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連作障害を防ぐ! カンタンな輪作の仕方【畑は小さな大自然vol.32】

連作障害を防ぐ! カンタンな輪作の仕方【畑は小さな大自然vol.32】

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。僕が野菜づくりで犯してしまった大きな失敗……。それは「連作障害」。同じ科目の作物を続けて育ててしまったために、病気が増えたり、うまく育たなくなったりする現象です。家庭菜園ではたくさんの種類の野菜を植えるため、適当に好きな野菜を植えるだけだと、すぐに連作障害がでてしまい、一度障害が出てしまうとなかなか元に戻りません。それを防ぐために行うのが輪作。今回は家庭菜園初心者の方でも覚えやすい輪作の仕方をご紹介します。

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連作障害とは?

ジャガイモの青枯病。連作するとこのような病気にかかりやすくなる

連作障害とは同じ科目の野菜を同じ場所で植え続けることによって、次第に野菜が病気になりやすくなったり、収量が落ちてしまう障害のことを言います。例えばナスをある場所に植えたとして、そこに同じナス科であるトマトを植えようとすると、ナス科野菜の連作になってしまうため、生育に障害が出る可能性が高まると言うことです。
連作障害が起こる原因は、土の中の栄養素と微生物生態系のアンバランスからくると言われています。同じような野菜のみを連続して植えることにより、同じ栄養素ばかりが土から吸収され、同じような微生物ばかりが土の中で増えるからです。

参考記事
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輪作とは?

連作を避けるために、植える場所をローテーションしていくのが輪作

この連作障害が出ないようにするために「連作年限」というものがあります。例えばナス科でいうと3〜4年は間隔を空けて植えると連作障害が出ないですよ、という目安となる期間があります。ですので、毎年何をどこに植えたのかを覚えておいて、連作障害が出ないように管理する必要があります。
しかし、家庭菜園ですと同じ畑の中でたくさんの種類の野菜を植えることが多く、数年前のことまで正確に把握するのは簡単なことではありません。きちんと記録をとっていれば良いのですが、面倒ですよね。
そこで、そこまで正確に記録せずとも連作障害が出ないようにする方法が、「輪作」です。例えば畑を4つに区切り、Aゾーンは今年はナス科、Bゾーンはウリ科という風にグループごとにゾーンを分けて決めておきます。そして次の年は一つずつ場所をずらしていき、Aゾーンはアブラナ科・キク科、Bゾーンはナス科という風にずらしながらローテーションを行っていきます。そうすると再びAゾーンにナス科が戻ってくるのは、4年後になりますので、この輪作に従って作付けしていけば輪作年限を自然と守ることができるというわけです。

オススメの輪作の仕方

おススメの輪作ローテーションイメージ

グループ分けの仕方には様々なものがあります。よく「ナス科、ウリ科、アブラナ科」というふうに科目ごとにグループ分けすることが多いのですが、初心者にはどの野菜が何科なのか分かりにくく、複雑になりやすいです。
そこで、今回は家庭菜園初心者にもわかりやすくオススメな分け方をご紹介いたします。それは以下の5つです。

① 葉ものグループ
② 実ものグループ
③ 根ものグループ
④ お休み
⑤ 連作グループ

その名前の通り、葉ものグループは葉を食べる野菜、実ものグループは実を食べる野菜、根ものグループは根や芋の部分を食べる野菜という風に、食べる部位で分けるやり方です。これですとどの野菜がどのゾーンに位置するのか分かりやすいと思います。
⑤の連作グループはローテーションせずに固定されたグループです。このグループは連作した方が良い物や、ローテーションの中に入れるとあまり都合のよくないものが入ります。ですので⑤の連作グループをのぞいて、①〜④の4つだけでローテーションしていくことになります。

具体的にどの野菜がどのグループに入るのかは以下の表をご覧ください。

グループ 春夏 秋冬
葉もの コマツナ、ミズナ、シュンギク、ルッコラ、レタス、エンサイ、モロヘイヤなど ハクサイ、ブロッコリー、コマツナ、ミズナ、シュンギク、キャベツ、ルッコラ、レタスなど
実もの トマト、ピーマン、ナス、キュウリ、ゴーヤ、ラッカセイ、インゲンなど ソラマメ、エンドウ
根もの ダイコン、ニンジン、ゴボウ、サトイモ、ショウガなど ダイコン、ニンジン、カブ
連作 ジャガイモ、ネギ、トウモロコシ、カボチャ、サツマイモ、オクラなど ジャガイモ、ネギ、タマネギ、ニンニク

季節ごとの作付け例

① 葉ものグループ

コマツナ、ミズナ、シュンギク、キャベツ、ルッコラ、レタスなどの主に葉を食べる野菜が入ります。葉もの野菜にはコマツナ、ハクサイ、キャベツ、ミズナなどアブラナ科の野菜が多く含まれます。このアブラナ科の野菜はアオムシなどのチョウやガの幼虫によく食べられますが、これらを寄せ付けない匂いを発するキク科のレタスやシュンギクとうまく組み合わせると良いでしょう。

② 実ものグループ

このグループにはトマトやナス、ピーマン、キュウリといった家庭菜園で人気の野菜が入ります。こういった野菜はつい多く植えてしまいがちなのですが、連作障害が出やすい野菜でもありますので、注意が必要です。
ラッカセイやインゲンなどのマメ類もこのグループに入るのですが、基本的には同じ畝の中でウリ科とマメ科、ナス科とマメ科という風に組み合わせて植えていきます。
例外として、ウリ科であるカボチャは広い面積を必要とし連作障害も出にくいため、連作グループに入れています。

③ 根ものグループ

このグループにはダイコンやニンジン、カブといった根菜類やサトイモ、ショウガなどが入ります。サトイモとショウガは相性が良いので、同じ場所に隣同士になるように交互に植えておくと良いです。
サツマイモもこのグループでも構いませんが、連作が可能なため、基本的に連作グループに含めます。
またジャガイモはローテーションの中には含めたくないため、これも連作グループに入れています。詳しい理由は連作グループのところで説明いたします。

④ お休み

4年に1回は何も野菜を作らずに畑を休ませます。
その間、雑草が土の中の栄養素や微生物のバランスを整えてくれますので、雑草は生えるに任せておきます。雑草が生えていると害虫が増えるというイメージを持つ方もいらっしゃいますが、天敵が増えることのメリットの方が大きく、害虫だけが大量発生するリスクが減りますので、ある程度雑草を生やしておくゾーンを作ることをオススメしています。
雑草が生えていることで、風通しが悪くなりそうな場合や見苦しい場合はもちろん刈ってしまっても構いません。ただし刈った草は畝の上に敷いておきましょう。こうしておくことで、休ませている間にもこれらの草が分解され、土が良くなっていきます。
また雑草ではなくソルゴーやクローバーといった緑肥作物を植えるのでも、土の地力回復や天敵を増やす効果が期待できます。

⑤ 連作グループ

ここにはネギ、トウモロコシ、サツマイモ、カボチャなどの連作が可能な野菜が入ります。
また、上でも説明した通り、ナス科のジャガイモも例外的にこのグループに含めます。ジャガイモは、他のナス科の野菜と近くに植えるのには相性が悪く、かといって根ものグループに入れてしまうと今度は実ものグループと根ものグループンの両方にナス科が含まれてしまうため、ナス科の連作障害が出やすくなってしまうという問題があるためです。
そこで、ジャガイモは連作グループの方にして、ある野菜と組み合わせることで連作を可能にします。それがネギです。ジャガイモは連作すると特定の土壌病害虫が増えやすくなるのですが、ネギにはこれらの繁殖を抑える効果があります。そのためネギとジャガイモを交互に植えていくことで、連作を可能にするという組み合わせです。同じ場所で春にはジャガイモ、秋にはネギ、そしてまた次の春にはジャガイモというふうに交代で植えていきます。どちらも一年中栽培できる野菜ですので、春にネギ、秋にジャガイモでも構いません。

輪作は手遅れになる前に計画的に開始!

連作障害は連作をしたからと言って、すぐに必ず障害が出るというものではありません。しかし、一度そのような障害が出てしまうと、なかなか元には戻りませんし、戻すのにもとても時間がかかります。
そこで、輪作の仕方をはじめに決めておくと、どこに何を植えるかが決めやすく、そのあとの計画が立てやすくなります。まだ輪作をしていないという方は、ぜひ手遅れになる前にこの輪作をはじめてみてはいかがでしょうか。
 
次の記事:畑の害虫図鑑〜テントウムシ編〜【畑は小さな大自然vol.33】

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