春の家庭菜園を成功させるポイント
春は家庭菜園を始めるには最適なシーズンです。
自分の手で、好きな野菜を育てる楽しさは、実際に育てた人にしかわからない喜びだといえます。家庭菜園を成功させるためには、次のポイントに注意して栽培していきましょう。
・害虫対策 ・雑草対策 ・寒さ対策 ・トウ立ちに注意 ・コンパニオンプランツを一緒に植える ・接ぎ木苗を使う |
以上の六つのポイントについて、それぞれ解説していきます。
ぜひ参考にしてください。
害虫対策
春になると活動的になるのは、人間だけではありません。
家庭菜園の天敵である、害虫たちも活発に活動を始めます。
春の圃場に発生する害虫で代表的なものは、次の虫たちです。
・アブラムシ
・カメムシ
・ヨトウムシ類
・アザミウマ
・アオムシ
これらの害虫たちは、どれだけ気を使っていても発生するものではありますが、害虫が嫌う環境を作ることである程度予防することが可能です。
害虫は株間が狭く、葉っぱ同士が混み合う風通しの悪い環境が大好きです。また、土壌が常に湿っていたり、土壌中の栄養バランスが偏ったりしていると、植物の元気がなくなり害虫が発生しやすくなります。
害虫の発生を抑えるためには、株間をしっかりとって、適宜剪定(せんてい)や切り戻しを行い、葉っぱが茂りすぎないようにしましょう。また土の水はけを良くするために土壌改良材や堆肥(たいひ)をしっかり入れて、健康的な土壌づくりを行うようにしてください。
雑草対策
栄養状態が良く、野菜の生育に適した土壌は雑草にとっても天国です。
雑草を放置していると、野菜の生育に必要な栄養を吸い取られたり、病害虫の温床になったりしてしまうおそれも。
雑草の背が低いうちは、クワや耕運機などでそのまますき込んでしまって構いません。
背の高い雑草は、根っこごとむしり取るか、カマや草刈り機で根元を切って、根っこの部分はすき込んでしまいましょう。
また、ある程度の雑草は残しておくという考え方もあります。背が低く、管理しやすい雑草をあえて残しておくことで、大きな雑草が生えにくくなり、結果的に管理がしやすくなるというものです。
雑草を根こそぎ取ってしまうか、ある程度残しておくか、それぞれの圃場にあったやり方を選びましょう。
寒さ対策
春先の家庭菜園で最も恐ろしいのは、寒の戻りによる霜の発生です。
霜が発生するのは3月ごろが多く、この頃はまだ野菜も小さいので、霜に当てられるとダメになってしまうおそれがあります。
対策として、耐寒性のある品種を選んで育てるようにするか、マルチングや敷きわら、プラスチックカップで保温すると良いでしょう。
鳥害や害虫対策も兼ねて、トンネルがけをしても良いですね。
トウ立ちに注意
栽培中はトウ立ちにも注意が必要です。
トウ立ちしてしまうと食味が悪くなるので、収穫はなるべく早く行いましょう。
特にトウ立ちしやすいのは、葉物野菜全般と大根などの根菜類。
トウが立つと、作物から一本長い茎が生えてくるのですぐにわかります。
住宅街での家庭菜園で注意したいのは、街灯や近隣施設から漏れる光。
街灯によって夜の間も明るい状態だと、すぐにトウ立ちしてしまうので、栽培場所に注意するか、他の場所より早く収穫するなどして対策しましょう。
コンパニオンプランツを一緒に植える
コンパニオンプランツを一緒に植えると、さまざまなメリットがあります。
まず、狭いスペースでも効率的に複数の種類の作物を育てることが可能です。
特にプランターを使った家庭菜園において大きな利点となるでしょう。
さらに、コンパニオンプランツは互いの成長を助け合い、害虫や病害からの防御力を高める効果があります。
この相乗効果により、作物はより健康に育ち、その結果として食味も良くなるといわれています。
このように、コンパニオンプランツを上手に活用することで、家庭菜園の生産性と品質の両方を向上させることができるのです。
接ぎ木苗を使う
トマト・ナス・ピーマンなどの代表的な夏野菜は、接ぎ木苗を使って栽培するほうが無難です。
これらの三つの野菜はいずれもナス科野菜で、連作を嫌います。去年はトマトで今年はナスだから大丈夫と思っても、同じナス科なので連作障害が起きてしまう可能性もあります。接ぎ木苗を使うほうが良いでしょう。
接ぎ木苗は、耐病性のあるものが多いので、病気の対策にもなります。
トマト・ミニトマト
トマトは中南米原産のナス科の野菜です。
ビタミンCやカロテン、リコピンなど体に優しい成分を多く含んでいます。
大玉・中玉・小玉・ミニトマトなどさまざまなサイズや色のものがあるので、好きなものを栽培すると良いでしょう。
栽培難易度 | ★★★☆☆ |
おすすめ栽培方法 | 苗植え |
種まき時期 | 3月~5月 |
植え付け時期 | 4月下旬~6月下旬 |
収穫時期 | 6月末~9月末 |
収穫回数 | 栽培期間中は結実したら何度でも |
おすすめ品種ピックアップ
◯ホーム桃太郎トマト
トマト栽培でよくある病気に強く、着果も良いので家庭菜園でも育てやすい品種。
果重は200~210g。大玉トマトを作ってみたいという人におすすめです。
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栽培時の注意点
トマトを栽培する際は、水の管理に特に注意しましょう。
甘くておいしいトマトを作るには、なるべく水を控えることが重要です。
基本的に自然降雨に任せ、土がパサパサに乾いてしまうようであれば、涼しい時間帯に優しく水やりしましょう。
また、大玉トマトなど裂果しやすい品種は、果実に雨水が当たったり、一気に水を吸い上げたりすると割れてしまいます。トマト栽培で使える家庭用の小さなアーチ状ハウスがありますので、そちらを併せて使っても良いでしょう。
プランター栽培時のポイント
プランターで栽培する際は、プランターの大きさに注意しましょう。
トマトは成長するとかなり大きくなる上、実をつけると重さも相当なものになります。
小さなプランターでは育ちにくいですし、安定も悪くなってしまいます。
底が深く、幅の広い大きめのプランターを使って栽培しましょう。
また、プランターでは限られた土で栽培するので、水切れや肥料切れにも注意です。
地植えの場合は水やり不要ですが、プランターの場合は土が乾いたら水やりをしなくてはいけません。
おすすめコンパニオンプランツ
◯バジル
バジルはトマトの近くに植えることで、虫を寄せ付けない効果があります。これはバジル独特の香りによるもので、トマトにアブラムシなどの害虫が付くのを防ぎます。栽培の際は、トマトの株間を50センチ以上取って、バジルを株間に植えましょう。
◯マリーゴールド
マリーゴールドはセンチュウの被害に遭いやすいトマトにとって、優れたコンパニオンプランツです。マリーゴールドの根にはセンチュウを死滅させる効果があり、トマトの被害を防ぎます。また、その独特な香りにより害虫を防ぐ効果もあります。栽培の際は、トマトとの株間を25〜30センチ取って植えましょう。
ナス
ナスはナス科の野菜で、インド東部が原産です。
うまく栽培すると初夏から秋あたりまで長期間収穫を楽しむことができます。
栽培難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめ栽培方法 | 苗植え |
種まき時期 | 2月 |
植え付け時期 | 4月下旬~5月上旬 |
収穫時期 | 6月~10月 |
収穫回数 | 栽培中は結実したら何度でも |
おすすめ品種ピックアップ
◯千両二号茄子
草勢が強くスタミナがあり、果実の肥大も良いナスです。
春先から秋ごろまでの長期栽培でも、安定的に収穫を続けることができる品種です。
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栽培時の注意点
ナスは耐暑性もあり、育てやすい夏野菜ですが、いくつか注意したいポイントがあります。
まず、日当たりのいい場所で育てること。ナスは日差しをたっぷり浴びて育つので、日光がよく当たる場所で栽培しましょう。
次に、水やりをしっかりすること。ナスが肥大化するには、水分が必要不可欠です。水切れを起こさないようにしましょう。
そして、適宜追肥をすること。ナスは長期間畑で実を作るため、追肥をしないと株が弱ってしまいます。品種や株の草勢によって追肥のタイミングは異なるので、よく調べて追肥しましょう。
プランター栽培時のポイント
ナスをプランターで栽培する際は、次の点に注意しましょう。
あまりイメージしにくいですが、ナスは実をつける頃になると、かなり大きくなります。背丈はもちろん、幅も広がるので、栽培スペースにはあらかじめ余裕を持っておきましょう。
またプランターでは地植え以上に水切れと肥料切れに注意してください。
株の元気がなくなっているようであれば、水のかわりに液体肥料を与えても良いでしょう。
おすすめコンパニオンプランツ
◯バジル
バジルは多くの野菜と相性が良く、ナスとの組み合わせも例外ではありません。バジルの強い香りは害虫を遠ざける効果があり、特にアブラムシなどの害虫からナスを守るのに役立ちます。
◯マリーゴールド
マリーゴールドは土壌中のセンチュウを減らす効果があり、ナスの健康的な成長をサポートします。また、その鮮やかな花は園芸的な魅力も加えてくれます。
◯ソルゴー
ソルゴーは背丈が高く、ナスを囲うようにして植え付けると強風を防ぐ効果があります。
また、ソルゴーにつくアブラムシを食べに天敵昆虫が集まってきて、ナスにつくアブラムシも食べてくれるといわれています。
ピーマン
ピーマンは熱帯アメリカ原産のナス科野菜。実は唐辛子の仲間で、カロテンやビタミンCを多く含む、体に良い野菜です。原産地が暑い場所ということもあり、日本の暑い夏でも耐えてくれる強い野菜ですが、栽培難易度はかなり高めです。
栽培難易度 | ★★★☆☆ |
おすすめ栽培方法 | 苗植え |
種まき時期 | 3月~4月(種からの栽培はかなり難しい) |
植え付け時期 | 5月~6月 |
収穫時期 | 6月~10月 |
収穫回数 | 栽培中は結実したら何度でも |
おすすめ品種ピックアップ
◯京まつりピーマン
雨よけハウス栽培などの高温条件下でも果色が淡くなりにくく、高温・低温条件下でも安定して着果するのが特徴。変形果も少なく、秀品率が高い点も嬉しいポイントです。
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栽培時の注意点
ピーマンはとても耐暑性が高く、夏の暑さについては心配いらないでしょう。
一方で水が少ないと花がつきにくかったり、病気が出やすくなったりするので、保水性・排水性の良い土壌を作るように心がけましょう。
また、強い日差しを浴びすぎてしまうとピーマンの果実が日焼けして白くなってしまうことがあります。
早めに収穫する、あるいは鉢植えやプランター栽培の場合は日中の一番日差しが強い時間帯は、木陰に移すなどの対策をしましょう。
プランター栽培時のポイント
プランター栽培では直径30センチ、深さ30センチ以上の深型タイプのプランターを使用しましょう。
小さいプランターではうまく育ちません。
夏の暑い時期の栽培になるので、水の管理や設置場所には注意しましょう。ピーマンは暑さに強いですが、コンクリートやアスファルトの照り返しを浴び続けると、さすがに弱ってしまいます。できれば土の上や、芝生の上などにプランターを置くようにしましょう。
おすすめコンパニオンプランツ
◯バジル
バジルは強い香りでアブラムシなどの害虫を遠ざける効果があります。また、バジル自体も料理で広く使われるため、一緒に育てることでキッチンガーデンとしての利用価値が高まります。
キュウリ
キュウリはインド北西部原産のウリ科野菜です。果実の大半が水分でできており、夏の定番野菜の一つです。
収穫シーズンになるとどんどん実をつけ、一気に肥大化します。株に果実をつけたままにしていると、なり疲れが起きてしまうので、ガンガン収穫していきましょう。
栽培難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめ栽培方法 | 苗植え |
種まき時期 | 4月~5月 |
植え付け時期 | 5月~6月 |
収穫時期 | 6月~10月 |
収穫回数 | 栽培中は結実したら何度でも |
おすすめ品種ピックアップ
◯VR夏すずみ胡瓜
べと病やうどんこ病に強く、中程度のウイルス病(ZYMV)耐性病をもつ品種。ツルもちが良く、栽培後半まで秀品率が高いため、家庭菜園に特におすすめです。
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栽培時の注意点
キュウリはべと病・うどんこ病が必ずと言っていいほど発生するので、耐病性のある接ぎ木苗を使っても良いでしょう。
耐病性品種でも病気は発生することがあるので、農薬による予防・防除は必要不可欠です。
また栽培期間は初夏から秋頃と長めですが、途中で病気やなり疲れで果実ができなくなることもあります。その場合、早い時期であれば、新しい苗を植え付けて更新しても良いでしょう。
プランター栽培時のポイント
キュウリのプランター栽培における一番大切なポイントは、水切れを起こさないこと。
キュウリは果実の90%以上が水分でできています。つまり、水がないとそもそも肥大化しないということです。
プランター栽培は地植え栽培と違って、水がすぐに抜けていってしまいます。一日2回、朝夕の涼しい時間帯にたっぷりと水をやるようにしましょう。
また、キュウリは脇芽がたくさん伸びてきますが、無造作に伸ばさないようにしっかり脇芽かきをしてください。
おすすめコンパニオンプランツ
◯ネギ類(ニラ、ネギ)
ネギ類は強い香りで害虫を遠ざけ、特にアブラムシやハダニなどの害虫からキュウリを守るのに役立ちます。
◯長芋
長芋は深くまで根を張るため、土壌を深く耕す効果があります。これにより、キュウリの根がより深くまで伸びやすくなり、栄養や水分の吸収が改善されるといわれています。
枝豆(大豆)
夏の定番野菜である枝豆。枝豆はマメ科の野菜で、中国が原産です。
タンパク質やビタミンB1・B2が豊富で、畑のお肉といわれるほど栄養満点です。
栽培難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめ栽培方法 | 種まき |
種まき時期 | 4月~6月上旬 |
植え付け時期 | 植え付けもできますが、大豆類は移植を嫌うので、種から栽培しましょう |
収穫時期 | 6~7月、9~10月 |
収穫回数 | 1回 |
おすすめ品種ピックアップ
〇ビアフレンド枝豆
さやつきがよく、濃緑色のふっくらとした大さやが特徴。3粒さや率が高く、食味がよい品種です。
栽培時の注意点
枝豆は、害虫対策と水管理が成功の鍵を握ります。
できれば種まきと一緒にトンネルがけをして、害虫が外から入ってこない環境を作りましょう。
株が大きくなってトンネルが窮屈になってきたら、トンネルを外します。その後は害虫・鳥害に注意して栽培していきます。
また、発芽までは毎日水やりを行い、生育中は土の表面がかわいたらかん水します。開花後は、また毎日水やりを行って豆が大きくなるのを助けましょう。
プランター栽培時のポイント
枝豆のプランター栽培でも、水の管理には要注意です。
枝豆は土壌中の浅い場所に根を広げるので、乾燥にとても弱い野菜です。
プランターでは土が乾きやすいので、水やりは忘れずに行いましょう。
また、枝豆は日光を好む植物ですので、日当たりの良い場所にプランターを置くことが重要です。1日に最低6時間以上の直射日光を受けられる場所が理想的です。
おすすめコンパニオンプランツ
◯ナス
枝豆とナスは互いに干渉しないため、共存が可能です。枝豆の根粒菌によって土中の窒素が補給され、ナスの成長を助けます。
◯サツマイモ
枝豆とサツマイモは根の張り方が異なるため、互いの成長を妨げません。また、枝豆が土中に窒素を固定することでサツマイモの成長をサポートします。
◯ミント(鉢植え)
ミントの強い香りが害虫を退避させる効果があります。鉢植えであれば、枝豆の成長を妨げることなく害虫対策が可能です。
◯トウモロコシ
トウモロコシと枝豆は相性が抜群で、枝豆の共生菌が生み出すリン酸や微量ミネラル成分をトウモロコシが吸収し、生育が良くなります。また、お互いが相手に発生しやすい害虫に対する益虫のすみかとなり、害虫が寄りにくくなる効果もあります。
ニンジン
ニンジンはカロテン・ビタミン・食物繊維が多く、胃腸の働きを助けるほか抗酸化作用のある野菜です。
種が小さく、慣れないうちは栽培が難しい野菜なので、多めに種をまいて間引いていくことがポイントになります。
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
おすすめ栽培方法 | 種まき |
種まき時期 | 3月~4月(春まき) 6月~7月(初夏まき) 7月~8月(夏まき) |
収穫時期 | 6月~8月(春まき収穫) 9月~10月(初夏まき収穫) 10月~3月(夏まき収穫) |
収穫回数 | 1回 |
おすすめ品種ピックアップ
◯向陽二号人参
春と夏のどちらの作付けにも使える品種です。
土壌の質を選ばず栽培できるので、大規模な土壌改良の難しい家庭菜園でもピッタリです。
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栽培時の注意点
ニンジンは種が小さく、雨で流されてしまったり、腐ってしまったりすることも。また、鳥などに食べられてしまうこともあるので、最初のうちは発芽させるのも一苦労でしょう。
ニンジンを発芽させるコツは、多めに種をまいて、母数を増やすことにつきます。
多めに発芽した場合は、ニンジンが小さいうちに間引いて株間を広げましょう。間引いたニンジンは間引き菜として食べても良いですし、ペットフードとしても活用できます。
発芽後も、サイズが小さいうちは鳥害に注意。寒冷紗(かんれいしゃ)や鳥よけを設置して、被害を減らすように心がけましょう。
プランター栽培時のポイント
ニンジンは深く根を張るため、深さが十分あるプランターを選ぶことが重要です。三寸~五寸ニンジンなら深さ30センチ程度、ミニニンジンなら深さ15センチ程度のプランターが適しています。
種まきでは、大きくて太った種を選び、深さ1センチほどの溝を作り、5センチ間隔で種をまきます。土は薄くかけ、手で軽く押さえてからたっぷり水を与えます。
発芽までは毎日、発芽後は土が乾き始めたらたっぷりと水を与えましょう。
おすすめコンパニオンプランツ
◯レタス類、エダマメ
レタスやエダマメとニンジンを近くに植えることで、互いの成長を妨げることなく、健康的に育つことが期待できます。特にエダマメはマメ科に属し、土壌中の窒素を固定する能力があるため、ニンジンの成長に必要な窒素を供給する助けとなります。
ネギ
ネギはユリ科の野菜で、中国が原産です。
ネギは特有の辛みと風味を持ち、日本料理に欠かせない野菜です。消化液の分泌を促し、便秘や整腸に効果があります。根深ネギ(白ネギ)と葉ネギに大別され、栄養価は葉ネギの方が高いです。
根深ネギは春まきと秋まきがあり、葉ネギは周年栽培が可能です。
本記事では根深ネギを関東で栽培する場合について取り上げます。
なお、ネギは20℃前後が生育適温であり、30℃を超えると肥大や成長が衰えます。
寒さには強く、マイナス8℃まで耐えますが、湿度には弱いのが特徴です。
栽培難易度 | ★★★☆☆ |
おすすめ栽培方法 | 苗植え |
種まき時期 | 3月(春まき) 9月~10月(秋まき) |
植え付け時期 | 7月(春まき) 4月(秋まき) |
収穫時期 | 12月~2月(春まき) 9月~11月(秋まき) |
収穫回数 | 1回 |
おすすめの品種
◯ホワイトツリー葱
耐暑性が高く、夏の暑い時期の栽培でも成長しやすい品種です。
草姿は立性で草丈は90cm前後あり、風による倒伏の心配は少ないでしょう。
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栽培時の注意点
ネギは水はけの良い土地を好む野菜です。植え付け直後はかん水が必要ですが、栽培中は自然降雨のみで十分育ちます。逆に何度も水やりをしてしまうと根腐れしてしまうこともあるので、水のやり過ぎには注意です。
土寄せは白ネギ栽培において、最も大切な管理作業といっても良いでしょう。白ネギの白い部分を大きくするためには、土でしっかり日光を遮らなくてはなりません。
土寄せはネギの成長に合わせて、4~5回以上行います。基本的には追肥とセットで行います。土寄せは少量の土を複数回に分けて盛っていくのがポイント。一気に土を寄せてしまうと株の元気がなくなってしまうこともあるので注意が必要です。
プランター栽培時のポイント
白ネギはプランター栽培には不向きです。
プランターでネギを作りたいときは、万能ネギなどの青ネギにしましょう。
プランターは深さ20センチ以上あるもので、横長のものがおすすめ。鉢植えでも大丈夫です。培養土は市販の野菜用培養土を使いましょう。肥料は小袋サイズのネギ用肥料やボカシ肥が便利です。
ネギの種は乾燥すると発芽しません。毎日たっぷりと水やりをして、常に土が適度に湿った状態になるよう注意しましょう。
露地栽培と違って、プランター栽培では発芽後も継続して水やりを行います。土の表面が乾いたら、朝夕の涼しい時間帯に軽く水やりを行ってください。
おすすめコンパニオンプランツ
◯ニンジン
ニンジンがネギに付くタネバエ・タマネギバエを遠ざけます。
◯ホウレンソウ
互いの害虫を遠ざけ合い、生育を助けます。
◯キュウリ
ネギ類の害虫を遠ざけます。
ネギ類がキュウリを含むウリ科作物の害虫を遠ざけ、病気を防ぐ効果があります。
◯トマト
ネギ類の害虫を遠ざけます。
ネギ類がトマトを含むナス科野菜の害虫を遠ざけ、青枯病・イチョウ病・かいよう病・立枯病・根腐イチョウ病・半身イチョウ病などの病気を抑える効果があります。
カボチャ
カボチャはウリ科の野菜で、南アメリカ原産です。
栄養価が高く、特にビタミンAとなるカロテンが豊富に含まれています。
カボチャには日本種、西洋種、ペポ種の3種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
日本種は粘質の果肉を持ち、地方品種が多くあります。西洋種は粉質の肉質を持ち、果皮の色には黒緑色、白皮、赤皮などがあります。ペポ種には若どり用のツルなしカボチャや、色とりどりの外観を持つものがあります。
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
おすすめ栽培方法 | 種まき |
種まき時期 | 3月下旬~5月上旬 |
植え付け時期 | 5月~6月上旬 |
収穫時期 | 7月~9月 |
収穫回数 | 1回 |
おすすめの品種
◯グラッセ南瓜
果実の重さが約1.7~1.9kgとなり、着果性と果実の肥大力が優れているため、多収が期待できます。このカボチャは特許を取得したうどんこ病に対する耐病性を持ち、そのため栽培性が向上しており、減農薬栽培や省力栽培が可能です。
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栽培時の注意点
カボチャは比較的病害虫に強く、初心者でも栽培しやすい野菜ですが、それでも病害虫のリスクは存在します。また、カボチャはツルが広がるため、栽培には広い面積が必要です。肥料分が多い土地で栽培すると、ツルや葉ばかりが育つ「つるボケ」を引き起こす可能性があるため、元肥は控えめにすることが望ましいです。
またカボチャは生育が旺盛なため、間引きや摘心、芯止めなどの栽培管理が欠かせません。これらの管理を怠ると、葉が茂りすぎたり、果実が腐ったり奇形になったりするなどのリスクがあります。
プランター栽培時のポイント
カボチャは根張りが広い野菜なので、栽培には大きめのプランターが必要です。十分なスペースがないと、根が窮屈になり、健康な成長が妨げられる可能性があります。また、カボチャは日光をたくさん必要とするため、プランターを日当たりの良い場所に置くことが重要です。十分な日光がないと、果実の成長が悪くなったり、味が落ちたりすることがあります。
プランターでの栽培では、ツルの管理も重要です。カボチャのツルは非常に長く伸びるため、プランターからはみ出さないように誘引するか、必要に応じて摘心することで、ツルの成長をコントロールします。これらのポイントを踏まえてカボチャをプランターで栽培することで、スペースの限られた環境でも健康なカボチャを育てることが可能になります。
おすすめコンパニオンプランツ
◯ネギ類
ネギ類の根から発する抗生物質がカボチャを守り、病気予防に効果的です。ネギの根には「バークホルデリア・グラジオリー」という細菌が繁殖し、拮抗(きっこう)菌として働きます。これにより、カボチャの「つる割れ病」などの病気を予防する効果が期待されます。
◯トウモロコシ
カボチャのツルがトウモロコシのマルチの代わりになり、雑草を防ぎ、土を適度に保湿します。この相乗効果により、カボチャとトウモロコシの両方の生育が促進されます。
◯オオムギ、クローバー、オオバコ
オオムギなどのムギ類は、自らがうどんこ病にかかって「菌寄生菌」を増やし、カボチャのうどんこ病の菌を退治する役目を果たします。これにより、カボチャとムギ類は互いに助け合って、病気の予防に貢献します。
ズッキーニ
ズッキーニはウリ科の野菜で、南アメリカ原産です。
円筒形の果実を若どりして食べるタイプの野菜で、主に熱を加えて調理されます。イタリア料理でよく使われ、油との相性が良いため、輪切りにして肉類と炒めたり、天ぷら、煮物、スープなどさまざまな料理に適しています。栄養面ではビタミンやカロテンが豊富で、低カロリーでヘルシーな野菜です。
温暖で乾燥した地域を好み、夏の暑さにはやや弱い性質を持っています。強健で栽培しやすいため、家庭菜園にも適しています。土壌に対する適応性が広く、特に土質を選びませんが、水はけの良い畑を好む特性があります。
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
おすすめ栽培方法 | 種まき |
種まき時期 | 4月~5月 |
植え付け時期 | 4月~5月 |
収穫時期 | 6月~8月 |
収穫回数 | 栽培中は結実したら何度でも |
おすすめ品種ピックアップ
〇ズッキーニ F1 オーラム
栽培面積をとらないため、家庭菜園にも相性がよい品種。
雌花の着生がよく、連続して収穫可能です。
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栽培時の注意点
ズッキーニは浅根性で風に弱いため、支柱を立てることが推奨されます。支柱は株の近くに立てると果実が傷つく可能性があるため、20~30センチ程度離れた位置に立て、葉柄を結びつけるようにします。
長期収穫を目指す場合は、雌花の一番花から三番花までを摘花し、株全体の勢いを優先します。また、わき芽を切除して主枝を強く伸ばし、収穫が終わった果実より下位の葉を適宜切り落とします。
病害虫防除においては、受粉の失敗による果実の変形や腐敗、アブラムシの発生、うどんこ病への対策が重要です。特にアブラムシはウイルス病を媒介するため、しっかりと対応する必要があります。また、うどんこ病は高温多湿条件で増殖するため、早めの防除が効果的です。
プランター栽培時のポイント
ズッキーニは根が広がるため、深さ30センチ以上の大型プランターが最適です。
生育温度は20~28℃が理想で、中間地では5月上旬の定植が適しています。生育が速いズッキーニは、定植から約2週間で最初の花が咲き、その後1カ月程度で定期的な収穫が可能になります。
苗選びでは、本葉が3~4枚で子葉がついているもの、茎が太く節間が短いもの、害虫の被害を受けておらず病気にかかっていない健康な苗を選ぶことが重要です。
栽培中、初期の実は摘果して茎を太くし、安定した成長を促します。収穫が終わった下葉は摘葉し、風通しを良くして病気のリスクを減らします。受粉作業は、雄花の花粉を雌花につけて行いますが、家庭菜園では自然受粉がうまくいかないこともあるため、人工受粉をすると良いでしょう。
おすすめコンパニオンプランツ
◯ネギ
害虫忌避効果があり、特にアブラムシなどの害虫を遠ざけます。
土壌の病原菌を減らす効果もあります。
◯バジル
強い香りが害虫を遠ざける効果があります。
ズッキーニの風味を向上させるといわれており、成長を促進させる相乗効果が期待できます。
◯レタス
ズッキーニの大きな葉がレタスを日差しから守ってくれます。
ズッキーニが土壌の水分を保持することでレタスの生育を助け、収穫量を増やすことができます。
オクラ
オクラは、東北アフリカが原産地で、アオイ科アオイ属に属する野菜です。この野菜は、刻むと特有の粘り気が出ることで知られており、食物繊維が豊富に含まれています。オクラは緑黄色野菜としても優れており、ビタミンB1・B2・C、カロテン、カルシウム、リン、鉄、カリウムなどの栄養素を多く含んでいます。料理では、生食、サラダ、煮物、あえ物、天ぷら、炒め物など、多様な方法で利用されます。
オクラは高温性野菜で、暑さに強いですが、寒さには弱く、10℃以下では生育できません。日当たりが良く、肥沃(ひよく)で水はけの良い畑が適しています。土質は選ばないものの、酸性土壌は栽培に適さず、pH6.0~6.5が好適です。
栽培難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめ栽培方法 | 種まき |
種まき時期 | 4月~5月 |
収穫時期 | 7月~9月 |
収穫回数 | 栽培中は結実したら何度でも |
おすすめ品種ピックアップ
◯グリーンソード オクラ
濃い緑が美しく、色つやも良い品種です。
とくに露地栽培に適していて、ハウスなど特別な設備がなくても栽培ができます。
耐暑性・耐寒性も優れていて、栽培しやすいオクラです。
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栽培時の注意点
収量を上げるためには密植栽培がおすすめです。密植栽培では、一つの植え穴に3~5粒の種をまき、最後まで間引かずに育成します。これにより栄養が分散し、1株あたりの成長が遅くなりますが、株を多く植えるため収穫量が増加します。オクラ自体も硬くなりにくく、柔らかいまま収穫しやすくなります。
オクラ栽培でよくある失敗としては、実が曲がったりイボができたりすること、収穫した実が硬いこと、肥料の過不足で花が咲かないこと、水のやり過ぎによる立ち枯れ病の発生、アブラムシやガの幼虫による被害などが挙げられます。これらの問題を避けるためには、適切な栽培環境の整備、収穫タイミングの把握、肥料管理、水やりの適正化、害虫対策などが重要です。
プランター栽培時のポイント
プランターでの栽培では、まず適切なサイズのプランターを選ぶことが大切です。オクラの根は深く伸びるため、深めのプランターが適しています。また、オクラは日光を好むので、プランターを日当たりの良い場所に置くことが重要です。
水やりは、土の表面が乾いたらたっぷりと行いますが、過剰な水やりは根腐れの原因になるため注意が必要です。また、オクラは肥料を好む野菜ですが、肥料の与え過ぎは株の成長にばかり栄養を使ってしまい、花や実をつけなくなることがあるので、適量の肥料を与えることが大切です。
おすすめコンパニオンプランツ
◯エダマメ
マメ科の野菜はオクラとの相性が良く、根粒菌の働きにより窒素が固定され、肥沃(ひよく)な土壌を作り出し、オクラの生育を良くする効果があります。
◯ニンニク栽培後の畝
コンパニオンプランツとは少し違いますが、ニンニクを育てた後の土壌でオクラを育てても良いでしょう。オクラの根がニンニクの根の跡を利用して深くまで伸びることができます。
スイカ
スイカは南アフリカ原産のウリ科スイカ属の野菜で、特に暑い日に冷やして食べると格別な味わいが楽しめます。果肉には果糖やブドウ糖などの糖質が豊富に含まれており、疲労回復に効果的です。また、ビタミンA・B1・B2・Cなども含まれていて、栄養補給にも役立ちます。果肉の赤色はリコピンとカロテンによるもので、カリウムやマグネシウムなどのミネラルも豊富な食品として知られています。
スイカは高温と強い光を好む野菜で、日当たりの良い畑でよく育ちます。土壌は選ばないものの、水はけの良い土壌が適しています。施肥においては、元肥の窒素が多いとツルが過剰に成長し、着果が悪くなるため、窒素は控えめにすることが大切です。
栽培難易度 | ★★★★☆ |
おすすめ栽培方法 | 苗植え |
植え付け時期 | 5月~6月 |
収穫時期 | 7月~8月 |
収穫回数 | 1回 |
おすすめ品種ピックアップ
〇紅しずく西瓜
変形果や裂果が少ないほか、小玉種によく見られるヒビ裂皮も少なく、秀品率が高いのが特徴。低温少日照下でも雌花の着生がよく、花粉の出がよいので着果が安定する品種です。
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栽培時の注意点
スイカは大きな面積を必要とする野菜で、特に地面に広がるタイプの栽培では畝幅2.5メートル、一株あたり80センチ程度の株間隔を確保する必要があります。
スイカが割れる主な原因は、雨による急激な水分吸収です。定期的な水やりで乾燥状態を作らないことが重要で、直射日光が当たることで割れることもあるため、受粉後30日までは葉の影から顔を出す程度にしておくと良いでしょう。生育初期にしっかりと根を張らせ、果実の糖度が上がるタイミングで水分ストレスをかけることが推奨されています。
おすすめコンパニオンプランツ
◯ネギ
ネギは、その強い香りで多くの害虫を遠ざける効果があります。特にアブラムシなどの害虫がネギの香りを嫌うため、スイカの害虫被害を減らすのに役立ちます。
土壌の健康を改善する効果もあり、スイカの生育環境を良くすることができます。
◯トウモロコシ
トウモロコシは高く成長するため、スイカにとって良い日陰を作り出し、過度の日差しから保護する役割を果たします。
また、トウモロコシの根系が土壌を固めることで、スイカの根が広がりやすくなるという相乗効果があります。
◯マリーゴールド
マリーゴールドは強い香りを持ち、これが害虫を遠ざける効果があります。特にセンチュウなどの土壌害虫に対して効果的です。
メロン
メロンはウリ科の野菜で、インドが原産です。
一般にメロンと呼ばれる果実は、甘みや香りが強い西洋系メロンが主流です。東洋系メロンは甘みや香りがないため、ウリと呼ばれることが多いです。ビタミンCやカリウムが豊富であることが特徴で、緑色や黄色、白色などがあり、無地のもの、ネットメロンと呼ばれる網目模様のもの、縦じま模様が入るメロンも存在します。
栽培難易度 | ★★★★☆ |
おすすめ栽培方法 | 苗植え |
植え付け時期 | 4月~5月 |
収穫時期 | 7月~8月 |
収穫回数 | 1回 |
おすすめ品種ピックアップ
〇レノンメロン
低温期でもつる伸びがよく肥大性にもすぐれる赤肉ネットメロン。種子部が小さく、皮際の緑色部も少ないので、果肉が厚く日もちもよいのが特徴です。果形は高球で果ぞろいがよく、太めのネットが安定して発生するため高い秀品率が期待できます。
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栽培時の注意点
メロンは日当たり、通気性、排水の良さが育成の鍵となります。成長段階によって必要な水分量が異なり、温度管理も必要です。そのため、マルチやキャップ、トンネルを利用して天候の影響を緩和すると良いでしょう。
定植を成功させるためには、植え替え1~2週間前に肥料を施し、メロンの根は湿度に弱いため、15センチくらいの高畝を作り、黒いポリマルチを設置します。定植は晴れた日の午前中に行い、株間を60~80センチほど空けてホットキャップをかけます。
メロンも品種によってはプランター栽培可能という記事がありますが、地植え以上に管理が難しく、あまり現実的ではないイメージがあります。
メロン栽培は、本職の農家が細心の注意と執念深い観察力をもってしても、天候や病害虫によって失敗してしまうことがあるほど難しいもの。そのことを念頭に置いた上で、栽培に挑戦してください。
おすすめコンパニオンプランツ
◯ネギ
メロンに発生しやすいつる割れ病の予防に効果的です。
ネギの根に住む共生菌が、土壌中の病原菌を減らすといわれています。
◯ムギ、スズメノテッポウなど
土の保湿や泥はね防止、他の雑草の抑制に効果的です。
メロンのつるを草に巻きつけながら成長させることができます。
春になったら、家庭菜園をはじめよう!
本記事では、家庭菜園でよく見られる12種類の野菜について解説しました。
栽培の難しさはそれぞれ異なりますので、家庭菜園ビギナーの方は無理せずに、比較的栽培しやすい野菜に挑戦してみると良いでしょう。
農業スキルを磨きたい、ステップアップしてみたいという方は、ぜひスイカやメロンなどの難しい品目に取り組んでみてください。栽培は確かに難しいですが、無事に収穫できたときの喜びは何ものにも代えがたいものがあります。
マイナビ農業には、本記事で取り上げた野菜の栽培方法を詳しく解説した記事があります。本記事で気になった野菜があれば、ぜひ各野菜の栽培記事を参考にして栽培に挑戦してみてください!
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