層構造の土
家庭菜園で、よくある誤解
野菜を育てる前に、どうして土を耕すのでしょうか。
土には、固まった部分(固相)と、空気の部分(気相)、水の部分(液相)が混じり合っています。この三相のバランスが良いと、水はけが良く、植物は根を伸ばしやすくなります。また、酸素を必要とする土壌微生物が活動しやすくなるため、堆肥などの有機物の分解が進んで、植物へ養分が供給されるようになります。
一方で固く締まった状態、つまり固相が多いと根が伸び悩みます。そこで固い土をほぐし、土の中に空気をたっぷり含ませるために、野菜を育てる前には土を耕します。
しかし、だからと言ってただひたすらに土を耕しては上手くいきません。細かく耕しすぎると、雨が土に染み込みやすくなり、かえって土が固く締まってしまうからです。「耕さなければいけない!」と思って、丹念に耕しすぎてしまうのは、よくある誤解です。
耕しすぎないことが3層構造の土のコツ
耕し方のポイントは “3層構造” 。植物が根を張る部分(=作土層)を、土の塊の大きさごとに3つの層に分けた立体的な「団粒構造」にすることです。こうすることで、三相のバランスが整えられて、水と空気の通りが良くなります。すると、植物はのびのびと根を伸ばすことができるのです。
耕しの “加減” を変える
では、どのように耕せば野菜づくりに向いた3層構造の土になるのでしょうか。
まず3層は、土の塊の大きさによって “ゴロゴロ層” “コロコロ層” “ナメラカ層” に分かれます。
15~18㎝の作土層のうち、下から5~8cmを大きな塊の “ゴロゴロ層” として、その上の5cmをやや粗い塊の “コロコロ層” 、一番表面は小さな土の塊がほどよく残る “ナメラカ層” にします。
手順は、初めに一番深い部分になるゴロゴロ層を作ります。鍬などを使って、土を粗めに掘り起こします。次に、コロコロ層を作ります。ゴロゴロ層の上に、堆肥をまいて混ぜながら耕します。これにより、土壌微生物が堆肥を分解し、野菜に養分を与えます。最後は表層のナメラカ層です。レーキなどを利用して、5cmくらいを小さな土の塊が残る程度に崩して、ならします。ナメラカ層は、サラサラになり過ぎないように注意しましょう。
冬と春、2度に分けて耕す
家庭菜園で有機栽培に取り組む方もいることでしょう。
有機栽培の場合、野菜を植える2~4週間前までに土を耕し、堆肥をすき込んで、畝の準備を済ませておくことが一般的ですが、ここにも耕すコツが。
土づくりに必須な微生物は、冬と春とで繁殖する種類が異なります。冬は「発酵型微生物」の活動により、地力を高める腐植が増えます。春には「分解型微生物」が活動し、有機物や腐植の分解が進み、養分がたくさん作り出されます。冬と春に1回ずつ耕すことで、それぞれの微生物の活動をより活性化させることができ、野菜がのびのび育つ肥沃な畑となるのです。
~番外編~ 肥料いらずの落ち葉床で、地力ある畑に
肥沃な畑を一から作る方法として、「落ち葉床」を紹介します。「落ち葉床」とは有機物を畝の下に埋める伝承農法の一つです。畝をつくる場所に深さ約40㎝の溝を掘り、落ち葉やススキの枯れ草などを埋めることで、これらがゆっくりと分解され、一度つくると4~5年は無肥料で野菜を育てられるとも言われます。また、複数の種類の落ち葉を埋めることで多様性のある土となり、ミネラルが豊富で野菜の育ちが良くなります。ただし、根菜類にとっては栄養過多となり、生育不良を招く恐れがあるため、作ってから少し経った落ち葉床を使うのをお勧めします。
落ち葉床を作る際には、作土層のさらに下にある、固く締まった耕盤層と下層土を壊します。耕盤層以下の層はショベルを挿して起こしていくのがコツ。掘り起こし、落ち葉を埋めた後、ゴロゴロの塊のままで戻すため、ショベルなら塊を崩さずにすみます。
さらに土づくりを極める
こうした土づくりを、鍬で行うには相当の手間がかかります。そこで、より手軽に作りたい方には耕うん機がお勧めです。
バイクやクルマメーカーとして有名なHondaは、家庭菜園に最適な耕うん機も開発しています。Honda耕うん機のWebサイトでは、本格的な土づくりを支援する「畑の土を極める」が連載中。耕うん機を使った作業の手順や、野菜を上手に育てるためのポイントを、イラストを使いながら分かりやすく解説しています。家庭菜園の経験の有無や年数を問わず、幅広い層でためになる情報を紹介し、野菜づくりを楽しむ方を応援しています。
今年の野菜作りは耕うん機を使って、土づくりからこだわってみませんか。
【関連リンク】
(写真・イラストは以下より引用しました)
「野菜だより」(学研プラス刊)
2018年9月号 『第1回 立体構造の土をつくる』
2018年11月号 『第2回 落ち葉床づくり』
2019年1月号 『第3回 冬耕起と春耕起で土づくり』
監修/木嶋利男
構成・原稿/たねまき舎
写真/鈴木忍
イラスト/小堀文彦