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狩猟を始めるためには? 狩猟可能な動物やハンターの収入まで徹底解説!

斉藤 勝司

ライター:

狩猟を始めるためには? 狩猟可能な動物やハンターの収入まで徹底解説!

ニホンジカやイノシシが増加して全国的に農作物を食い荒らす被害が大きな問題になっています。圃場(ほじょう)に柵を設置するなどの対策を講じている人もいるでしょうが、手間がかかる割に十分な効果を得られないこともあるようです。そのため狩猟(しゅりょう)を始めてみようという人もいるのではないでしょうか。しかし、狩猟はさまざまな法律で規定され、どのようにすれば狩猟を始められるのか分かりにくいのも事実。狩猟免許はどうすれば取得できるのか、猟銃はどうすれば購入できるのか、さらには仕留めて獲物を販売することでどれだけの収入を得られるのか。狩猟未経験者にとっては分からないことばかりでしょう。そこで狩猟に関する、皆さんの疑問に詳しくお答えします!

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狩猟とは何か? 変わりゆく意義

日本に生息する野生動物の多くが個体数を減らし、絶滅の危機さえ心配される種類がいる一方で、ニホンジカやイノシシなど一部の野生動物、海外から持ち込まれた外来生物は個体数が増えて分布を広げています。

その結果、生産者が手塩にかけて育てた農作物や森林への食害が深刻化して、2020年度の農作物被害額は161億円(農林水産省統計)に達しています。本来の生態系を維持することは難しくなり、このまま放置すれば増加した野生動物によって絶滅に追いやられる動植物も出てくるでしょう。

そのため増えすぎた野生動物の個体数をコントロールするとともに、外来種の駆除が求められるようになっています。イノシシやニホンジカのような大型の野生動物を駆除するのですから、当然、狩猟による捕獲を行うことになります。またクマのような大型動物が人間の生活圏に出没するようになっており、住民の安全を確保するためにも狩猟による駆除が求められています。

しかし、狩猟免許の所持者は減少の一途をたどっており、環境省によると1975年度には51.8万人もいたのが、2016年度には20万人まで減少。高齢化も進んで免許所持者の半数以上が60歳以上になっており、このままでは十分に狩猟を行えず、ニホンジカやイノシシはますます増えかねません。そこで狩猟に興味を持っている読者の皆さんに狩猟の社会的意義から、免許の取得法、狩猟の楽しみ方を詳しく紹介することにします。

日本における狩猟の歴史~生業から趣味のスポーツハンティングへ~

日本では古くから狩猟が行われており、その歴史は旧石器時代や縄文時代にまで遡ることができます。当時は食料や衣類などに利用することを目的にした狩猟が営まれていました。

しかし、弥生時代になって農業が行われるようになると、食糧は農業に頼って、狩猟はもっぱら農作物を加害する害獣の駆除を目的に行われるようになったと考えられています。さらに仏教の伝来により食肉が禁忌になりますが、それでも山間部ではタンパク質を得るために主に野生鳥獣を対象とした狩猟が行われていました。

日本の狩猟は一貫して食糧を得るための生業でしたが、明治時代から大正時代に西欧文化の影響から狩猟を楽しみとして行うスポーツハンティングを趣味にする人が増えました。

日本では長らくキジやカモを狙った鳥猟が主体でしたが、近年は農林業への被害対策としてニホンジカ、イノシシなどの大型動物を対象とした狩猟も増えています。

狩猟はこんなに楽しい!  狩猟の魅力・楽しみ

増えすぎた野生動物の個体数管理など、社会的な意義を理解して新たに狩猟免許を取得しようとする人が増えているとはいえ、長らく趣味・娯楽として楽しまれてきただけに狩猟には他のアクティビティでは得られない醍醐味(だいごみ)があります。

野生動物を狩るのに猟銃やわなが使われますが、これらの道具を使ってもそうそう簡単に野生動物を捕らえられるわけではありません。野生動物にとっては、人間に捕まることは死を意味するため必死に逃走を図ろうとします。そんな野生動物の動きを先読みし、駆け引きの末、仕留めることに成功した時の喜びはとても大きいに違いありません。

さらに仕留めた野生動物は解体処理して食べることができます。野趣あふれる野生動物の肉は、ウシやブタといった家畜にはない魅力があります。狩猟の後に獲物を味わえるのも、ほかのアクティビティにはない狩猟の楽しみといえるでしょう。

知っておくべき! 鳥獣保護管理法を分かりやすく紹介

その魅力を知って、狩猟を始めたいと考えた人もいることでしょう。ただし、日本における狩猟は、現在、鳥獣保護管理法によって定められていますから、狩猟を行うにはこの法律にのっとって行わなければなりません。

狩猟の規則を定める鳥獣保護管理法とは

現在、狩猟に関わる規則は鳥獣保護管理法によって定められているのですが、以前は鳥獣保護法と呼ばれていました。

この法はその名が示す通り、主に野生動物の保護を目的としていました。しかし、一部の種類が増加してさまざまな問題が生じている現状を踏まえ、保護だけでなく、個体数を適正な水準に管理することが必要だと考えられ、2014年に改正。名称も鳥獣保護管理法に改められました。

管理という考え方を取り入れたことで、地方自治体が地域ごとの現状を踏まえて、鳥獣保護管理事業計画を策定することができるようになっています。そのため特定の種類が多い地域では狩猟の制限が緩和され、多く捕獲できるようになっているのに対して、個体数が少ない地域では制限が強化され、捕獲が禁じられている場合もあります。

そのため狩猟を行う地域で、対象の野生動物の捕獲枠がどのように定められているのかを把握してから狩猟を行うようにしましょう。

鳥獣保護管理法が対象とする野生鳥獣とは?

日本に生息している野生鳥獣は約700種(鳥類約550種、獣類約160種)。この中から、肉や毛皮を利用できるか、生活環境、自然環境、農林業に害を与えるかなどを踏まえて、現在、狩猟可能な鳥獣を48種類(鳥類28種、獣類20種)と定めています。ただし、狩猟対象の種類は変更されることがあり、2022年にバンとゴイサギが狩猟対象から外れました。

キャプション狩猟鳥獣一覧(引用:一般財団法人大日本猟友会「狩猟鳥獣」)

知っておくべき! 狩猟のルール・マナー

生態系のバランスを崩すほど増えている野生鳥獣がいるとはいえ、むやみに捕獲していたら個体数が減少して、絶滅が心配されるようになるかもしれません。また、狩猟では殺傷能力のある猟銃を使うため、その取り扱いは厳しく規定されています。そこで狩猟者(ハンター)が守るべき五つのルール、マナーを紹介することにしましょう。

①野生鳥獣の命に最大限の敬意を払うこと

趣味のスポーツハンティング、農作物を食い荒らす個体の駆除の違いに関わらず、狩猟は野生鳥獣の命を奪う行為であることに違いはありません。獲物に対して最大限の礼を尽くすべきで、たとえ肉を利用しなくても野山に死体を放置するようなことのないようにしましょう。

②狩猟可能な種類と捕獲できる数を守ること

捕獲できる種類や数は法律によって定められていますが、数に関しては都道府県で異なる場合があります。狩猟を行う地域で許されている範囲内で狩猟を楽しむようにしましょう。捕獲できる数が定められていない種類であっても、むやみに捕獲するべきではありません。

③猟具は必ず規定されたものを使用すること

狩猟に使用できる道具は①網、②わな、③装薬銃、④空気銃の4種類と定められており、どのような猟具を使うかによって猟法(法定猟法)が規定されています。法定猟法にのっとって狩猟を行うことは当然ですが、狩猟に用いる鉛弾は野鳥制されることになっていますから、猟具のルール変更についても注意するようにしましょう。

④狩猟可能な場所以外で狩猟を行うのは禁止

野生鳥獣がいるからといって、どこでも狩猟をしていいわけではありません。鳥獣保護区や休猟区が設定されているほか、公道や寺社仏閣の境内などでは狩猟を行うことはできません。地方自治体独自に狩猟できる場所、できない場所を定めているため、狩猟ができる場所なのかどうかを確認しましょう。

⑤狩猟可能な期間(猟期)を守ること

都道府県ごとに狩猟ができる期間(猟期)が定められていて、延長、もしくは短縮されることがあるので、各自治体に確認してください。狩猟対象の鳥獣でも猟期以外に捕獲すると罰せられることがあり、過去には猟期以外にヌートリアを捕獲した外国人が逮捕されたことがありました。

ただし、農作物を食い荒らす有害鳥獣駆除については法的に定められた猟期以外に行われることがあります。また、猟期内でも、日没から日の出前までの時間帯は猟銃を用いた狩猟は禁止されています。狩猟に行こうとする地域の日没時間、日の出時間を確認して、安全に狩猟を行うようにしましょう。

狩猟者への道~狩猟を始めるまでの流れを徹底解説~

狩猟を行うには免許が必要ですし、獲物を仕留めるのに使う猟銃を購入するには銃刀法にのっとって許可を得る必要があります。そのため狩猟を始めるまでに煩雑な手続きを行う必要があります。ここでは狩猟を行うまでの流れを詳しく解説することにしましょう。

狩猟者への第一歩! 自分の生活スタイルに合わせた狩猟免許の選択

一口に狩猟といっても、狙う獲物や使用する道具(猟具)によって大きく異なり、初めにどのような狩猟を行うのかを決める必要があります。

銃猟とわな猟は何が違うの?

狩猟は、猟銃を使った銃猟とわなを使ったわな猟に大別されます。銃猟の場合、猟場に出向いて、獲物を追い求め、見つけて撃って捕獲できれば狩猟は完了です。これに対してわな猟は野生鳥獣が出没しそうな場所にわなを仕掛けて定期的に見回り、獲物がかかったらとどめを刺して狩猟が完了します。銃猟では獲物を見つける技術が求められるのに対して、わな猟では獲物が出没しそうな場所を見極めてわなを設置し、毎日わなを見て回る根気が必要です。

銃猟とわな猟のクリアすべき要件の違い

銃猟とわな猟では使用する猟具は異なるため、クリアすべき要件も違ってきます。銃猟の場合、猟銃の購入費は数十万円以上かかり、初期投資は大きくなってしまいます。さらに猟銃を保管する設備も必要となります。

一方、わな猟は、銃猟に比べて初期投資は高くありませんが、仕掛けたわなを毎日見て回る時間を確保できることが条件になります。当然、猟場まで頻繁に出向く移動手段も必要です。わなにかかっただけでは獲物は生きていますから、安全かつ速やかにとどめを刺すための専用の道具が必要ですし、目の前にいる獲物を殺すのですから、精神的な強さも求められます。

このように銃猟とわな猟は大きく違い、それぞれ別の狩猟免許が必要なので、自分の生活スタイルに合った猟法を選ぶようにしましょう。

狩猟を始めるのに何が必要か?

狩猟を行うには、狩猟免許を取得した上で、狩猟をしようとする都道府県で狩猟者登録をする必要があります。狩猟免許は使用できる猟具によって4種類に分けられており、選んだ猟具に応じた狩猟免許を取得することになりますが、複数の免許を同時に取得することができます。

狩猟免許の種類 使用できる猟具
網猟免許 網(むそう網、はり網、つき網、なげ網)
わな猟免許 わな(くくりわな、はこわな、はこおとし、囲いわな)
※囲いわなは農業者又は林業者が事業に対する被害を防止する目的で設置するものを除く。
第一種銃猟免許 装薬銃
第二種銃猟免許 空気銃
※コルクを発射するものを除く。

免許の有効期間は3年間で、有効期間を満了する年に都道府県が行う狩猟者講習と適性検査を受けて更新することができます。狩猟者登録は、登録した年の狩猟期間のみ有効です。

狩猟免許の試験日程、試験会場は、現在お住まいの都道府県に問い合わせてください。

狩猟免許を取得するためには何が必要か?

狩猟免許を取得するには、狩猟を行う上で必要な適正、技能、知識について、お住まいの都道府県が行う狩猟免許試験に合格することが必要です。お住まいの都道府県のウェブサイトからダウンロードできる所定の申請書に必要事項を書き込んで提出するのですが、その際、写真、医師の診断書、返信用封筒を用意する必要があります。

網猟、わな猟を行うには狩猟免許の取得だけで十分ですが、銃猟を行う場合には、都道府県公安委員会から、銃刀法に基づいて猟銃一丁ごとに「鉄砲所持許可」が必要となり、狩猟免許試験の申請時に許可証の写しを提出します。

銃猟は20歳以上、網猟・わな猟は18歳以上であれば、狩猟免許試験を受けることができます。精神障害、アルコール依存症などが欠格事由となります。試験の申請時に提出する診断書は、規制緩和によってかかりつけ医でも書いてもらえるようになりましたが、医療機関によっては狩猟免許申請のための診断書を書いてもらえないところがあるので、事前に確認してから受診することをお勧めします。

狩猟免許の試験と費用について

狩猟免許試験は、各都道府県で毎年数回開催されています。狩猟免許例題集が販売されていますから、独学で試験に挑むことはできますが、技能試験もあるため銃猟免許にチャレンジする場合は、各地域の猟友会が開催する事前講習会(初心者講習会の名称で開催しているところもある)を受けることをお勧めします。

事前講習会ではベテランハンターが、狩猟についての基礎知識から心構え、マナーを指導してくれるだけでなく、猟銃の扱い方、わな、網の設置方法など技能試験に必要な知識を教えてくれます。銃刀法上、他人の実銃を触ることはできませんから、事前講習会に参加すれば猟銃の取り扱いを教えてくれるので、大変参考になります。

狩猟免許試験の申請手数料は5200円ですが、再試験の場合は3900円です。3年ごとの更新には更新手数料2900円が必要です。
 

猟具にはどんなものがあるの? 猟具を所持するまでの手続きの流れを紹介

猟具は網、わな、装薬銃、空気銃に大別され、それぞれ免許が異なることを紹介しましたが、これらの猟具にはいろんな種類があります。ここではどのような猟具があるのか詳しく紹介することにしましょう。

猟具① 猟銃

猟銃は、火薬が燃焼する際に発生するガスの圧力で弾丸を発射する装薬銃と、空気や炭酸ガスなどの圧力を利用して弾丸を発射する空気銃に分けられます。

装薬銃は散弾銃とライフル銃に大別され、散弾銃は粒状の散弾を撃ち出すので飛行している鳥を撃ち落とすのに適しています。スラッグと呼ばれる単弾(一粒弾)も使用できるので、ニホンジカ、イノシシなどを狙う時にも利用できます。

ライフル銃も単弾を使いますが、散弾銃に比べて威力が非常に大きくなるので、獲物はニホンジカ、イノシシ、ヒグマに限られます。威力の強い銃であることもあって、狩猟初心者が最初からライフル銃を所持することはできません。原則、散弾銃の継続所持10年以上がライフル銃を所持する条件になっています。

空気銃は単弾を使用するため、その場にとどまっている鳥類を撃つのに適しています。威力の強い空気銃なら、わな猟で捕らえた大型獣にとどめを刺すのにも利用できます。

猟具② 弾(実包)

猟銃で撃つことができる弾(実包)は、銃ごとに決まっており、散弾銃であれば散弾、スラッグ弾のほか、ゴム弾や花火弾を撃つことができます。ライフル銃にはライフル弾が、空気銃には空気銃弾が使われます。ライフル銃に比べて威力が落ちる印象のある散弾銃、空気銃ですが、大きなスラッグ弾、空気銃弾を使えば威力は強くなります。

空気銃弾は火薬類ではないため、法的な管理義務がないのに対して、火薬を用いるライフル弾、散弾、スラッグ弾などの販売、購入は火薬取締法に基づく許可制になっていて、各都道府県の公安委員会の許可を得る必要があります。また、使用したことの記録を残すことが義務付けられています。

猟具③ わな・網

猟銃以外の法定猟具には、わなと網があります。
わなは獲物を閉じ込めたり、体の一部をくくったりして、野生鳥獣を捕獲する猟具で、くくりわな、はこわな、はこおとし、囲いわな(天井がないもの)の4種類の使用が認められています。とらばさみ、おし(戸板や格子が落下するもの)、もちわな(網にモチを塗ったもの)、はご(竹や木の枝にモチを塗ったもの)は使用が禁じられています。

網は、糸などで編まれたもので、獲物にかぶせたり、からめとったりして使用する猟具で、むそう網、はり網、つき網、なげ網の4種類の使用が認められています。視認性の低い絹糸やテグスで作られたかすみ網は、小型の野鳥を大量に捕獲できてしまうため、有害鳥獣駆除や学術研究などの特別な許可を得た場合以外の使用は禁じられ、所持や販売も禁止されています。

猟具を所持するまでの手続きや費用について

日本では銃刀法により、すべての国民に対して銃の所持が禁じられています。ただし、狩猟を目的に使用する場合には特別に所持することが許可されることになっています。

銃の所持には多くの規制が設けられており、各都道府県の公安委員会が行う猟銃等講習会、射撃講習を受講しなければなりません。薬物・アルコールの中毒ではないこと、精神疾患ではないことなどを証明する医師の診断書、破産していないことを証明する市町村発行の身分証明書、住民票の写し、職歴・住所歴・銃所持歴・犯歴・病歴などを示した経歴書など、多くの書類の提出を求められます。

厳しい審査を受けて猟銃の所持が許可されると、銃砲店で猟銃を購入できるわけですが、自分の銃は自宅で保管することが原則で、専用のガンロッカーの設置が義務付けられています。

ガンロッカーの仕様は法律で細かく決められており、一般的な事務用のロッカーを代用することはできません。ガンロッカー自体を持ち運べないように、ボルトで壁に固定する必要もあります。賃貸住宅に住んでいて、家屋の所有者、管理会社の了解を得られない場合、ガンロッカーに重りを入れて、移動が困難だと判断されたら、固定しなくても許可が下りる場合があります。

装薬銃の場合、ガンロッカーとは別に弾(実包)を保管する装弾ロッカーも必要となりますが、空気銃なら装弾ロッカーは必要ありません。
猟銃を所持し、狩猟免許を取得するまでにかかる費用は以下のようになります。

出典:環境省「狩猟ポータル」

わな、網を所持するのに手続きは不要です。購入先や製作方法などは地元の猟友会に問い合わせましょう。

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狩猟者登録と、その費用について

実際に狩猟を行うには、狩猟免許を取得するだけでは不十分で、狩猟したい都道府県に狩猟者登録を行わなければなりません。地域によって狩猟できる野生鳥獣は異なりますから、どんな鳥獣を狩猟したいかによって、登録する都道府県を決めるといいでしょう。

狩猟者登録に際しては、狩猟税の納付と手数料が必要となります。手数料は1800円ですが、都道府県によって異なる場合があります。狩猟税は免許の種類によって異なり、第一種銃猟は1万6500円(県民税の所得割の納付を要しない者は1万1000円)、第二種銃猟は5500円、わな・網猟は8200円(県民税の所得割の納付を要しない者は5500円)になります。

また、狩猟を行うには3000万円以上の共済、または損害賠償保険に加入するか、これと同等の賠償能力を証明することが求められるため、狩猟者登録の申請に際して賠償能力を証明する書類を提出します。こうした賠償保険は保険会社や補償額によって違いますが、1万5000円程度を目安に考えておくといいでしょう。

安全管理を徹底して、狩猟を楽しもう

狩猟免許を取得して、狩猟者登録を行えば、狩猟に出かけることができます。野生鳥獣との駆け引きの末、見事に仕留めることができれば、獲物を食すこともできるでしょう。しかし、ニホンジカやイノシシのような大型獣を仕留めることができる猟銃を使うのですから、ひとたび事故が起これば惨事に発展しかねません。 

そのため猟銃の扱いについては、狩猟時だけなく、運搬、保管についても厳しく規制されており、それを順守するのは狩猟を行う上での基本中の基本といえます。銃口を人に向けない、発砲時以外引き金に指をかけない、実包の装填(そうてん)時の脱包の確認などを守り、殺傷能力のある銃器を使っているという自覚を持つことが必要です。

また、狩猟の際は服装にも気を付けるべきです。警戒心の強い野生鳥獣を狙うのですから、できるだけ目立たない迷彩色の服装のほうが適していると考える人もいるかもしれませんが、野生鳥獣に気付かれにくい服装は狩猟仲間にも気付かれにくくなり、誤射の原因にもなりかねません。狩猟に出かける際は必ず目立つ服装を選びましょう。猟友会では目立つ安全狩猟ベスト、帽子を会員に支給しています。

野生鳥獣は管理された環境で育てられるウシやブタと異なり、その体内に危険な寄生虫や病原体を保有しているかもしれません。過去には、狩猟で捕らえたニホンジカやイノシシを食べてE型肝炎に感染し、死亡した例も報告されていますから注意が必要です。大日本猟友会のウェブサイトから「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」をダウンロードできるので参考にするといいでしょう。

また、食べなくてもニホンジカに寄生していたダニに刺されてことで病原体に感染した例も報告されています。そのため狩猟に出かける際の服装は長袖を選び、手袋を着用して直接、獲物に触れないようにしてください。

狩猟者(ハンター)として生活していけるのか

捕獲した野生鳥獣は解体して食べることができますが、自分で消費しなければ、販売して収入を得ることができます。ただし、野生のニホンジカやイノシシは寄生虫がいたり、E型肝炎ウイルスに感染していたりすることがあるため、食用に解体するには病気の有無を検査することが義務付けられています。 

そのため捕獲した野生鳥獣は自分で解体せずに食肉加工業者に持ち込んで買い取ってもらうことになります。買取価格は加工業者によって異なり、1㎏あたり300~500円程度です。猟期の冬には脂がのっているのに対して、猟期以外、特に夏は脂が少なく、好まれないため買取価格は下がります。また捕獲後にすぐに頸(けい)動脈を切って血抜きしなければ肉が臭くなってしまうため、仕留めた後の処理の仕方次第では買い取ってもらえないことがあるので注意が必要です。

有害鳥獣駆除での捕獲では国や地方自治体から報奨金が出ることがあります。金額は自治体によって異なるほか、成獣か幼獣かによっても違いがありますが、イノシシは数千円から2万円程度、ニホンジカは5000円から3万6000円程度です。

肉を自分で消費する一方で残った角や皮を販売することも可能です。ニホンジカの場合、成熟したオスは立派な角を持つので、角のついた頭蓋骨(スカル)は野趣あふれるインテリアとして珍重され、その価格は5万円以上にもなります。しかし、皮にしろ、角にしろ、加工するのには手間がかかります。

このほか、SNSや動画配信サイトで狩猟活動を配信して収入を得ている人もいますが、狩猟だけで生活ができるのかというと、なかなか難しいのが実情です。厚生労働省による推定平均年収は240万円です。専業猟師もいないわけではありませんが、ほとんどの狩猟者は兼業で、趣味として狩猟を楽しみ、余得として収入を得ているのが実態です。

狩猟者と猟犬~猟犬の役割と種類~

狩猟者(ハンター)にとって猟犬はかけがえのないパートナーです。狩猟の成否を決める要素として、古くから「一犬、二足、三鉄砲」と言われてきたことからも分かる通り、優れた猟犬を持つことは、優れた鉄砲を持つことよりも大切なのです。

というのも、獲物によっては人間だけでは捕らえることが難しいものがいるからです。例えば、キジは普段、草むらの中に隠れていますから、草むらから出てきてくれなければ、優れた鉄砲があっても撃つことはできません。そこで猟犬がキジを草むらから追い出すことで撃つことができるのです。また撃った水鳥を水面から回収するのにも猟犬が活躍します。

そのため獲物によって猟犬に与えられる役割は異なり、狩猟者は目的にあった猟犬を飼うことになります。優れた嗅覚を利用して獲物を見つけ、草むらから追い出す猟犬は「ポインティング・ドッグ」と呼ばれ、このために開発されたのがポインターやセターです。撃ち落とした水鳥を回収するのにレトリバーが開発されました。以下に獲物ごとに適する犬種を表にして紹介します。自分の狩猟スタイルにあった猟犬を選ぶとよいでしょう。

獲物 主な犬種
キジ、ヤマドリ、コジュケイ、カモ類など ポインター、セター、ブリタニー・スパニエル、イングリッシュ・コッカー・スパニエル、ラブラドル・レトリバー、ゴールデン・レトリバー
ノウサギ、ユキウサギ ビーグル
イノシシ、ニホンジカなど 中型日本犬、ハウンド

ルールを守って充実の狩猟ライフを

狩猟に求められる意義の変化から、狩猟免許の取得方法、猟具の購入方法、そして、狩猟に関わるマナーやルールを詳しく解説してきました。これで狩猟を始めるにあたっての皆さんの疑問は解決したでしょうか。実際に狩猟を行うとなれば、狩猟対象の種類ごとに生態を詳しく知ることも求められます。、さらに仕留めた獲物の解体方法や調理方法を学べば、皆さんの狩猟ライフはより充実したものになるでしょう。

狩猟に関しては、管轄する環境省や狩猟者団体の大日本猟友会がインターネットで情報を発信していますから、何か知りたいこと、疑問に思うことがあったら、これらのウェブサイトもチェックしてみてください。そうすれば狩猟だからこそ得られる醍醐味を感じることができるでしょう。

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