農業に資格は必要?
農業を営むために資格の取得は必須ではありません。資格を持っていなくても農業を始めることは可能です。
しかし、資格を持っておくことで農業に必要な視点を身につけることができます。また、周囲からの信頼を得られ、仕事での幅の広がりに生かせるケースも少なくありません。これから農業を営んだり、農業に携わったりしたいと考えている人は、ぜひ資格の取得を検討してみてください。
農家資格って?
なお、農家として登録するための「農家資格」は存在しており、農地を買ったり借りたりする場合に必要となります。農家資格を得るためには市町村の農地基本台帳に記載があることが前提条件です。はじめて農業を行う場合には、これらの“手続き上の農家資格”について知っておく必要があります。手続きの詳細は地方自治体によって異なるため、注意が必要です。
【基礎・実務編】農業におすすめの資格8選
まずは、農業全体や実務に役立つ資格をご紹介します。農業を一から始めたい人はぜひ確認してください。
1. 普通自動車免許
資格名 | 合格率 |
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普通自動車免許 | 70~75% |
野菜などを運搬する際に必要なトラックやトラクターの運転免許は必要不可欠です。特に、農業の現場で使用される車はマニュアル車が多い傾向にあります。オートマ車の免許しか持っていない人は、まずマニュアル車の運転免許を取得しましょう。
また、一般的な運転免許の他にも、以下の免許を持っていると農業で役立ちます。
- 小型特殊自動車免許
- 大型特殊自動車運転免許(農耕車限定)
- けん引免許
小型特殊自動車免許は小型のトラクターやコンバインなどの農耕用車両を公道で運転する際に必要な免許です。原付免許と同様、試験のみで取得できます。普通免許を持っている人は、小型特殊免許で運転できる車両はすべて運転できるため、新たに取得する必要はありません。
大型特殊自動車運転免許(農耕車限定)は大型のトラクターで公道を走る際に必要となる免許です。他にも大型の農耕用車両の運転が必要な場合には取得が必須ですので、確認しましょう。
けん引免許とは、車両総重量が750キロを超える他の車をけん引する際に必要な免許です。
必要となるであろう免許を理解し、事前に取得しておきましょう。
2. 日本農業技術検定
資格名 | 合格率※2020年度 |
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日本農業技術検定 | 3級 66.0% 2級 20.9% 1級 7.3% |
日本農業技術検定とは、一般社団法人全国農業会議所が実施する検定試験です。農業界の人材育成・確保を目的としています。日本農業技術検定には1級(実践レベル)・2級(基本レベル)・3級(入門レベル)の3つのレベルが存在し、入門レベルは学科試験のみ、その他2種類は学科試験と実技試験で構成されます。
農業法人などの農業関連企業等へ就職を希望する場合には自己アピールにも活用できる資格です。農業を体系的に学びたい場合は取得を検討してみるといいでしょう。
3. 日本農業検定
資格名 | 合格率※2020年度 |
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日本農業検定 | 3級 83% 2級 62% 1級 38% |
日本農業検定は、一般社団法人全国農協観光協会が開催する検定試験で、農検とも呼ばれています。「栽培・農業全般・環境・食の重点4分野の基礎知識の習得」を促進する目的で実施され、1級・2級・3級の3つのレベルが用意されています。
農業界への就職を検討している人から小学生まで幅広い層が受験できる資格であるため、受験ハードルは比較的低いと言えるでしょう。農業への理解を深めたいと考えている人は、ぜひ受験を検討してみてください。
4. 農薬管理指導士
資格名 | 合格率※2020年度 |
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農薬管理指導士 | 96.7%(東京都) |
農薬管理指導士とは「農薬管理指導士養成研修」を受講し、試験に通過することで都道府県知事より認定される農薬取扱者の資格です。農薬の安全性を確保するために、農薬の取り扱い管理に関して正しい知識を持った者を指し、指導的立場に立つためにも必要となります。
有効期間は都道府県によって異なりますが、ほとんどは3年間で更新には研修があり、試験があるケースもあります。農薬を使用した農業に携わる場合は、持っていて損のない資格だと言えるでしょう。
5. 農業機械士
資格名 | 合格率 |
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農業機械士 | ─ |
農業機械士とは養成研修を受講し、農業機械士技能検定試験に合格することで得られる資格です。農業で活用するトラクターやロータリーなどの農業機械を適切に取り扱うために必要な知識・技術を習得できます。
農業機械は取り扱いを一歩間違えると大けがにつながりかねません。農業に携わる中で、農業機械を使用する場合は取得を目指すといいでしょう。
6. 農業簿記検定
資格名 | 合格率※2020年度 |
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農業簿記検定 | 3級 65.8% 2級 43.8% 1級 28.2% |
農業簿記検定とは、一般財団法人日本ビジネス技能検定協会が、一般社団法人全国農業経営コンサルタント協会による監修のもと実施する資格試験です。農業経営において必ず知っておくべき農業簿記のスキルを習得できる資格で、1級・2級・3級の3つのレベルが用意されています。
個人事業として農業を始める場合や法人経営を行う場合など、いずれにおいても経理のスキルは必要です。農業を営む立場を目指している人は、学んでおくと役立つでしょう。
7. フォークリフト運転免許
資格名 | 合格率 |
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フォークリフト運転技能講習修了証 | 98% |
フォークリフトを扱うには、フォークリフト運転免許(正式名称:フォークリフト運転技能講習修了証)を保有する必要があります。
規模が大きい農家・農業法人では、フォークリフトを使う場面が多くあります。たとえば、以下のような業務です。
- 作物の荷下ろし
- 肥料の運搬
- 倉庫内の整理など
フォークリフト運転免許は、学科から実技、試験まで含めておおよそ4〜5日ほどで取得可能です。フォークリフトは出荷先や取引先でも運転することもあるので、さまざまな場面で役立つでしょう。
8. 中型自動車運転免許
資格名 | 合格率 |
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中型自動車第一種運転免許 | 97.9% |
農業では2tトラックや4tトラック、ウィングトラックといった車両を使って、収穫物から資材、トラクターなどまで運搬します。これらの車両を運転するためには、中型自動車運転免許が必要です。たとえば、コンバインのような自走が難しい機械を運べることも、大きなメリットになります。そのため、トラックを運転できるかは、業務効率に影響してくるのです。軽トラックに乗るイメージが強い農業ですが、さまざまな車両を運転できるスキルがあるとより貢献できます。
中型自動車運転免許の取得条件は、以下のようになっています。
- 満19歳以上
- 普通・準中型・大型特殊のいずれかを保有していること
- 1年以上の運転経歴があること
- 視力は両目で0.8以上かつ、片目でそれぞれ0.5以上あること
- 深視力の検査をパスすること(※)
(※深視力の検査とは、物体との距離感を正確に判断できるかを確認する検査)
上記の条件を満たした上で、実技と学科の講習を受けて、検定に合格すれば取得できます。
【スキルアップ編】農業におすすめの資格5選
ここからは、農業の域を超え、スキルアップに役立つ資格をご紹介します。特に、農家と消費者の橋渡しとして活躍したい人や、農業に携わる中でもう一歩上へ進みたい人は、ぜひチェックしてみてください。
1. 産業用マルチローターオペレーター技能認定
資格名 | 合格率 |
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産業用マルチローターオペレーター技能認定 | ─ |
産業用マルチローターオペレーター技能認定とは、産業用にドローンを使用する際に必要となる資格です。一般社団法人農林水産航空協会によって運営されており、指定の施設でオペレーター教習を受け修了が認められると認定証が交付されます。
近年では農薬散布業務などをドローン(マルチローター)で行うケースも少なくありません。この技能認定は、ドローンを農薬散布などの産業で使用するために安全性を確保し適正に利用する目的で実施されています。
今後、ドローンを活用して効率的に業務を進めたい場合に役立つ資格であるため、取得しておいて損はないでしょう。
2. ボイラー技士
資格名 | 合格率※2020年度 |
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ボイラー技士 | 二級 58.4% 一級 50.9% 特級 29.1% |
ボイラー技士とは、ボイラーの操作・点検を行う際に必要となる国家資格です。一定の条件を満たし、厚生労働大臣が指定する試験機関の試験に合格することで、免許を受けることができます。農業の場合は、ボイラーを利用したハウス栽培を行う際に必要となります。ボイラー技士には3つの階級がありますが、ボイラー設備ではほとんどが重油を扱うことになるので、その場合は危険物取扱者(乙種第4類)の資格取得も併せて必要です。
ボイラーの規模や区分によっては資格の要不要が異なりますが、ハウス栽培に携わる場合は、取得しておくといいでしょう。
3. 野菜栽培士
資格名 | 合格率 |
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野菜栽培士 | 非公開 |
野菜栽培士とは日本インストラクター技術協会が認定する野菜栽培に関する資格です。季節の野菜の育て方や野菜に含まれる栄養素、野菜に合う食材などに関する知識を習得します。
知識を実際の栽培や販売に役立てるほか、講師活動などを始めることもできます。在宅で受験することができるので、野菜に関する知識を深めたい人は、ぜひチャレンジしてみてください。
4. 野菜ソムリエ
資格名 | 合格率 |
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野菜ソムリエ | 約85% |
野菜ソムリエは一般社団法人日本野菜ソムリエ協会が認定する資格です。養成講座を受講し試験に合格することで資格が得られます。野菜に関するさまざまな知識を身につけられると人気の資格で、芸能人による取得でも話題となっています。
野菜・果物の目利き、栄養、素材に合わせた調理法など、食生活で取り入れるべき野菜・果物の知識を習得できます。日常生活にも役立つ資格であることはもちろん、料理教室やセミナー講師、食育、レシピ開発、青果販売などの現場で活躍が可能です。農家と食卓の橋渡しとして活用できる資格となっています。
5. 食品衛生責任者
資格名 | 合格率 |
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食品衛生責任者 | 受講により取得可能 |
食品衛生責任者は、食品を加工したり販売したりする際に必要な資格です。収穫した作物を加工品にして販売したい、農園やキッチンカーなどで販売したいという場合には取得が必要なので、6次産業化を目指す人は押さえておきたい資格の一つです。
食品衛生責任者は、1日で取得できる資格であり、講習の流れは以下のようになっています。
- 食品衛生学
- 公衆衛生学
- 食品衛生法
- テスト
受講方法では、オフラインとオンラインの2通りが用意されています。生活スタイルにあわせて受講できるため、忙しい人でも取得しやすいでしょう。
安全に食品を加工・販売するには、徹底した衛生管理が必要です。資格を取得するだけでなく、知識を身につけて厳密に実施しましょう。
資格取得の注意点
資格を取得する際は本当に必要な資格かどうかを見極める必要があります。今回ご紹介した資格は農業で役立つ資格ですが、就職する場合は希望する企業によって必要な資格とそうでない資格が存在します。
資格の取得には時間やお金などのコストがかかります。自己研さんとしての資格取得であれば問題ありませんが、農業の経営や農業界への就職を考えている場合は、本当に必要な資格かを見極めて取得しましょう。
まとめ
農業におすすめの資格をご紹介しました。私たちがおいしい作物を食べられているのは農業のおかげです。農業の需要は今後も失われることがないと言えます。農業界への参入を考えている人は、農業に関わる資格を習得し、農業への理解を深めてみてはいかがでしょうか。