【プロフィール】
■つくば労働者協同組合の皆さん
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代表理事:宇津野均(うつの・ひとし)さん 理事:中島史暁(なかじま・ふみあき)さん 理事:猪瀬勉(いのせ・つとむ)さん 兼業農家として地域の農業に携わっていた3人が、地域で増える耕作放棄地を何とかしたいとの思いから活動を開始。2022年に施行された労働者協同組合法を活用し、つくば労働者協同組合を設立。 |
■五十嵐立青さん
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茨城県つくば市長 筑波大学国際総合学類を卒業後、ロンドン大学UCL公共政策研究所修士課程、筑波大学大学院を修了。2004年につくば市議に初当選し、2011年にはNPO法人つくばアグリチャレンジを設立、障害のあるスタッフが働く農場「ごきげんファーム」を開始。2016年につくば市長に就任し、2024年に3期目を迎える。 |
■岩佐大輝さん
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株式会社GRA代表取締役CEO 1977年、宮城県山元町生まれ。大学在学中に起業し、日本及び海外で複数の法人のトップを務める。2011年の東日本大震災後に、大きな被害を受けた故郷山元町の復興を目的にGRAを設立。著書は『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』(ダイヤモンド社)ほか。 |
労働者協同組合法の成立が後押し
岩佐:今回の座談会のきっかけは、五十嵐市長と飛行機で偶然隣の席になったことでした。農業についてお話する中で、「労働者協同組合(以下、労協)」という形態で農業をしている方々がいると聞いて、面白い事業だと思いました。
まず、つくば労働者協同組合の始まりを教えてください。
中島:近隣で農業を営む高齢の方から「離農したい。でも、耕作放棄地にはしたくない」と相談を受けるようになり、引き受け始めたことがきっかけです。
最初は私一人で受けていたのですが、だんだんと管理面積が広がっていき、地元の先輩である宇津野さんと猪瀬さんに相談しました。
猪瀬:私は会社員だったんですが、父親が高齢になったので退職して農業をしていたんです。そんな時に中島から田んぼを買うという話をもらって、「今どき田んぼを買う人なんていないぞ」と言ったんですけど(笑)。
中島:でも、荒れた田んぼをどうにかしたかったんです。
宇津野:私も会社員だったんですが、退職して農業をやっていた時に中島から話を聞いて、「手伝わざるを得ないな」と(笑)。荒れ放題だった農地を、3人で少しずつ通常の田んぼに戻していきました。それがスタートです。
中島:最初は先輩方に手伝ってもらいながらやっていたのですが、責任の所在をどうするのか、お金をどう工面するのか、収益が上がったらどう分配するのか――。
口約束で共同労働を続けるには、いろいろと難しい部分が出てきました。
そんな時、つくば市からのお知らせで労協の存在を知り、「これだ!」と思って、労働者協同組合の枠組みで法人化しました。
岩佐:市長はなぜ労協に関心を持たれたのですか?
五十嵐:地域の課題は、一人で取り組んでいてもなかなか解決しません。ただ、つながりができれば、その力は大きくなります。
耕作放棄地という課題へのアプローチとして、20年以上前から労協に関心がありました。3人から始められて、NPO法人のように代表者に負担が集中する仕組みでもない。これからの街づくりに、可能性のあるモデルだと感じたんです。
2020年に労働者協同組合法が成立し、2022年から労働者協同組合をつくれるようになったとき、「これはチャンスだ」と思い、セミナーの開催や補助金の創設など、労協を積極的に支援することにしました。

写真左から中島さん、宇津野さん、五十嵐市長、猪瀬さん(引用:つくば市ウェブサイト)
「資本主義の会社」との違いは?
岩佐:中島さんは現在も会社の役員をされていますよね。
中島:はい。株式会社と労協という異なる組織に身を置くことで、違いを実感しています。
株式会社は、利益を出すことを目的に経営しています。いわば「ガチ資本主義」。どうしても出資者と労働者という関係が生まれます。かといって口約束で共同労働をしていると、必ず「誰が一番働いたのか」「収益をどう分配するのか」という問題が出て、そこで揉めてしまう。だから、きちんとした枠組みが必要だと思っています。
五十嵐:株式会社は株式を多く持つ人の議決権が大きくなりますが、労協は出資額にかかわらず一人一票。みんなが対等な立場で話し合って方針を決めます。さらに、月1回程度の話し合いが推奨されています。地域の課題を解決するために、みんなで話し合いながら仕事をつくっていく組織が労協ですね。
岩佐:実際に3人で運営していて、意見がぶつかることはありますか。
猪瀬:ありますよ。一昨日も「市長が来るからきれいに草刈りしよう」と言ったら、中島が露骨に嫌がって(笑)。
中島:もう十分きれいだと思ったんですよ!
岩佐:結局どうなったんですか?
猪瀬:中島が一番頑張って草刈りしていました(笑)。
宇津野:最終的な目的を共有しているので、意見が対立しても、結局同じところに戻ってくるんですよね。

一人でやるのと全然違う 労協のパワー
岩佐:代表は宇津野さんですが、どうやって決めたんですか?
宇津野:年齢が真ん中だったからです。ただ役割分担はしていて、中島は広報が得意で、猪瀬さんは農業経験が一番長い。私は行政関係の手続きなどを担当しています。
中島:宇津野さんは実行力があって、人を引っ張っていくタイプ。3人が同じ立場でありながら、それぞれ得意分野を担っているのがいいんだと思います。
岩佐:現在はどれくらいの農地を管理しているのでしょうか。
宇津野:スタート時は6ヘクタールほどで、現在は約10ヘクタールです。そこに、それぞれが個人で耕作している農地を合わせると、3人で15ヘクタールくらいになると思います。
岩佐:収益や損失が出た場合どうするか決めていますか。
中島:規模が大きくなれば、スマート農業機械を導入して作業時間を短縮したいので、利益が出た場合は次の設備投資につなげて、さらに効率を上げることを考えています。

労協で購入したドローン。農薬散布の時間が大幅に短縮した
岩佐:給与のようなものはあるのでしょうか。
宇津野:毎月決まった金額を支払っています。さらに決算時に余剰金が出た場合は、その分配方法を3人で決めます。我々の場合は、働いた量に応じて分配する仕組みにしています。労働時間はすべて記録していて、それに応じて余剰金を分配します。
岩佐:五十嵐市長から見て、実際のつくば労働者協同組合はいかがですか。
五十嵐:皆さんがそれぞれ経験を持っていて、それを持ち寄って話し合いながら進めているのが素晴らしいですし、皆さんが共通して仰っている「3人で一緒にやると楽しい」ということも、とても大きいと思います。
一人だったら、荒れた田んぼを見て「なんとかしよう」と思う力は、なかなか湧いてこない。でも、仲間がいれば、「一緒にやろう」と思える。これはコミュニティの力だと思っています。
つくば市では、行政がすべての地域課題を解決するのではなく、地域の皆さん自身が動けるように「エンパワーメント」していくことを大切にしています。
その意味で、労協さんの取り組みはまさに、市民協働の一つの形です。田畑を守りながら、そこで利益を生み、その利益を次の投資につなげる。非常に面白いモデルだと思います。
この取り組みを広げるために、つくば市では労協の理解を深めるセミナーを開催しています。また、最大5年間のうち3年間、1年あたり60万円の補助金制度をつくって支援をしています。
岩佐:実際に活動している皆さんから見て、これから労働者協同組合を始めたい人に伝えたいことはありますか。
猪瀬:同じ方向を向いている仲間がいれば思い切ってやってみてもいいと思います。
宇津野:役割分担は最初に決めたほうがいいですね。3人が対等であることと、担当を決めることは別です。それぞれの得意分野に応じて役割を決めておくことが大切です。
猪瀬:田植えや稲刈りなど、もちろん大変な場面はあるけど、3人でやると作業そのものがイベントになる。
中島:そうそう。楽しいですよね。一人で農作業をするのとは全然違います。
岩佐:今回、皆さんのお話を伺って、労協は特に地域コミュニティ型の農業と相性がいいのではないかと感じました。ありがとうございました!

まとめ
| つくば労働者協同組合の戦略ポイント | ||
| ① | 「労働を見える化」する法律の活用 | 労働者協同組合を活用し、応援してもらう仕組みを作る。 |
| ② | 設備集約的な農業には向かない | それぞれが持っている設備を持ち合ってはじめることが大事。 |
| ③ | 労協の制度を学ぶ | 自分がやりたい事と労協の仕組が合っているかを確認してからはじめる。 |
岩佐:担い手不足で農地の存続が危ぶまれている地域も多いと思います。誰かが無償で厳しい労働をして農地を守るのではなく、労働を可視化してしっかり収益を得て、コミュニティで地域を守る。つくば市、つくば労協さんの取り組みは、地域課題の解決のヒントになると感じました。



















