野菜づくりは手道具が主役
「人は道具を作る動物である」と定義したのは、アメリカ合衆国建国の父と呼ばれるベンジャミン・フランクリンだと言われている。石器時代から人は目的を果たすために道具を作り、その道具によって暮らしを発展させてきた。18世紀にイギリスで産業革命が起こり、今では多くの道具が電化・機械化されているが、家庭菜園においてはまだまだクワやショベル(※)などの手道具が主役である。

土を掘る道具の原形は「掘り棒」。人類最古の道具のひとつと言われる。それが発展してショベルになった
※ ショベルとスコップの違い:地域によって呼び方がことなるが、本稿ではJIS規格に準拠する。足を掛けるステップがあり、土を掘り起こすのに適しているものをショベル、足を掛ける部分がなく土をすくう、運ぶ用途に適したものをスコップとしている。
そういうシンプルな道具で土いじりをするのが好きだ。ガーデンティラー(小型耕運機)なら楽に土を耕せるし、もちろん私も使っているけれど、早朝の鳥の声が響く菜園にエンジン音はちょっとやかましい。それよりも自分の手足を動かして、汗をかきながら野菜づくりをするのが気持ちいい。
そのための道具にも、ちょっとしたこだわりがある。
といっても大したことじゃない。いい仕事ができて、ロングライフであることだ。ホームセンターに行くといろいろな道具が並んでいて、値段もピンキリ。あまり言いたくはないが、中には使える道具のように見えて、仕事ができないやつもいる。農機具に限らないけれど、オンラインストアなんかで、ほかより安いからといってポチッと買うと、そういう失敗をすることが多いね(←散々、経験済み)。どんなものであれ、高いものには高い理由が、安いものには安い理由があるのだ。
それで、私が愛用しているガーデンツールは、この7つ。
開墾の功労者「金象印のショベル」
浅香工業の「金象印」ブランドのショベルが気に入っている。一般的なサイズより一回り小さい「金象 MFキューフォーショベル」が軽くて使いやすい。一度にたくさんの土を掘ったり動かしたりするより、少ない量を何回も動かすほうが疲れないのだ。

「金象 MFキューフォーショベル」。一般的なショベルに比べてさじの部分が小さく、軽量で扱いやすい
金象印のショベルは「土を切る」ために設計されており、さじの部分は焼き入れと焼き戻しによって硬さと柔軟性を併せ持つ。どんなにハードに使っても曲がったり折れたりしたことがない。
この土地に移住してきた当初、このショベルで約150坪(5アール)の耕作放棄地を開墾した。石だらけの硬く締まった土で3本のショベルをダメにしたが、金象印のショベルだけは生き残った。それは今も手元にある。さすがに剣先は摩耗してちびてしまったが、開墾の功労者として手放せない。

使い込んで先端が摩耗して丸まったショベル(右)
畑のマルチツール「野口式万能両刃鎌」
野口鍛冶店の「野口式万能両刃鎌(三角ホー)」は、柄の先に三角形の刃が付いており、除草・耕運・土寄せ・溝掘りなど多用途に使える畑のマルチツールだ。

サツマイモの畝間を除草しながら、土寄せする
日本の農具は古くから刃物鍛冶の手によって作られてきたが、野口式万能両刃鎌も例外ではない。形だけを見れば似たような道具がホームセンターに並んでいるが、違いは刃物鍛冶が作った刃にある。切れ味が鋭く、それが長持ちする。
クワや鎌、ハサミもそうだが、ガーデンツールの多くは刃物であることを忘れてはいけない。切れない刃物は刃物にあらず、いい仕事はできないのだ。切れ味を維持するためには、こまめに刃を研ぐことが何より大事。切れ味がよければ効率が上がるし、作業をしていて気持ちがいい。逆に切れない刃物は作業がはかどらず、ストレスばかりがたまる。

「野口式万能両刃鎌」の刃先。こまめに刃を研ぐことで作業が効率化する
ちなみに私はクワを使わない。土をすくいすぎるし、重くて疲れるからだ。クワでやる作業の大半は、この道具でまかなえる。
研ぎ続けて20年「植木ばさみ・剪定ばさみ」
どうやって手に入れたか忘れてしまったが、こだわって入手したものではない。それでも私が家庭菜園を始めた20年ほど前から一度も買い替えずに愛用しているもので、使い勝手に不満はない。

硬い枝を切るのに適した剪定(せんてい)ばさみ(左)と柔らかい茎や果実の収穫に使い勝手のいい植木ばさみ(右)
素材は一般的な鋼。研ぎやすく、刃持ちもよい。ステンレスはさびにくい素材だが、切れ味が落ちると研ぐのに苦労する。鉄はさびるが、使い込むことで手の脂がしみ込み、色が深まって経年変化していくさまも味わい深い。
植木ばさみは収穫や柔らかい枝を切るときに、剪定ばさみはナスや木の枝など硬いものを切るときに使う。
集める、ならすの万能選手「レーキ」
ツメの部分で野菜くずや刈り草を集めたり、裏側で土の表面を平らにならしたりするのに使う。近所の種苗店「タネの柳研(やなけん)」で入手した。プロの農家も御用達の店で、種や苗はもちろん、園芸の道具も私はここに並んでいるものであれば間違いないと思っている。

先端のツメは刈り草や野菜くずを集めるのに適している
以前ホームセンターで買った安価なものは、経年で木製の柄がひどく反ってしまった。今のレーキはおそらく10年くらい使っているが、まったくダメなところがない。
野口式万能両刃鎌もそうだが、いい道具は柄の素材にもこだわっており、曲がったり折れたりしにくい。木製の柄は手触りもいい。

ツメの反対側を使えば、畝を平らにならせる
無溶接一体構造のタフな4本爪「金象印のフォーク」
堆肥(たいひ)やわらをすくったりするほか、イモ類の収穫では株元から30センチほど離れた場所にフォークを差し、テコの原理で軽く土をほぐしてから手で掘るようにしている。スコップで同じことをやると、さじに載った土を持ち上げることになり抵抗が大きいのだが、フォークだと土の重さをあまり感じなくて済む。イモを切ってしまう心配も少ない。

「金象 パイプホーク 4本爪 パイプ柄」。先端のツメは同社のショベルと同じように焼き入れ、焼き戻しにより強靭(きょうじん)さと粘り強さを持つ
スコップと同じ金象印ブランドの4本爪パイプ柄フォークを愛用している。頭部は複数の部材を溶接して組み立てたものではなく、無溶接一体構造。継ぎ目がないため強度が高く、ハードな作業にも耐える。お気に入りだ。

堆肥の切り返しやわらの運搬などに活躍
除草を楽にする草削り「けずっ太郎」
除草の必需品、ドウカンの「けずっ太郎」を長年愛用している。先端の刃が輪になっていて、地表をひっかくように動かして草の根を切る。土は輪の部分から逃げていく構造で、生え始めの草を少ない抵抗で削り取れる。

輪になった刃の部分が土に入り込み、草の根を切る
ドウカンも鍛造技術を持つ刃物メーカーだ。野口式万能両刃鎌などと同じように、こまめに先端の刃を研いで切れ味をよくしておくことが、疲労を抑えて効率よく作業するコツである。

先端の刃はこういう構造だから、とても軽い
まだまだ現役「富士ロビンの耕運機」
愛機は、今はなき「富士ロビン」の耕運機「CR600(ラーニー)」。実家にあった20年以上前のモデルで、私の手元に来てから15年近く愛用している。畑を耕すのも、それなりの広さになると耕運機がないとつらい。作業時間や疲労が軽減されるのはもちろんだが、クワやスコップで耕す場合に比べて、土の柔らかさがまったく違う。塊もきれいに砕かれて、粒が細かく空気を含んだふかふかの土になる。

オールドモデルだが、今日までノートラブル。丈夫で長持ちする道具が好き
なお、一気に広い面積を耕すのでなければトラクターは必要ない。300坪程度であれば、家庭用耕運機のほうが小回りが利いて扱いやすい。
道具は相棒、いいものを長く使う
わが家にある道具はおしなべてオールドモデルばかり。でも、農機具なんていうシンプルな道具は、簡単にダメになってしまうものではないし、道具は長く使ってこそ手になじむものだ。気に入ったものだからずっと使いたくなる。今朝も手に取ったのは、おなじみの野口式万能両刃鎌。これでトウモロコシとオクラの畝を除草して、土寄せ。終わったあとは水で洗って土を落とし、いつもの場所に引っかけておく。
明日もよろしく。


















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